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宮城県石巻「日本一カッコいい変態神経〆師」が【届ける】

宮城県石巻「日本一カッコいい変態神経〆師」が【届ける】

「数」が勝敗を決める日本の漁業を、「質」を重視する世界へ変えるべく、漁業界のゲームチェンジに真っ向から取り組む仲買人「大森 圭(おおもり けい)」さんの方程式と変態ぶりに迫る連載です。Vol. 3では「届ける」についてお伝えします。

~届ける~
「生の尾頭にかぶりついてこそ、届けられるものがある」
「魚屋が届けるべきは“魚だけ”ではない」

いよいよお手当て(神経〆などの処置)をした魚たちを梱包・配送する段階。さすがの大森さんでも、ここからは一般的な仲買人と同じ作業をするだろうと気を抜いていましたが、私の認識が甘かったです。

大きな魚の切り落とされた頭と尾をおもむろに持ち上げる大森さん。そのまま箱に詰めると思いきや次の瞬間……生のまま、その尾頭にかぶりつきました!!

驚く私を気にも留めず、次々と魚をかじり続ける大森さん。そして、「これは旨味が強いな。シンプルに刺身ですすめよう。こっちは少し淡白だけど脂がいいから○○シェフのあの料理に合いそうだ」と、卸先での調理法までイメージを膨らませていきます。

たまたま訪れたシェフにも味見してもらいます。

大森さんは仕入れやお手当ての合間にも、常にスマートフォンを傍らに置き、誰かとやり取りをしていました。実はその相手は全て卸先。築地など大きな市場への納品もありますが、大森さんが神経〆した魚はほとんどが全国の飲食店や小売店に直接販売されているのです。

東京や大阪の高級店をはじめ、九州や四国など遠方からも「大森の神経〆した魚がほしい」とシェフたちによるラブコールが届きます。

旬のタケノコメバルにもラブコールが。

また、大森さんも工程をすすめるなかでイメージを膨らませ、「この魚は○○さんに調理してほしい」とオンリーワンの営業コールをかけていきます。

どこでどう消費されるかわからない「大量消費」ではなく、消費者の口に入るシーンまでを具体的に想像して送り出す。これが大森式なのです。

1匹1匹、大切に食べてもらえるように。

大森さんは魚が獲られてから消費者の口に入るまで、漁師・仲買人・料理人は1つのチームだといいます。すべての魚がベストな状態で獲られるわけではない。それでも仲買人がきちんと魚の状態を把握して、できる限りその潜在能力を引き出すお手当てをし、その長所や短所の情報を正確に料理人に伝える。そうすることで料理人は、短所を抑えて長所を最大限に活かした調理法を考えることができる。

もしかしたら獲ったときは60点だったかもしれない魚。それでも仲買人がなんとか80点まで引き上げて、料理人が100点へ仕上げる……そんなチームプレイを常に目指しているそうです。届けるのは魚だけではない。「情報」を届けることこそが重要だと大森さんは話してくれました。配送の方法にも、もちろんこだわりが。

新聞紙などを巧みに使います。
氷の配置が重要だそう。

お手当てをした魚はこすれを防ぐために1匹ずつ包んだうえで、死後硬直の時間を調整するよう氷の位置や量を魚ごとに微妙に変えて詰めていきます。こうすることで移動中に魚が旨味を蓄えていき、届いたときにベストな状態を迎えるのです。

そして活魚は水族館などが魚を移動するときなどに使う「活魚トラック」で、生きたまま届けます。活魚トラックは酸素の供給や、ろ過・水流・水温調節など細かな調整ができるようになっており、魚にストレスを与えず遠方まで運ぶことができるのです。

大森さんのトラックは4つの水槽にわけられており、外から状態を確認できる小窓も。中を覗くと……そこには幻想的な光景がひろがっていました。

「ただ魚を詰めて送るだけ」。そう思っていた“届ける”という工程にも、大森式ならではの変態級のこだわりがたくさん詰め込まれていました。次回では、そんな大森さんの作品ともいえる魚たちを、実際に提供しているお店へ伺います。

 

●ダイスイ
住所:宮城県石巻市魚町3-13-6
電話番号:0225-25-4421
大森式流通 HP:https://www.omorishiki.com/

 

撮影・取材・文/中川めぐみ
釣りアンバサダー 兼 ツッテ編集長。釣りを通して感じられる日本全国の地域の魅力(食、景観、人、文化など)を発見・発信するため、メディア「ツッテ」の運営や、初心者向けの釣りイベントを実施。自ら全国の港を飛び回っており、2018年は100地域での釣り旅を計画。レアニッポンでは全国の港町で見つけた地域や海にまつわるおもしろいものをお伝えしていきます。https://tsutte.jp

撮影/久保田彩子

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