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宮城県石巻「日本一カッコいい変態神経〆師」と【食す】

宮城県石巻「日本一カッコいい変態神経〆師」と【食す】

「数」が勝敗を決める日本の漁業を、「質」を重視する世界へ変えるべく、漁業界のゲームチェンジに真っ向から取り組む仲買人「大森 圭(おおもり けい)」さんの方程式と変態ぶりに迫る連載です。Vol. 4では「食す」についてお伝えします。

~食す~

「作業場で答え合わせはできない」

宝石のようにキラキラと輝くお刺身たち。

大森さんが目利きし、お手当て(神経〆などの処置)をし、その実力を発揮できるお店へよりすぐって届けられた魚たちは、輝きが違います。いずれも身に濁りがなく、弾けるようなみずみずしさ。

いただきまーす!と張り切る私の隣から、こんな声が聞こえてきます。「このサワラはやばいな。雑味がまったくないし、旨味がすごい。これは『大森のサワラ 極(きわみ)』って名付けたいくらいだ」。声の主はご本人、大森さんです。

普通、仲買人は魚を市場で買って、他の市場やお店に販売して終了。しかし大森さんはこれまでもお伝えしたように、神経〆をはじめさまざまな「大森式」方程式をその流れに組み込みます。そんな大森式では販売、すなわちVol.3の「届ける」で仕事は終わらないのです。

自ら「食す」。つまり、自分の売った魚をお店で実際に食べてみて、やっと1つの区切りを迎えます。自分の目利きやお手当てが最善のものだったか。それは作業場ではわかりません。お店でシェフに調理され、消費者の口に入る状態になってはじめて、答えが見えてくるのです。

だから大森さんは自分の魚を納める飲食店へ、定期的に通います。答え合わせと同時にシェフの調理・思考についても理解を深めていく。そうすることで、よりその店に合ったオンリーワンの魚を提案できるようになっていくのです。

大森さんがこうしたこだわりを持つようになったキッカケは、2011年3月11日の東日本大震災でした。すべてのインフラが崩れ、漁師が漁に出られない日々が続きました。そんななか大森さんは、自分にできることをしようと無料で氷や漁のために使うエサを配ってまわったそうです。

それまでは普通の仲買と同様、大量に買って売る……という商売をしていた大森さんですが、漁師たちとの距離が縮まり、その仕事ぶりや想いを近くで感じる日々が続くなかで考えが変わります。「大量漁獲主義」。とにかく数を獲ればいいといういまの日本の漁業では現場は疲弊し、担い手不足や生態系の崩れなど深刻な問題を引き起こす。「数」より「質」を重視する、漁業界のゲームチェンジに取り組むことを、このときに誓ったのです。

いまでは目利きの段階より前、漁から一緒についていって、漁師と共に船上でお手当ての試行錯誤をすることもあるそう。

船の上から食卓の上まで――。変態級のこだわりと独自の理論をもって、自分だけの方程式を積み上げていく大森さん。私が尊敬してやまない「日本一カッコいい変態神経〆師」は、こんな男です。4回にわたるこの連載で、1人でも多くの方に日本の漁業界の現状と、それに立ち向かう手段があることを知ってもらえることを祈って。そして「質」をとことん追求した、美味しすぎる魚介が全国のあらゆる場所で食べられる未来が来る日を祈って、この連載を終わります。

 

●ダイスイ
住所:宮城県石巻市魚町3-13-6
電話番号:0225-25-4421
大森式流通 HP:https://www.omorishiki.com/

●四季彩食いまむら
住所:宮城県石巻市中央2-7-2
電話番号:0225-90-3739
営業時間:18時~23時(LO22時)
日曜・祝祭日定休
HP:http://imamura-ishinomaki.com/

 

撮影・取材・文/中川めぐみ
釣りアンバサダー 兼 ツッテ編集長。釣りを通して感じられる日本全国の地域の魅力(食、景観、人、文化など)を発見・発信するため、メディア「ツッテ」の運営や、初心者向けの釣りイベントを実施。自ら全国の港を飛び回っており、2018年は100地域での釣り旅を計画。レアニッポンでは全国の港町で見つけた地域や海にまつわるおもしろいものをお伝えしていきます。https://tsutte.jp

撮影/久保田彩子

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