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銀鮭で世界基準を目指す!宮城県女川町「銀鮭の孫」日本初のチャレンジ

銀鮭で世界基準を目指す!宮城県女川町「銀鮭の孫」日本初のチャレンジ

「銀鮭の父」と「銀鮭の孫」。2人が起こす2つの“日本初”に迫る

ひと切れ食べた瞬間、上品な脂とまろやかな甘みが口いっぱいに広がる……。

美味しそうなサーモンのお刺身、そう思いましたか? 実はこちらは「銀鮭」という鮭のお刺身。一般的にお刺身のイメージがない鮭ですが、この「銀王」というブランド銀鮭は、生のまま安全においしく食べられます。そもそも混同されることの多い鮭とサーモン。この2つは同じ魚ではありません

「鮭」は川でふ化し、そこから海へ下っていく海水魚。「サーモン」は海に出ない淡水魚なのです。そしてなぜ鮭は一般的に生で食べられないのか。それは、海で育った鮭には「アニサキス」という寄生虫がついている可能性があるためです。天然の鮭はオキアミという小さなエビのようなエサを食べて育ちます。このオキアミにアニサキスの幼虫が潜んでおり、天然の鮭はオキアミとともにアニサキスを体内に取り込んでしまうのです。

海上の養殖場。早朝の水揚げシーン。

しかし、この「銀王」というブランドにはその可能性が低い。「銀王」を生み出した株式会社マルキンは、管理の行き届いた養殖場で銀鮭を育て、鮭の養殖で名高い宮城でも唯一、自社に加工場を構えています。だから、そもそもアニサキスの原因であるオキアミを鮭が食べてしまうことがない。さらに、万が一アニサキスを鮭が体内に取り込んでしまっても、迅速な加工によってすぐに内臓が取り除かれ、胃袋など内臓から身にアニサキスが移動する心配がないのです。

早朝に水揚げされた銀鮭は、その約2時間後には加工・出荷される。

全国的にも珍しい、サーモンとはひと味違う鮭のお刺身。この取り組みをはじめたのは、銀鮭の養殖を日本で初めて成功させた「銀鮭の父」鈴木欣一郎さんの孫、鈴木真悟さんです。

「銀王」を生産する「株式会社マルキン」の常務でもある鈴木真悟さん。

昭和50年代、欣一郎さんは日本初の銀鮭養殖に成功し、日本で季節に関係なく美味しい鮭が食べられるようにしました。しかしいま、国内のスーパーや飲食店ではノルウェーなど海外産のサーモンが圧倒的なシェアを占めています。ノルウェーやチリなど、海外では「国策」としてサーモンの漁獲量・輸出量を伸ばしており、日本の鮭はその価格競争に飲み込まれてしまったのです。

さらに銀鮭が市場に出はじめた頃、急に参入する業者が増えたことで品質にバラツキが生じてしまったことも、海外産サーモンを有利にした一つの要因。国産の鮭よりも、海外のサーモンが安くて美味しいかのようなイメージができてしまったのです。

しかし日本の養殖銀鮭も、いまでは品質も安定。「海外から何日もかけて冷凍で空輸されるサーモンより、絶対に美味しい。しかも為替や国際情勢に振り回されることのない国産は必ず需要がある!」

そう思った真悟さんは20代のときに「銀鮭の父」である祖父と父を説得し、自社の加工場を大きく改造。「お刺身で食べられる鮭」の加工体制をつくり、「銀王」というブランドを立ち上げたのです

艶と赤みが食欲をそそる。

それまで国産の鮭をお刺身で食べるイメージがなかったため、飲食業界でも最初は驚かれたそう。しかし、すぐに大手回転寿司やチェーンの居酒屋、スーパーなどから引き合いがあり、新たな市場を開拓しました。ちなみに銀王はお刺身ではもちろん、煮ても焼いても絶品。

ひと塩してディルとレモンを添えた銀王。あとはソテーを待つばかり

適度な脂がキレイにのった身はふっくらと柔らかく、甘みのある味わいが印象的です。そんな真悟さんが2017年5月から、新たな日本初のチャレンジをはじめました。それは「環境にやさしい責任のある漁業(持続可能な漁業)」を目標とした養殖漁業改善プロジェクト(AIP)。生産者・流通企業・NGOなど関係者が協力し、養殖水産物の世界基準である「ASC」の認証取得を目指す取り組みです。

実は世界ではすでに常識となっている、この認証制度。ASCの認証がないために、日本へ進出している一流外資系ホテルで日本の養殖水産物が使われなかったり、海外へ輸出しようとしても受け入れられなかったり……という課題がすでに浮き彫りになっているのです。2020年の東京オリンピック・パラリンピックも然り。せっかく、各国から訪れる大勢のお客さまに日本のよいものをPRしよう!というムードが高まっているのに、影響力のあるVIPになればなるほど、その口に入る可能性は低くなってしまいます。そんな状況に疑問をもった真悟さんは日本で初めて銀鮭でのASC認証取得に向けて動き出しました。すでに大手スーパーの西友がこのプロジェクトへの参画を表明。宮城の若手漁師の熱い想いが、日本に、世界に、少しずつ影響を与えようとしています。

それにしても、この祖父にして、この孫あり。真悟さんはまぎれもなく「銀鮭の孫」です。30年以上前に「銀鮭の父」欣一郎さんが生み落とした銀鮭を、真悟さんが着実に育て、国内だけでなくなんと世界へ送り出そうとしています。国内で丁寧に育てられ、美味しさを逃さず安全に食べられるよう加工された「銀王」。世界の銀王になる前に、日本のみなさん、ぜひ味わってみてください。

●株式会社マルキン
住所:宮城県牡鹿郡女川町小乗浜字小乗1−22
電話番号:0225-50-2688
HP:http://www.kaki-marukin.com/

 

撮影・取材・文/中川めぐみ
釣りアンバサダー 兼 ツッテ編集長。釣りを通して感じられる日本全国の地域の魅力(食、景観、人、文化など)を発見・発信するため、メディア「ツッテ」の運営や、初心者向けの釣りイベントを実施。自ら全国の港を飛び回っており、2018年は100地域での釣り旅を計画。レアニッポンでは全国の港町で見つけた地域や海にまつわるおもしろいものをお伝えしていきます。https://tsutte.jp

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