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山形・寒河江にニットあり!【佐藤繊維】 世界を驚かせた糸ができるまで

山形・寒河江にニットあり!【佐藤繊維】 世界を驚かせた糸ができるまで

フィールドは出羽三山。

現代の山伏・坂本大三郎さんと訪ねる
モノ作りの郷・山形県寒河江市

山形県のほぼ中央に位置する寒河江(さがえ)市。最上川と清流日本一に選ばれた寒河江川が市街地を包むように流れ、月山や葉山を望む自然豊かな町です。また山形の名産、さくらんぼの郷としても知られる地。この地を愛し、移住してきたのが、山伏として活動する坂本大三郎さんです。羽黒山・月山・湯殿山の出羽三山をベースに、自然と人とを繋げる活動を続け、注目を集めています。今回は、坂本さん自身のお話とともに、寒河江市が誇る名門繊維会社「佐藤繊維」、さらにはモダニズム建築の名作といわれる「寒河江市庁舎」を巡り(※後日記事公開)、寒河江市の魅力を探りました。

坂本大三郎さん
1975年、千葉県生まれ。イラストレーター、山伏として活動。東北の出羽三山を拠点として、自然に生きる人々に残る文化や芸能を研究し、実践を行っています。また山形市七日町にあるとんがりビル1階の本屋&雑貨店「十三時」を運営。著書に『山伏と僕』(リトルモア)、『山伏ノート』(技術評論社)。http://www.13ji.jp

山形空港から乗合タクシーで約30分、フルーツライン左沢線(あてらざわ)の寒河江駅すぐそばにある古い石造りの蔵、そこが佐藤繊維の目印です。ここで、山伏の坂本大三郎さんと合流、佐藤繊維のファクトリーへと向かいました。

佐藤繊維は、1932年に山形県寒河江市で創業した紡績ニット会社。この小さなファクトリーが生み出す糸が、世界のラグジュアリーブランドから指名買いされ、愛されていることをご存じでしょうか? さらに2018年、アウトドアブランドの雄「ザ・ノース・フェイス」と共同開発した3D無縫製ニット「グローブフィット」で一躍注目を集めました。その技術力、そしてモノ作りへのこだわりを探るべく、佐藤繊維代表の佐藤正樹さんにお話をうかがいました。

「佐藤繊維」代表
佐藤正樹さん
1966年、山形県生まれ。2005年より佐藤繊維の4代目として家業を継ぎ、世界各地の山羊や羊の生息地を訪ね、糸やニットの新しい形を模索し続けています。2009年には極細モヘア糸と特殊紡績糸の開発で、第3回ものづくり日本大賞経済産業大臣賞を受賞。

寒河江で繊維業が栄えた背景とは

「元々、雪が多い山形は、冬場に蚕を育てて養蚕を行っていました。明治初期に西洋から日本に初めてウールが入り、その優れた機能性を知り、究極的にバランスの取れた繊維として羊毛が認知されるようになったのです。洋の字は氵(さんずい)に羊と書くように、日本人が知った羊の毛は海を渡ってきたわけですね。そして国策として明治後半に東北エリアで毛織物業が推進され、曽祖父の時代に手紡ぎから糸作りが始まりました。祖父の時代に山形の石造りの酒蔵を買い取り、移築して工業化を進め、紡毛紡績をスタートしました。その後、50年ほど前の父の代からニット製造が始まりました」と佐藤さん。

「羊の毛を糸にしていく工程は“手紡ぎ”の時代から進化し工業化され、クオリティの高い糸が作れるようになりました。でも、これはすべてヨーロッパの技術で開発された機械で作られるものです。それをそのまま日本に導入して生産しても、コスト競争の波にのまれるだけで、結局安い海外の生産拠点に移ってしまいます。寒河江エリアもかつては紡績業が盛んで、たくさんの工場がありましたが、現在では衰退してしまいました」

イタリアの紡績工場を見学したとき、職人たちが古い機械を改造して“見たことのないような糸”を作り出していたそう。これに感銘を受けた佐藤さんは、「発注を受けて糸を作るのでは価格勝負になってしまいますが、どこにもないオリジナルなもの、自分たちにしか作れないものを作ることで勝負しよう」と決意されたそう。これこそが、メイド・イン・サガエである佐藤繊維の糸が“世界基準で評価されるまでに至った”源流なのです。

「世界中のニット工場を巡り、ほぼすべてを見てきましたが、ここ20年ほどニット自体はあまり進歩していません。だからこそ、新しいことにチャレンジして、今までになかった糸や製品を生み出していくことが私の使命だと感じています」

その一つが、メンズのオリジナルブランド「991」。「オリジナルの糸作りから編み地の開発、立体的な型の設計やディテールを追求した縫製など、究極のニットを目指して挑戦しています。例えばニットジャケット。ニットの弱点である横伸びを克服するため、特殊編みの『SGリブ』を独自開発して強度を高め、身ごろや袖をそれぞれ成形編みで一枚に仕立て、ニットジャケットにもかかわらず立体感を出しています。同様にニット仕立てでありながらクリースラインを編みで表現したドレスライクなパンツもあります。このブランドをはじめとして、ニットの新しい歴史と文化をつくり、世界に発信していくことを目標にしているのです」と、ニットへの熱い思いを語ってくれました。

●佐藤繊維 HP
URL:http://satoseni.com/

 

>>  ザ・ノース・フェイス×佐藤繊維の革命ニット「グローブフィット」誕生ストーリー

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撮影/小澤達也 取材・文/奥山泰広(POW-DER)

 

 

 

 

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