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グッドデザインの宝庫! 山形【寒河江市庁舎】の謎に迫る

グッドデザインの宝庫! 山形【寒河江市庁舎】の謎に迫る

2017年に国登録有形文化財(建造物)となった山形県の寒河江(さがえ)市庁舎。ここは日本を代表する建築家、故・黒川紀章氏が設計し、1967(昭和42)年6月20日に開庁した、日本のモダン建築を代表する建物のひとつです。出羽三山を拠点とし、自然に生きる人々に残る文化や芸能を研究、実践を行っている山伏・坂本大三郎さんとともにうかがいました。

坂本大三郎さん 1975年、千葉県生まれ。イラストレーター、山伏として活動。東北の出羽三山を拠点として、自然に生きる人々に残る文化や芸能を研究し、実践を行っています。また山形市七日町にあるとんがりビル1階の本屋&雑貨店「十三時」を運営。著書に『山伏と僕』(リトルモア)、『山伏ノート』(技術評論社)。 http://www.13ji.jp

インパクトのある外観! これぞ寒河江のシンボル

寒河江の町の中央部にある寒河江市庁舎。一見してわかるように、上層階が浮遊しているようなデザイン。鉄筋コンクリート造の地上5階建て、総ガラス張り。2階が小さく、3・4階が四方に約10mせり出した構造になっています。このデザインは、3階以上を4本のコアと高張力鋼によって吊るした構造で成り立っているそう。山形に移住した坂本さんも、今回初めて訪れ、この独特なデザインの建築に感心しきりです。

そもそも、寒河江市庁舎の設計を若き黒川氏が手がけたのはなぜでしょう? 寒河江市総務課の木村総務主査にうかがいました。「1964(昭和39)年、黒川氏設計による日東ベスト工場が山形県で建設され、落成式に参加した当時の市長が感銘を受け、市庁舎の設計を依頼したそうです。市庁舎と同じ時期に、山形ハワイドリームランドも建設されました」。寒河江市庁舎は、2003(平成15)年には近代建築の記録と保存を目的とした国際学術組織「DOCOMOMO」の日本支部により、近代建築100選にも選定されています。

入り口からアート! 岡本太郎デザインの取っ手がお出迎え

さて、市庁舎に入ろうとすると、入り口のガラスのドアに印象的な取っ手が! これは、あの故・岡本太郎氏のデザインによるもの。市民が普通に手で触れるものが、あの巨匠の作品ということに驚きを隠せません。

市庁舎の中は天井まで吹き抜けの空間。その中央には大きなオブジェが吊り下がっています。「2階から4階までの中心部が吹き抜けになっています。黒川氏は“胎内化”と表現。吹き抜け空間(=胎内)に自然(=光や空気)が宿っているという考えを表しています。その象徴として、岡本太郎氏が制作した彫刻“生誕”が、中央に吊り下げられ輝いています。岡本氏はこの彫刻について“建物の直線に対して、ツノの曲線を対抗させて、産みの苦しみとエネルギーを表現した”という言葉を残しています」(木村さん)。また吹き抜けの上部には、寒河江市の市章と、かつてこの地を治めていた大江家の家紋が刻まれています。

2階のロビーの床には幾何学模様のタイルが敷き詰められ、一部はガラスのブロックになっています。これは1階の市議会議場まで太陽の光を届けるためのデザイン。1階の議場は赤い床に紫の椅子と茶の机……これまた印象的です。

「1階に議場があり、3階以上に執務室がある空間配置は、“市民の足元を立法が支え、行政が市民の頭上を守る”という黒川氏によるメッセージが込められたものです。机や椅子は山形県を代表する家具メーカー『天童木工』によるもので、50年以上たった今でも、そのままの形で使われています」(木村さん)。傍聴席の椅子や議場外の椅子も天童木工製。グッドデザインなファニチャーが、市庁舎内にはあふれています。

市議会議場内の椅子に座った坂本さん。座り心地もよかったそうです。天童木工の成形合板技術が活かされた議場の机などにもこだわりを感じられます。

無造作に置かれている市民用の椅子も天童木工のもの。モダンな市庁舎の雰囲気づくりの一翼を担っています。

木村さんとともに屋上へ上がると、寒河江の町が一望。たくさんのさくらんぼ畑が見えます。
「開庁当時、この周りはすべて田んぼでした。従来の役所のイメージを打ち破る市庁舎の誕生に、市民の皆さんもとっても驚いたそうです。ここからは月山や蔵王も望めますよ」と木村さん。最後に坂本さんの活動拠点である月山方面を眺めながら、市庁舎の訪問は幕を閉じました。

 

撮影/小澤達也 取材・文/奥山泰広(POW-DER)

 

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