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【現代の山伏】坂本大三郎さんが、今 目指していること――。

【現代の山伏】坂本大三郎さんが、今 目指していること――。

山伏と聞いて、どんなヒトを想像するだろうか? 30歳のときに山伏の修行に参加し、自然とヒトとを繋げる活動を行っている坂本大三郎さん。山、木、岩などを神仏・精霊が宿るものとして尊び、敬ってきた日本の原始信仰を探求し、実践しながら生き方を探求している坂本さんにお話をうかがいました。

山形に移住し、山の文化を伝える活動へと

 

千葉県でイラストレーターをしていた坂本さん。なぜ、山伏になったのでしょう。
「元々、芸術や芸能が日本文化の中でどんなふうに生まれてきたのかに関心があり、好奇心から羽黒山で行われる山伏修行に参加したところ、すぐには理解できなかったのですが面白い文化だと感じました。より深く知りたいと思い、大学の先生の話を聞きにいったり、自分でもいろいろ調べるようになりました。そこで、山伏が芸術や芸能の発生や発展にかかわりがあった人々であることを知り、自分の関心と重なることを感じ、より山伏の文化に惹かれるようになったんです」

山伏というと白装束を着て、法螺貝(ほらがい)を吹いて、滝に打たれて……なんて想像しますが、本来はモノ作りをしたり芸術的な活動をしていて、里の人と山を繋げるような存在だった、と語ってくれました。

「古い絵巻に描かれている山伏は、さまざまな格好をしています。僕は宗教的側面の山伏ではなく、自然と人を繋ぎ、モノ作りや交易、芸能などを通した原初の山伏の活動に関心があるんです。日本という島国に暮らしていた人々が、信仰や畏怖の対象であった自然とどのように関わって、どのような文化や風習をつくり上げていったのか……」。馳せる思いはますます強くなり、生まれ育った千葉県から山形県へと移住したそう。

最初は肘折温泉の旅館の屋根裏部屋に居候。現在、精力的に行っている活動は? と尋ねると「山に残っている文化を勉強しています。例えば“山菜採りの技術”であったり、“樹皮を使って生活道具を作る技術”であったり、そういった知識を勉強しています。ただ、そういった知識をもつ人たちは高齢な方が多く、人数も少なくなってきています。拠点地域もバラバラ。その技術や知恵を受け継ぎ、まとめていく必要性を感じています。一緒に山に入ると、ポツリポツリと山のことや技術を教えてくれるんです。根気よく、これからも続けていきたいと思っています」

山形県のクリエイティブ基地「とんがりビル」

山形市の中心地、七日町にある「とんがりビル」。ここは山形県のクリエイターたちが集まるスポットとして注目を集めています。このビルの1階に、坂本さんは「十三時」という店舗を構えています。
「山の文化を伝えていく場所として、このお店があるんです。自然と人との関わり合いで生まれてきたものを取り扱っています。山形のものが多いですが、地域にはこだわっていません。旅先で見つけたものなども置いています。フキノトウミソは自分が月山で採った山菜を加工したものですし、猟師の方から譲っていただいた熊の毛皮やさまざまな道具なども置いています」。ちなみに十三時という店名は、イギリスの児童文学の『トムは真夜中の庭で』にあるエピソードからとったもの。県外や海外の方も、噂を聞きつけて訪れるそう。

最後に、今後の活動のビジョンについて坂本さんにうかがいました。
「自分の生活や文化がどういったものから生まれてきたのか、より深く知りたいと思って います。生活の根源がどんなところにあるのかを求めて千葉から山形に移りましたが、自分の文化の足元を見てみたら、日本列島を越えて海の向こうにも繋がるものが見えてきたんです。朝鮮半島や中国、メラネシアやインドネシアなどの南の島々、シベリアやアラスカなどとの繋がり、そしてそれらが混ざり合った文化であることを知りました。実際に訪れることで、自分の体験を通して、自分のものとして深めていきたいと思っています。それも、できるだけ自分の足で歩いて。歩くスピードだからこそ見えてくる景色を大切にしていきたいと思っています
現代の山伏として活動する坂本さん。これからも注目していきたい。

■「十三時」オススメ商品

ほたるを入れる虫かご「ほたる篭」。古くから山形で伝わってきたものを、真室川町の工房ストローが復刻させました。
とんがりビルと関わりの深い東北芸術工科大学。この大学出身の陶芸家、根本裕子氏の作品です。
坂本さんが月山で採ったふきのとうを、自分たちで加工して作った「フキノトウミソ」。
月山の和紙を使用した「のし袋」。
山形出身の絵本作家、荒井良二さんが書いた「山」の字を、クリエイター集団アカオニがデザインした「山Tシャツ」。

坂本大三郎さん
1975年、千葉県生まれ。イラストレーター、山伏として活動。東北の出羽三山を拠点として、自然に生きる人々に残る文化や芸能を研究し、実践を行っています。また山形市七日町にあるとんがりビル1階の本屋&雑貨店「十三時」を運営。著書に『山伏と僕』(リトルモア)、『山伏ノート』(技術評論社)。

十三時
住所:山形県山形市七日町2-7-23 とんがりビル1階
TEL:090-2952-0013
営業時間:12時〜19時(日によって変更あり)
不定休
URL:http://www.13ji.jp

 

撮影/小澤達也 取材・文/奥山泰広(POW-DER)

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