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【NIHONBUYO】ニッポンの踊りの多様性と可能性

【NIHONBUYO】ニッポンの踊りの多様性と可能性

さまざまな【踊り】で溢れる日本から
世界に発信する“NIHONBUYO”

平成最後の熱い暑い夏。日本には、さまざまな“踊り”が溢れています。今やダンスは小・中学校の必修項目ですし、テレビをつければアイドルからダンスユニットまで、さまざまなレベルのさまざまな“踊り”が、番組で、コマーシャルで、私たちの目の前に繰り広げられます。クラシック・バレエ、モダンダンス、ヒップホップ、フラメンコにタンゴに社交ダンスにフラダンス……世界中のあらゆる“踊りに触れ、親しむ機会が少なくない私たち。でも、自分の国の“踊り”である日本舞踊となると、観たことも踊ったこともないという人がほとんどではないでしょうか。敷居が高い、音楽に馴染みがない……と、最初から敬遠してしまう人も、少なくありません。

そんな中、日本舞踊の魅力をより多くの人に伝えようと独自の活動を繰り広げているのが、日本舞踊家の藤間蘭黄さんです。江戸時代から続く「代地」藤間家の後継者として、幼い頃より日本舞踊に親しんできた蘭黄さん。祖母で人間国宝であった故・藤間藤子さんから受け継いだ様式に則りながらも、現代の観客の感性にも深く響く新しい舞踊の境地を目指し、これまでも多くのユニークな公演を行い、後進の指導にも当たってきました。その活動は日本国内だけにとどまらず、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、インドにまで広がっています。
「日本舞踊は他のどこの国の舞踊とも異なる、独自のもの。“Japanese traditional dance”“Japanese classic dance”などと訳しても、その魅力は表現できないし浸透しません。海外で活動するうちに、いっそ日本語のまま“NIHONBUYO”として紹介しようと思ったのです」と、蘭黄さん。“SUSHI”や“KAWAII”などの日本語が、日本独自のオリジナリティの高い食文化や概念としてそのままの言葉で世界に広がったように、“NIHONBUYO”もまた、日本が世界に誇るアートコンテンツになり得る予感がします。

江戸時代の人が映像技術を持っていたら?
日本舞踊の名作「鷺娘」を新たなスタイルで上演

日本舞踊(NIHONBUYO)の新たな可能性を追求する藤間蘭黄さん

そんなNIHONBUYO……日本舞踊はまた、世界のさまざまな分野の芸術との親和性も思いがけないほど高い、と蘭黄さんは考えます。この夏、浅草公会堂で開催される「日本舞踊の可能性 Vol.1-展覧会の絵-」は、そんな彼が、日本舞踊の“今”そして“未来”へと誘う舞踊公演です。
プログラムはまず、「鷺娘」からスタートします。白鷺の化身である美しい娘が白無垢で登場し、町娘に転じて時に可憐に、時に艶やかに、恋心を表現する舞踊劇。最後には地獄で恋の責め苦に合って美しくドラマティックな幕切れを迎えます。この女形舞踊の大作を、蘭黄さんは今回、あえて素顔に紋付袴姿の素踊りで披露。豪華な衣装の変化は、祖母の藤間藤子さん、母の藤間蘭景さんの映像を使用して表現することで、三代が舞台上で奇跡の共演を果たします。

バレエとピアノと日本舞踊の
かつてないコラボレーション「展覧会の絵」

もう一つのプログラムが「展覧会の絵」。蘭黄さんが子どもの頃から親しんでいたムソルグスキーの名曲「展覧会の絵」を最初に日本舞踊化したのは、2008年のことでした。
「長唄に編曲してもらい、私自身の作詞で日本舞踊に仕立てたのです。日本の四季の移ろいのなかで男女が出会い、別れ、それを懐かしむ……といった内容でした」。
その後、いくつもの不思議な出会いが、蘭黄さんに「展覧会の絵」の新たな扉を開かせます。2012年、日本舞踊振興財団のウクライナ公演に参加した蘭黄さんは、『展覧会の絵』のモチーフとなったキエフの大門(黄金の門)を眼下に見下ろすことのできるマンションに招かれました。その部屋の住人こそ、11歳から国立キエフ・バレエ学校に国費留学し、卒業後はキエフ・バレエ団で活躍、現在は母校の芸術監督でもある寺田宜弘さん。数年後、文化庁から文化交流使に指名された蘭黄さんは再びウクライナを訪れ、「黄金の門」で『展覧会の絵』を初演します。ピアニストの木曽真奈美さんの演奏からイマジネーションを広げ、“ムソルグスキーが親友の画家ガルトマンに捧げたレクイエム”という解釈で、ムソルグスキーを蘭黄さんが、ガルトマン役を寺田宜弘さんがつとめての舞台でした
孤独なムソルグスキーにとって画家ガルトマンはかけがいのない友人。ガルトマンの突然の死に際し、ムソルグスキーは友人の病に気づかなかった己を責め、悲嘆にくれます。そこにガルトマンの幻が現れ、ムソルグスキーの悲しみを振り払い、やがてガルトマンは昇天していく……という物語。バレエと日本舞踊、ピアノと日本舞踊。意外な組み合わせから起こったケミストリーに、観客は総立ち。公演は大成功をおさめ、2018年1月にはキエフ一のオペラハウス、ウクライナ国立歌劇場でも抜粋版による再演が実現しました。

国境を超えて多くの人々にかつてない驚きと感動を与えた「展覧会の絵」の、東京での初お披露目。日本舞踊……いいえ、“NIHONBUYO”の新たな可能性と出会いに、浅草公会堂に足を運んでみませんか。

「日本舞踊の可能性 Vol.1-展覧会の絵-」
8月10日(金)14:00開演(13:30開場)
出演:藤間蘭黄(日本舞踊家) 寺田宣弘(ウクライナ国民芸術家、ダンサー) 木曽真奈美(ピアニスト)
S席8,000円 A席5,000円 B席2,000円
お問い合わせ/代地 TEL:︎03-5829-6130

文/清水井朋子
構成/宮本珠希(世界文化社)

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