Close
ad-image
【平成最後の夏旅へ】淡路人形浄瑠璃~淡路瓦を巡る「南あわじ」

【平成最後の夏旅へ】淡路人形浄瑠璃~淡路瓦を巡る「南あわじ」

瀬戸内海で最大の島、淡路島。兵庫県最南端のまちである「南あわじ市」は、南に鳴門海峡、西に白砂青松の慶野松原、中心には温暖で肥沃な三原平野が広がります。うず潮、玉ねぎなどで知られる「南あわじ」のレアニッポン的スポットはちょっと変化球!? いや、実はコレが王道の見どころなのです。

「大鳴門橋記念館」の巨大な玉ねぎオブジェ「おっ玉葱」。写真/@08shiho_o さんのInstagram投稿より 

■淡路人形浄瑠璃を常設で見ることができる「淡路人形座」

鑑賞した演目は「戎舞(えびすまい)」。 酒をご馳走になって酔った戎さまは、船に乗り、沖に出て、大きな鯛を釣り、メデタシ、メデタシと舞い納めるという、なんともおおらかなストーリー。人形の動きは時に激しく、時に優雅で、まったく見飽きることがありません

人形浄瑠璃という演劇は、文禄・慶長年間(1592~1615)に人形操り、浄瑠璃、三味線の3つの技芸が結びついて京都で生まれました。その後、元禄年間(1688~1704)に、「義太夫節」を始めた竹本義太夫や浄瑠璃作家の近松門左衛門が出て大きく発展します。最初は小さい人形を一人で操っていましたが、18世紀前半に3人で操る三人遣いが考案され、人間よりもダイナミックな動きや美しい動作が可能になったことで、ますます人気を博し、歌舞伎をしのぐ全盛期を迎えていきます。この時代、大阪から新しい浄瑠璃を取りいれた淡路島には、40以上の人形座(プロの人形劇団)が誕生し、全国各地を巡業して回ったのだとか。淡路の人形座の巡業が浄瑠璃文化を全国に普及させ、根付かせたといえるのです。

淡路の人形座は中央で途絶えた演目や淡路で創作・改作された独自の演目を伝承してきたのが特徴で、神事色を残しながら、早替わりなど観客を驚かせる趣向を取り入れていて人気がありました。淡路では「芝居は朝から弁当は宵から」という言葉があるように一日中人形芝居を見るのが最大の娯楽となっていきました。

しかし、各地でもてはやされた淡路人形芝居も、明治になると、客の関心が他の娯楽に移ったり、修業の苦しさから後継者が育たなかったりして、次第に衰えていきます。第二次世界大戦後、淡路人形は消滅の危機に瀕します。なんとか伝統を守ろうと1964年「淡路人形座」が生まれ、1976年には、国の重要無形民俗文化財に指定。その後、淡路の1市10町が協力して淡路人形協会が発足し、現在に至ります。

2012年にオープンした劇場は、専用劇場だからとても見やすい。内装に淡路特産のいぶし瓦や竹がふんだんに使われていて情緒たっぷり
上演前に人形操りの説明がある。「かしら」と右手を操るのが主遣い。人形の左手を操るのが左遣い。真ん中で人形の両足を操るのが足遣い。動かし方ひとつで、怒りや悲しみなどの感情表現が巧みにできることにビックリ!
福良港に隣接する「淡路人形座」

淡路人形座
URL:http://awajiningyoza.com/

 

■はも×玉ねぎ×そうめん。淡路島の食材を堪能!「心鮮料理 万代」

鳴門海峡に面した淡路島の南端、福良港(ふくらこう)。「道の駅・福良」として観光拠点にもなっており、鳴門のうずしおを間近で見ることができる「うずしおクールズ」乗り場を有しているほか、足湯施設があったり、農水産物及び加工品の販売する産直市場があったりします。お邪魔したのは「心鮮料理 万代」さん。こちらの名物はなんといっても地元で獲れた「はも」。脂がのってぷりぷりの絶品はもと、その骨からとる出汁のうまみに加え、淡路産玉ねぎの甘みが見事なハーモニーを奏でる「はもすき」は、淡路でしか食べられない贅沢な逸品なのでした。最後に淡路そうめんを投入すれば、まさに至福。御食国(みつけくに)と呼ばれる淡路島が誇る食材を存分に堪能できました。

地元で獲れた新鮮なはもを骨切りして、鍋に。頭や骨から出る出汁のうまさは格別。地元産の野菜もたっぷり
出た! 淡路名産の玉ねぎ。これがまた「はもすき」を一層引き立てる。この季節、淡路に行ったらこの組み合わせを食べない手はない!
知る人ぞ知る名産「淡路そうめん」は、昔ながらの手延べ製法で、その歴史は天保年間(1830~1843)に遡る。だしを吸っても、ふんわりつやつやの喉越しで、〆にぴったり。いくらでも食べられてしまう

心鮮料理 万代
兵庫県南あわじ市福良甲291-5
℡:0799-52-1140
URL:http://www.awaji-mandai.jp/

 

■鬼瓦を作る職人“鬼師”の仕事に迫る「株式会社タツミ」

邪気を払い建物を守る神として古くから作られてきた「鬼瓦」

淡路島は、三州瓦(愛知県)、石州瓦(島根県)と並んで日本三大瓦の産地です。淡路瓦の特徴は、銀色に輝くいぶし瓦であること。焼成時、表面に炭素膜をつくる『燻化(くんか)』を施すのが特徴で、独特の美しさがあり、耐火性や劣化に強いといった性能にも結びついています。

窯の前で、瓦作りについて丁寧に説明してくれた興津祐扶さん。鬼師の技を後世に残すべく、新しい仕事にもチャレンジしたいと語る

「この瓦は、『鬼瓦』と呼ばれています。建物を守る守護神として飾られ、古くは必ずしも鬼とは限らなかったのですが、室町時代の初めになって鬼面に定着しました。やがて民家の棟飾りにも使われるようになり、家庭円満を祈る、あるいは火災や疫病から家を守るために、鬼面は屋根の上から睨みをきかせていました。後に、般若面やおかめ面、恵比寿や大黒、桃の実、宝珠、さらには福や水の字など多彩な飾りが施され、縁起を担いだり、幸運への願いが込められてきました。この鬼瓦を作る職人を『鬼師』といいます」と興津さん。

「鬼師の仕事は、まず図面を書き、収縮率を踏まえて寸法を決め、粘土で土台を作り、その上に何度も盛り土をして形にしていきます。金ベラや木ベラなど多種の道具や指先を使い、何度も粘土を加えたり削ったりしながら、約1週間から10日かけて形を整えていきます。その後、乾燥には大きな物だと3か月、通常でも半月。一つの鬼瓦を作るのに、時間も手間も要する根気のいる仕事です」かつて、特殊な形状を創作できる「鬼師」は、一種の技術者集団として、重宝されると同時に、腕のよい「鬼師」は、請われて全国を渡り歩いたといいます。まさに「包丁一本」ならぬ、「ヘラ1本」で暮らしてゆける職人だったわけです。

現在は、寺社仏閣を中心に鬼瓦の注文がありますが、文化財修復だけでなく、海外からのオーダーや縁起物・記念品なども手がけていて、さまざまな瓦グッズを作っているそう。ちょうど作業中だった鬼瓦は竜のモチーフで、新築の際に直接注文があったとのこと。オリジナルを作ってほしい場合は、問い合わせしてみてください。

株式会社タツミ
URL:http://www.tatsumi-oni.co.jp/

 

■淡路瓦のお土産が見つかる「ギャラリー土坐」

続いて訪ねた瓦工場の2階に作られたカフェ兼ギャラリーの「ギャラリー土坐(つちざ)」。淡路瓦の新しい可能性を探るためにこの場所を作ったとディレクターの道上大輔さんは言います。瓦を身近に感じてもらうべく、屋根瓦以外の瓦製品の開発にも取り組んでいます。

屋根瓦以外の商品開発に積極的に取り組み、瓦の新しい可能性を追求したブランド「monokawara」を展開するギャラリーの内部。土の肌触りを感じるお洒落な空間

「瓦製造業って、基本的にお付き合いは設計事務所や工務店とか屋根工事店とか…BtoBの商売なんです。一般の消費者とは接点がないので、瓦の情報を住み手に直接伝える機会を作ろうと2010年にここをオープンしました。瓦屋根の需要が大きく減少してきている中で、『瓦っていいもんだよ、日本の家に瓦は欠かせないよ。瓦のある風景って素敵だよ』っていうメッセージを伝えたくて……」。

店内には、周囲の瓦屋根が見下ろせる大きな窓があり、瓦コースターの制作体験ができるほか、瓦スツールや瓦パターなど、アイデアにあふれるプロダクトを発信しています。

吸水性があり、結露した水滴を吸ってくれる瓦のコースター。「ワンピース」とコラボした限定品
「津井地区を瓦の町として全国に知ってもらいたくて、体験ツーリズムもやっています。建築業界の人はもちろん、一般の人にも、瓦のすばらしさを感じてもらいたい」と、会社の枠を超えて地域の瓦産業の可能性を訴える道上大輔さん

大栄窯業株式会社
URL:http://www.daieibrand.com/

 

■淡路島ポークを淡路瓦で焼く! 「かわらや」

淡路瓦を訪ねる旅、最後の〆は瓦グルメ! 七輪の炭でじっくり温めた瓦の上に、淡路島ポークと地元産のたまねぎや野菜を載せて焼くかわら焼き」です。

猪と豚の交配により生まれた淡路島ポークは、ゴールデンボアポークとも呼ばれ、「兵庫県認証食品」として書面審査から現地確認、安全検査を経て、認証を受けている。脂身は甘く融点が低いのが特徴。

淡路島ポークとは、実はイノブタで、鹿児島の黒豚と丹波のイノシシを掛け合わせ、さらにデュロック種の豚を交配させた四元豚で、全国シェア90%を誇る淡路島ブランドなのです。なんといっても脂がさっぱりしていてウマイ! これを藻塩やわさび醤油、ポン酢で食べると、ビールもご飯も進む進む。イノブタから染み出した脂で野菜を焼くと甘味がさらに際立ってジューシーな感じに。これは、確かに淡路ならではのグルメかもしれません。

店主の安冨義和さんは、「安冨白土瓦」という瓦製造会社も兼業。白地屋という、瓦を焼く前の成形を引き受ける業者でもあり、瓦に対する愛も人一倍。淡路瓦をなんとか観光資源にできないかと、工場の一部を飲食スペースに改造し、食材のイノブタをどうやったら瓦でおいしく焼けるかを研究して、今のお店にたどり着いたといいます。こちらでは、淡路瓦粘土彫刻体験ができたり、地域の子供たちと瓦でそうめん流しをしたりと、瓦の伝統を受け継いでいこうという姿勢がみなぎっています。

瓦製造と飲食店の二刀流で淡路観光を盛り上げたいと話す安冨義和さん。

かわらや
URL:www.awaji-taiken.com/

8月14日(火)には「南あわじ市市民まつり 福良湾海上花火大会」も開催されます。写真/@kosa_photo さんのInstagram投稿より

 

撮影/塩崎 聰 取材・文/編集部

Close