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【宮城】予約が取れない中国料理店「KUROMORI」に欠かせない!三陸の絶品食材

【宮城】予約が取れない中国料理店「KUROMORI」に欠かせない!三陸の絶品食材

仙台でもっとも予約が取れない店として知られ、全国から有名人など食通が数多く訪れる完全予約制の高級中国料理店「楽・食・健・美 -KUROMORI-」。地産地消に徹底的にこだわり、干しアワビやフカヒレなど三陸の海が育んだ素材を使った珠玉のメニューを提供しています。

「楽・食・健・美 -KUROMORI-」オーナーシェフ 黒森洋司さん

東京・西麻布の「香港ガーデン」、二子玉川の「福臨門魚翅海鮮酒家」料理長を経て、東日本大震災を機に仙台に移り住み、「楽・食・健・美 -KUROMORI-」(以下、KUROMORI)を開いたオーナーシェフの黒森洋司さん。土地の食材を最高の料理に仕立てて提供することで、それを味わうために宮城を訪れる人を増やしたいとの思いから、食材だけでなく調味料、下ごしらえに使うものまでよりすぐりの地場産品を使用。生産者の元へ足を運び、関わる人たちの思いを聞き、来店客に伝えています。「料理人には橋渡しの役目もあります。県外からいらした方に、宮城の『今』を食べられるという楽しみをつくりたい」と黒森さん。

■干しアワビを、干しアワビのソースで煮込んだ一品

取材のために作っていただいたメニューの一つが、南三陸町志津川の干しアワビを使った「南三陸 30頭 吉品鮑(きっぴんあわび)の煮込み」。一般的にはオイスターソース煮込みが定番ですが、「せっかくこんなにいいだしが出る食材で、そのだしをメインに使わないのはもったいない」と、干しアワビを干しアワビのソース煮込んでいるそうです。オイスターソース煮込みに慣れた舌にはカキの風味がないと物足りないと感じそうですが、干しアワビを戻す際に気仙沼市唐桑(からくわ)町のカキを使った自家製干しガキと女川町産ホタテの自家製干し貝柱を一緒に入れるなど、まさに三陸の海を閉じ込めています。

通常、干しアワビを戻すのにかける時間は4日間から1週間程度のところ、20日間かけるのも特徴。「急激に戻すと芯が硬かったり中まで色が入らなかったりしますが、じっくり時間をかけて水で戻すことによって徐々に大きくなり、むっちりした食感が得られます」と、包丁を入れると現れる年輪のような美しい層が、かけた手間を物語っていました。

■宮城が誇る3つの食材の滋味を詰めこんだ「リゾット炒飯」

もう一品は、「南三陸 干鮑(ほしあわび)・干海鼠(ほしなまこ)・志津川蛸(たこ)の鮑汁リゾット炒飯(チャーハン)」。南三陸の干しアワビと干しナマコ、志津川のタコ、仙台市泉区泉ヶ岳の原木干しシイタケが入った豪華な一品ですが、それが宮城の食材だけで作られていることにあらためて驚かされます。「中国料理の五大乾物といわれているものの3種類は宮城にあるんです。これは世界に誇るべき。そういうことをもっと多くの人に知ってもらいたいと思って料理を作っています」

そのほか、「吉切鮫(よしきりざめ)尾びれの姿煮」もKUROMORIの真骨頂。「食材王国といわれる宮城にはさまざまな食材がありますが、フカヒレや干しアワビ、干しナマコはまさに中国料理のために作られた食材なので、その可能性を100%生かして表現できるのは中国料理だけ」と黒森さん。仙台で人のつながりを介してさまざまな生産者と出会い、中国料理にとって最高の食材が揃っている場所だと確信し、「地元の食材だけで最高級の中国料理を作れる場所は、世界的に見ても宮城県だけ」と言い切ります。宮城で暮らす筆者も誇らしい気持ちになりました。

もう一品お出しいただいた冷菜「涌谷金にらとクラゲのあえ物」。玉虫塗の器の年輪のような模様が、金にらで光って浮き出るようなイメージで作られたそう。器と食材の織り成すハーモニーが絶妙な一品です

取材が終わり、「個人的には店自体を取り上げてもらわなくてもいいんです。店内や私自身の写真もいらないくらい。それよりも宮城にこんなにも素晴らしい食材があり、すごい仕事をしている人たちがいることを伝えてください」と黒森さん。その言葉を胸に、メニューに使われている海の幸をたどって南三陸町志津川を訪ねました。

●楽・食・健・美 -KUROMORI-
住所:宮城県仙台市太白区向山2-2-1 1階
TEL:022-211-0306
営業時間:18時30分または19時30分~22時
定休:日曜
URL:https://kuromori.jimdo.com/


仙台から南三陸町志津川まではクルマで約1時間半。“サンサンと輝く太陽のように、笑顔とパワーに満ちた南三陸の商店街にしたい”というコンセプトのもと、2017年3月3日に本設オープンした「南三陸さんさん商店街」では、イースター島から贈られた“世界に2体しかない”目の入ったモアイ像が迎えてくれました

「マルヤ五洋水産」の、活アワビと干しアワビ

KUROMORIで使っている干しアワビを取り扱っているのは、「株式会社マルヤ五洋水産」。代表取締役 高橋幸司さんが1957(昭和32)年に乾のり販売で創業し、その後宮城で初めて活アワビの取り扱いを始めました。岩手・宮城における活アワビの取扱量は全量の4分の1で、両県が断トツ1位です。

マルヤ五洋水産 代表取締役 高橋幸司さん

世間ではクロアワビが高級品とされがちですが、グラム単価にすると実は三陸のエゾアワビの方が高値。食感のよさと凝縮された味わいが特長です。その理由は餌と水温。岩手にはアワビの餌となる昆布が多く、クロアワビの生息海域に比べ水温が低いために成長のスピードも緩やかで、おいしい餌を食べてじっくりと育ち、身の締まった味のいいアワビになるといいます。

バブルの時代は取れば取るほど売れ、都内に乱立する高級すし店などで消費されていましたが、景気が落ち込み需要が低迷。相場も下がってきた中で新たな活路を見いだそうと、マルヤ五洋水産は2006年ごろから干しアワビの製造に取り組み、製品化に成功しました。

干しアワビは300年もの歴史があり製法も確立されていながら、その作り方は門外不出。マルヤ五洋水産では岩手県大船渡市三陸町にある協力会社とともに明治時代の文献に基づいた製法を試しましたが、なかなか品質が上がらず赤字の年が続いたそうです。「自分でアワビを買い付けて、殻から外して炊いて干して選別して箱詰めして、最初から最後まで一連の流れをやってみて、全ての工程を少しずつ改良してきました」と振り返るのは高橋敏昭常務。失敗を続けながらも品質を着実に向上させ、震災前には岩手・宮城の製造15社の中で取扱数量、金額ともトップに駆け上がりました

香港では三陸町吉浜(よしはま)で生産されるエゾアワビを使った干しアワビを「吉品鮑」と呼び、最高級品の扱い。五洋水産の干しアワビも吉浜の地で地元の女性たちが手作業で一つ一つ、殻から身を外し、炊き、炭火でいぶし、吊るして3か月天日干しにします。その後の選別や梱包、発送を志津川の本社で行っています。現在はほぼ全量を香港に輸出。残りの1%は商社を通して国内の高級ホテルなどへ卸しており、その一部がKUROMORIに届けられています。

帰り際、マルヤ五洋水産の本社に隣接する畜養施設を見せていただくと、岩手や宮城、福島の浜で育った活きのいいアワビが出荷を待っていました。「いつもおいしいアワビが食べられていいねとよくいわれますけど、そんなことはありません。大事な商品ですから、お正月くらい。いつかKUROMORIさんでじっくり味わってみたいですね」と敏昭常務は笑って見送ってくれました。

●マルヤ五洋水産
URL:http://www.goyo-suisan.co.jp/


アワビ味のタコ!?「漁師 歌津小太郎」

続いて鮑汁リゾット炒飯に使われたタコなどの水産加工品の製造、販売を行う「歌津小太郎」を訪れました。志津川といえば「西の明石」と並んで称される東のタコの名産地。タコは雑食で海にあるものを何でも食べる食欲旺盛な生き物ですが、志津川には特にタコが好むアワビ、カニ、ウニといった生き物が豊富で、人もうらやむ高級なものを食べる「グルメなタコ」だそう。身にもその味が染み出ている……というのが評判の理由です。

「本当に食べているかタコ一匹一匹を確かめたわけではないんですが、私たちもアワビ味のタコなんていう売り出し方をしていますね」と話すのは、2代目の千葉孝浩さん。事実、アワビの取れる場所に多く生息しているため、志津川ではタコ漁をする人に有利にならないようにと、タコよりもアワビの漁を先に行うという決まりがあります。2017年には志津川でタコが異例の豊漁となった一方でアワビが不漁になりましたが、これもタコがアワビを食べている証左です。

地元ではもっぱらゆでるか、蒸すかでお刺し身で食べているミズダコを、歌津小太郎ではスチームコンベクション(水蒸気と熱風の量を設定して調理を行う加熱調理機器)で焼きダコにして販売しています。タコを専門に買い付ける目利きを通して仕入れ、わたなどを取って下処理し冷凍。それを解凍して洗い、余分な水分が抜けたものを直接焼き上げます。タコ一匹一匹の状態を見ながら、スチームを利かせたり止めたりと細かく調整。ふっくらとして濃厚な味が特長の焼きダコに仕上がります。

ゆでダコに比べてほぼ半分にまで小さくなるため単価は倍にせざるを得ず、「タコに慣れ親しんだ地元の人たちは本当に買ってくれるんだろうかと半信半疑で始めました」と千葉さん。2015年にオープンした直営店「歌津小太郎本店」に並べたところ、タコ漁を行う漁師さんも「これはうまい」と太鼓判。「どんどん捕ってくるから、どんどん焼いてくれ。それを買うから」と、これ以上ない言葉を掛けられたそう。町外にも根強いファンは多く、車で1時間半かかる距離にもかかわらず、仙台から買いに来る常連客もいるほどです。

漁師 歌津小太郎のもう一つの看板メニューは「さんま昆布巻」。三陸沖で取れた脂の乗ったサンマを厳選し、独自の味付けを施し、三陸産の真昆布を使って手作業で仕上げています。メカブやホヤの加工品も地元産の素材を使い、メカブであれば2〜3月に取れる新芽、ホヤは6〜7月の甘みのある出始めの時期のもので1年分の商品を作っています。店舗は三陸自動車道南三陸海岸インターを降りて国道45号線沿いに15分ほど車を走らせると見えてくる大きな家屋風の建物で、白いのれんが目印。

東日本大震災から7年、困難に立ち向かい復興の歩みを進めてきた志津川の生産者たち。食材に携わる人たちの努力があってこそ、それを料理として形にできる。生産地に足を運ぶことで、黒森さんが伝えたかったことを理解できたような気がします。静かに命を育み続ける海を眺めながら志津川を後にしました。

●漁師 歌津小太郎
住所:宮城県本吉郡南三陸町歌津字管の浜55-1
TEL:0226-36-3655
営業時間:9時~17時
URL:http://www.utatsukotaro.co.jp/

こうした食材を使い、生産者の思いを大切にしながら極上のメニューを提供するKUROMORI。メニューは日替わりで、何度訪れても異なるアプローチで宮城の食の豊かさを感じさせてくれます。「東京でこのぜいたくをしようと思ったら5万〜6万円かかりますが、宮城に来れば半分くらいで済む。それなら旅行がてら宮城に行って食べてみようか、と思ってもらえたら」と黒森さん。

世界でも宮城でしか成立しない地産地消の最高級中国料理を味わいに、それを育む風土を感じに、地元でも評判の水産加工品を買い求めに、宮城に行ってみませんか。

取材・文/菊地正宏
大船渡生まれ仙台在住のライター/漁業ジャーナリスト/編集者。仙台経済新聞編集長。

撮影/久保田彩子

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