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【チョークボーイ】手描きアートをカルチャーに! CHALKBOYという旅人

【チョークボーイ】手描きアートをカルチャーに! CHALKBOYという旅人

2018年12月21日(金)〜23日(日)に開催予定の”手描きアーティストの祭典”「HAND-WRITTEN SHOWCASE (ハンドリトゥン ショーケース) 2」。その発起人である「CHALKBOY (チョークボーイ)」こと、吉田幸平さんにお話を伺いました。

「ハンドレタリング」の流行を、カルチャーにしていきたい

カフェや店頭でよく見かけるようになった「黒板アート」。当然ながら描き手が存在しますが、その第一人者といわれるのが、“チョークグラフィックアーティスト”の吉田さんです。

吉田さんが店内のアートを手がけた、東京・中目黒の「ONIBUS COFFEE」にて

「僕がチョークボーイを名乗り始めたのが2013年なんですが、その頃から結構仕事の依頼をいただいて。街の様子や本を見たりして、どうやらこれはNYやブルックリンのスタイルが流行っているなということが理解できました。ただこれはインテリアの流行であって、数年でブームは去るなと思っていました。そんな刹那な思いを抱きながら、たどり着いたのが“描くこと自体の楽しさが根付けば、流行りで終わらない”ということでした」。

2013年当時のチョークボーイの作品

そこで吉田さんが取った行動がワークショップの開催でした。チョークグラフィックを楽しんでもらう層を増やすために、描くコツや道具の紹介など、自身が培ってきたノウハウを惜しみなく公表したのです。

国内のみならず、台湾、オーストラリア、マレーシアなど海外でもワークショップを実施している

あるとき、ワークショップの参加者のなかに出版社の人がいて、とんとん拍子で本を出版することになったといいます。そして2016年1月に上梓したのが、初の著書「すばらしき手描きの世界 (主婦の友社)」。

「そこから1年以内に類書が10冊くらい出版されました。いろいろな人のテクニックや解釈が世に出たんですよね。と同時に、インスタグラムを通してさまざまな活動をするアーティストがいることも知りました。この人たちを集めて、イベントをやったら面白いなぁと思ったんです。僕1人でハンドレタリングの流行をカルチャーにしたいと叫んでいても限界がある。それなら、同じような仲間と一緒にやればいいと思いました」。

こうして2017年10月に、手描きアーティストの祭典「HAND-WRITTEN SHOWCASE」を実施。3日間で、日本全国から約1000人が来場。十分な手応えを得て、イベントを終えたと振り返ります。

「ここ最近は、描くということに注目が集まっているように感じます。先日も某雑誌で特集が組まれて。これまで取り上げられるのは、ペンやノートなど描く道具だったのが、人にも光が当たるようになりました。僕らの仕事は、ジャンル的にまだまだ不確定なんです……。例えば、グラフィックデザイナーやフォトグラファーとよばれる職種には学校も相場もあるけれど、僕らにはそれらがまだない。追い風が吹いているうちに燃料をくべて、もっと盛り上げていきたいですね(笑)」。

「チョークボーイ」の誕生秘話

今ではハンドレタリング業界を牽引する存在の吉田さんですが、彼はどのようにしてチョークボーイとなったのでしょうか?

学校に一人はいる、“絵のうまい人”だったという中学時代の吉田少年。美術の先生のススメで大阪市立工芸高校のビジュアルデザイン科へと進学。思い起こせば、当時から文字に興味があり、物心ついて初めて自分で買った本はサイケデリックな図録集だったといいます。一方、小学校5年から習い始めたピアノにもハマり、高校時代にはジャズバンドも組んでいたそう。「自分で曲を作ったりもしていました。音楽を続けたいけれど、それを仕事にはしないほうがいいな、となんとなく思っていて。その頃から、描くこと(視覚表現)と音楽(聴覚表現)の中間のようなことを将来やれたらと思い、海外のアートスクールに進むことにしました」。

ロンドンに留学した吉田さんは、視覚と聴覚の両方を表現できるアニメーション制作を学んでいたそう。また、ロンドンでの生活を通して、今の活動にも活きている“表現方法”を確立していったといいます。

「ロンドン留学時代、周囲の影響もあって聞く音楽も変わったんですが、それによって自分の音楽制作のプロセスが確立されましたね。頭の中でまず音を鳴らして、それをひたすらノートに描くんです。音像やノイズも含めて、言葉と絵、グラフィックで表現していくんです」。

吉田さんオリジナルの楽譜。後の自分へ残すメッセージだという

この表現方法は作曲だけでなく、頭の中で思い浮かべた像をアウトプットするという、吉田さんの特技になりました。

さて、ロンドンから帰国した吉田さんですが、音楽活動を続けていくために、就職せずにカフェでアルバイトをすることにしたそう。運よく拾ってもらえたという、当時ブックカフェの走りだった地元・大阪のお店ではグラフィックにも触れることができ、ライブイベントなど多くの刺激を受けることができた場所だったといいます。

「ホールスタッフとして入ったのですが、カフェ業務の一つに看板を書き換える作業があって。描くのが好きな僕にとっては休憩のような時間で、たっぷり時間をかけて描くようになりました。そうしたら、たまたま僕の描いた看板を社長が見て気に入ってくれて。メニューや社内の制作物のグラフィックも任されるようになったんです」。

“黒板といえば吉田”という状況を築きあげた吉田さんは、アルバイトでありながら出張があるほど、専門的な立場で仕事を任されるようになっていきました。実は吉田さんが当時働いていたカフェは、店舗プロデュースが本業。自社運営のカフェ以外にも、大型商業施設や他社物件の内装も手がけていて、それらの物件の黒板描きも請け負うようになりました。

大阪のくずはモールに描いた黒板アート

「他社の物件に描きに行くときには、会社側もさすがに”バイトを連れてきました”ではカッコつかないので、”アーティストを連れてきました”と言われるようになっていましたね(笑)。そんなとき、会社が手がけたカフェが店内内装専門誌に掲載されることになり、僕の名前も載せてもらえるということで、フルネームを確認されたんです。ヨシダコウヘイじゃ他にもいると思ったんで……思いつきで『チョークボーイ』って名乗ることにしたんですよ」。

これが2013年のこと。この頃、カフェの東京店立ち上げに伴い、拠点を東京に移した吉田さん改めチョークボーイのもとには次々と仕事が舞い込み、ついにはカフェのアルバイトを辞めて独立。現在では、チョーク以外にも万年筆やその他いろいろな画材を使って、壁面の作品制作から企業広告、CM、ロゴ制作やブランディング、各種メディアのイラストや挿絵など、幅広い仕事を手がけています。

音楽家としての、もうひとつの顔

実はチョークボーイ・吉田さんには、グラフィックアーティストの他にもうひとつ顔があります。「henlywork(ヘンリーワーク)」という音楽家としての顔です。ファッションブランドへの楽曲提供などもしていますが、チョークボーイを名乗る前の2009年頃から続けている活動、それが食と音楽の新しいパフォーマンス「EATBEAT!」というイベント。

料理人・堀田裕介さんとヘンリーワークによる共同プロジェクトで、調理中の音をサンプリングしながら、曲と料理を楽しむというもの。もともとは2人の「知りたい、食べたい」という欲求からスタートしたイベントなのだそう。

2018年11月に兵庫県養父市で開催した「EATBEAT!」の様子

これまでに全国各地で20回以上開催してきたEATBEAT!について、吉田さんは次のように語ります。「日本には各地域に素晴らしい食材がありますが、意外と地元の人がそれに気づいていないことが多いんです。僕らのイベントを通して、そうした地元のよさを再認識してもらえる機会になれば。僕にとってEATBEAT!の活動は、味覚表現と聴覚表現の間であり、この関係のような視覚と聴覚の間の表現を探していきたいと思っています」。

そして、チョークボーイとヘンリーワークという2つの顔について「そのとき、自分がやっていることが本職です。チョークグラフィックアーティストでもあり、音楽家でもある。僕としてはアウトプットする先が紙なのか、黒板なのか、音なのかの違いです。どちらも辞めなければ終わらないですよね」と話してくれました。

人間らしさが表れているハンドレタリング

インタビューの最後に、ハンドレタリングの魅力について伺いました。

「チョークのかすれや線が均一ではないところ、万年筆の滲みや濃淡のようなコントロールできないところに面白さがあります。手描きのよさが強調される部分で、そこには人間らしさがよく表れると思うんです。完璧ではないところが味わい深く、魅力を覚えますよね。タイプライトされた文字だとそこから音は伝わりませんが、手描きの文字からは音(バイブス)が伝わりますから」。

デジタルにないアナログのよさを伝えている、それがハンドレタリングの世界。「描いた瞬間から、この世に一つだけのものになる」という吉田さんの言葉にハッとさせられました。ハンドレタリングの価値をもっと伝え、カルチャーにしていきたいと活動するチョークボーイから今後も目が離せません! これからは街でグラフィックアートを見かけたら、描き手についてのイマジネーションも広げてみてはいかがでしょう。

●チョークボーイ インスタグラムページ(@chalkboy.me)

撮影・取材・文/長谷川浩史&梨紗(株式会社くらしさ)
広告出版社を退職後、世界一周の旅へ。海外で受け入れられている日本文化≒COOL JAPANと、日本が学ぶべき海外の文化≒BOOM JAPANを発信しながら40か国を巡る。その後、全国各地に根ざしたモノ・コト・ヒトを取材・発信する日本一周の旅へ。現在では、(株)くらしさを立ち上げ、日本各地の「らしさ」を伝え、繋いでいく活動に尽力している。 URL:http://kurashisa.co.jp/

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