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【日本一!?有名な、海の見える無人駅】「下灘駅」で「下灘珈琲」にトキメク

【日本一!?有名な、海の見える無人駅】「下灘駅」で「下灘珈琲」にトキメク

「JR下灘駅」そばに誕生した、新SNS映えスポット「下灘珈琲」

どこまでも続く穏やかな海をバックに、ポツンとたたずむ無骨な無人駅。海が見える駅として日本一有名といっていい愛媛県伊予市「JR下灘駅」は、数年前まで知る人ぞ知る場所でしたが、いまや、国内外から観光客が訪れる観光名所になりました。このにぎわいに加えて、2017年4月に、もうひとつのSNS映えスポットが登場。それが、白く、丸いフォルムの移動販売車で営むカフェ「下灘珈琲」です。

かつて、国内で最も海に近い駅といわれた下灘駅
下灘珈琲の外観。丸いフォルムが印象的

殺風景だった駅のそばに、”かわいい”を生みだしたのが、この地域で生まれ育ち、ウェディングプロデュース会社「アルテフィーチェ」を経営する戸田英清さん。

戸田英清(とだひできよ)さん 1974年生まれ。愛媛県伊予市出身。松山大学を卒業後、東京の証券会社に入社。初赴任地の宮崎市で4年間勤務ののち、退社し愛媛へUターン。アメリカ留学後、ふたたび愛媛に戻り、フリーターに。その後、東京のウェディング企画会社に入社。2年後、30歳でウェディング事業「アルテフィーチェ」を起業。2017年、同社のカフェ部門で「下灘珈琲」をスタート。趣味のトライアスロンでは地元の大会で毎年完走。「体が引き締まって、Tシャツをかっこよく着られるんですよ」

「話題になりはじめる数年前から、みんな、ここでなにかやりたがっていたんですよ。地元だし、やるなら僕が、との思いはありました。ただ、何ができるかはまったく分かりませんでした。そんなときに思い出したのが、6年前にひと目ぼれした車(戸田さんは『たまごちゃん』と呼ぶ)でした」。

シンプルに、「喜んでもらえるから」やる

知人が所有していた、丸くて真っ白な販売用の車。現在は使われていないと知り、迷わず購入しました。シェアカフェでコーヒーを淹れていた経験もあり、“たまごちゃん×コーヒー×下灘駅”と、点と点がつながったのです。「別にコーヒーを淹れるのが好きとか、特別コーヒーが好きとかではないんです。ただ、僕が淹れたコーヒーをおいしいと言ってくれるヒトがいて、それがうれしくてやっていました」。

コーヒーを淹れる戸田さんは、下灘珈琲のロゴ入りシャツを着用。「ロゴをつくったり、グッズをつくったりして、世界観が一つずつできあがっていくのが楽しい」と語ります

それでも、コーヒーに向きあうとき、戸田さんの表情から普段のラフさは消えます。豆の様子をうかがい、お湯を注ぐタイミングを見極めながら丁寧にドリップすると、周囲に芳香がふわり。「本当はね、若い女性が車をみて”かわいい~”って言ってくれたら、心の中ではめっちゃ、喜んでいるんです(笑)」。

やりたいことにたどりつくまで

アルテフィーチェを起業するまでは、「自分のやりたいことをなかなか見出せず、でも、何者かになりたくてもがいていました」と話す戸田さん。地元の大学を卒業後、東京の証券会社に勤務。「おもしろいと感じなかったんです」と、4年で会社を辞めてUターン。MBA取得を目指して渡米するものの、「まったく勉強についていけず1年で挫折しました」。その後は派遣会社に登録していろんな経験を積んだといいます。

下灘駅に立つ戸田さん。「松山市にある会社からも海が見えます」

そのひとつが、ウェディング事業のサービススタッフでした。誰かを楽しませることが好きな性格にビビッときた戸田さん。28歳で就職活動をして、東京のウェディング事業の会社に就職。2年後、ふたたび愛媛に戻り、独立を果たしました。今から14年前、ウェディングのオリジナルプロデュース実例がまだ少なかった時代に、ネットで気に入ったホテルなどの会場に直接交渉して、式場の提携を拡大。人気観光列車「伊予灘ものがたり」の車両や、森のなかなど、さまざまな空間で夫婦の理想のスタートを演出してきました。

「やりがいもありますが、失敗したときの落ち込みも半端じゃありません。この先ずっと続けるには、僕のなかでもうひとつ、夢中になれるなにかをはじめたかったのです」。

40代男子だって、「かわいい」を大切にしたい

「下灘珈琲」をはじめたのは、そんなタイミングでした。「こんなに有名になる前は、休日にヒトが来ているな、ぐらいでした。本当に駅と海しかないような場所なので、ここでカフェが成立するのか不安だらけ。それでも始めたのは、絶景にたまごちゃんが加わる、という圧倒的なトキメキ感があったからです。今でもこの光景にキュンとしますよ」。

下灘珈琲のドリンクメニュー

下灘駅の話題性もあり、戸田さんも下灘珈琲もメディアから引っ張りだこ。地域おこしのイベントで登壇することも。でも、戸田さんにとっては、特別なことをしているわけでもなく、「地域貢献」の言葉を使うこともありません。「ウェディング事業でいえば、ゲストの皆さんを満足させたり、カフェでいえば、コーヒー一杯で幸せを感じていただけたり。誰かの『楽しい』と僕の『楽しい』とが重なる場所をつくっていきたいだけ。なにかを生み出して、そこに魅力があればヒトが集まり、新たなヒトの流れができる。それがたまたま、下灘珈琲だったということです。これからもっとそういう場所をつくっていきたいですね」

コーヒーを片手に撮影。「この景色が当たり前のなかで育ったので、ここに世界各国からヒトが訪れるのが、実は不思議だったりします」

戸田さんの生き方とシンクロするのは、ブルース・リーが映画の中で放った「考えるな! 感じろ!」という名言。自分の心が向くほうに舵をとり、思い切ってやってみる。思い描く風景に、場を変えていく。力むことなく。「『かわいいな』『いいな』と感じたことを大切に温めて、これからもヒトがときめく場所をつくっていきたいです」。そんな戸田さんの仕事観、人生観は、のどかな下灘駅の風景がとても似合っていました。

>>明日は、戸田さんがオススメする「伊予&松山」のスポットをご紹介します

撮影・取材・文/ハタノエリ
愛媛県松山市在住のライター、エディター、コピーライター。新聞記者を経てフリーに転身。現在、全国誌など多くのメディアで、地域のモノ・コトを広く伝えることをメインに編集・執筆。「襟巻編集室」を立ちあげ、本づくりもしている。

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