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【愛媛・北条】おせちもいいけど、○○日目のカレーを食べに行かない?

【愛媛・北条】おせちもいいけど、○○日目のカレーを食べに行かない?

■美しい海岸線を持つ街の有名カレー店「カルコバ」

愛媛県松山市の、瀬戸内海に面した北条エリア。松山空港から車で約40分、県内指折りのオーシャンビューで知られるこの街に、県内外から多くのヒトがその味を求めてやってくるカレー店があります。北条駅前大人のカリー工房「CURCOVA(カルコバ)」。サラリと体に入り、カレー好きはもちろん、苦手なヒトもトリコにするその味は、北条の街に名物をつくろうとU・Iターンした地元有志が営んでいます。

元青果店の倉庫をセルフリノベした「カルコバ」の外観
メジャーデビューも果たした伝説のバンドマンが営む

オーナーで唯一のカレーの作り手、藤田晴彦さんは1991年、大手レコード会社(東京)からメジャーデビューを果たした地元大学発のロックバンド「THE COKES(ザ・コークス)」のヴォーカリスト。当時、地元愛媛のライブハウスに約1000人を集め、高校生が歌詞をまねるなど、社会現象を起こした若者のカリスマでした。

伊予北条駅前の商店街に立つ藤田晴彦さん(愛媛県今治市出身の1967年生まれ)。現在は、愛媛のラジオ番組のディスクジョッキーを務めるなど、マルチに活躍しています

「鳴り物入りでデビューしましたが、まったく売れなくて。5年で首になったときは奈落の底に突き落とされた気持ちでしたね」。それでも、インディーズで音楽活動を続けます。「これで売れなかったらしょうがないと思える最高の音楽」をつくりあげて、30歳を区切りに、音楽の世界とは一線を引きました。

「移動車の唐揚げ弁当店をしよう」と思いついたのは、旅先のニューヨーク。東京で、開店1時間で売り切れるほど人気でしたが、「やりがい以上にしんどさが上回りましたね。その後にはじめた露店の花屋も、ビジネス的には成功しましたが辛さがつきまといました」。

故郷・愛媛からラジオ番組をやらないか、と声がかかったのはそんなタイミングでした。
「地域から応援を得ていた手前、売れないで戻るのもみっともないと思っていました。でも、東京の生活に疲れてもいました。同時期に借金をすべて清算できて、引っ越し代がぴったりペイできたんです」。人生のリセットボタンを押す理由が、揃ったのです。

「THE COKES」のメンバーと。藤田さんは前段の真ん中
暮らしの理想をかなえるまち・北条を夫婦で選ぶ

水を得た魚のように、ふたたび音楽にかかわるディスクジョッキーの仕事に、藤田さんはのめり込んでいきます。「小さな街なので、ラジオだけでは生計は立てられないため、いつかまたここを去るかもしれないと、思い出づくりに妻と2人で四国各地を旅しました。この経験で、はじめて自分たちが暮らす場所のよさに気づくことができました。それから、海外も視野に入れて”住みたい条件”を2人で書き出したら、条件をクリアできる場所が愛媛だったんです(笑)」

終のすみかを探すため、夫婦で愛媛の海岸線を自転車で走ります。選んだのは、風光明媚で理想的な海岸線を持つ北条でした。

北条の海は砂浜もあり、夕陽が特にすばらしい。目の前の小さな島は「鹿島」と呼ばれ、野生の鹿が生息しています

北条のために「なにかできること」を探して、清掃活動などをしていた藤田さん。まちおこしのツールとして、紆余曲折を経て選んだのは飲食店でした。「カレーが好きで、スパイスとかにこだわりながら作るのも好きでした。仲間に食べさせたら『これならイケる!』と言われて始めたんです」。シャッター通りになっている伊予北条駅前の商店街に、2011年にオープンしました。

ハンバーグ、チーズ、目玉焼きの全部のせ1050円(税込み)
妥協がないレシピに込められた人生哲学

カルコバのカレーは、藤田さんが編み出したオリジナルレシピで調理しています。鶏皮の脂を油脂に、じっくりローストした地元産タマネギ、独自に仕入れているスパイス、ローストビーフ用の牛肉などを使い、丸1日かけて作りだす味は、どんなカレーとも似て非なるオンリーワンの味わいです。

ジューシーで脂がさっぱり。ルーとの相性バツグンの自家製ハンバーグ
自家製ピクルスは、まるみのある酸味で野菜の味を堪能できます

オープンから7年が経ち、現在も、活動に賛同する仲間たちがそれぞれの仕事を持ちながら、交代で店頭に立つカルコバ。松山の郊外に、その味を求めて全国から客が訪れます。それでも時折、レシピや素材を見直しながら、納得する味を追求するのが藤田流。そこまで”こだわる理由”について聞きました。

「カップラーメンも好きだし、決して無添加に対するこだわりが強いわけではありません。でも作っていれば分かるんですよ。添加物を使用したものを入れると、継ぎ足しで10日以上たつと変な味がしてきます。添加物が体にいいとか悪いとかではなく、正直に味に出てくるんです。オープン当初の味と、現在の味はまったく違います。ヒトの口に入るものを提供している以上、こだわり尽くしたいのです。それに、納得できるところまでやったら、なにかあったときに心が折れずにすみます。自分の防衛本能かもしれませんね」

ルーは継ぎ足し式で、最大14日目まで。この日はカレーができて2日目
カルコバの入り口に立つ藤田さん。現在は、藤田さんを入れて5名でカルコバを運営。ウェブデザイナー、修業中の調理人など職種はバラバラ

藤田さんが作るカレーは、「おいしい」という表現ではおさまらない。胃袋だけではなく、心が求める味。人生に迷いがあるとき、ちょっと落ち込んだとき、(おせちに飽きたとき)、食べたくなる究極の食べもの。彼の生きざまを隠し味にした”間違いないひと皿”は、北条の街にとって、この味を知った誰かにとって、この上なく心地よいスパイスであり続けます。

●北条駅前大人のカリー工房「CURCOVA」
住所:愛媛県松山市北条辻434-3
営業時間:11時30分~15時(売り切れ次第終了)
営業日:不定休
URL:http://curcova.blogspot.com/
※2019年は1月6日(日)より営業

撮影・取材・文/ハタノエリ
愛媛県松山市在住のライター、エディター、コピーライター。新聞記者を経てフリーに転身。現在、全国誌など多メディアで、地域のモノ・コトを広く伝えることをメインに編集・執筆。「襟巻編集室」を立ちあげ、本づくりもしている。

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