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【子供舞踊塾】6か月で舞台公演!?20歳の大学生が率いる「日本舞踊塾」

【子供舞踊塾】6か月で舞台公演!?20歳の大学生が率いる「日本舞踊塾」

伝統を未来へ――。日本舞踊のこころとかたちを伝える『子供舞踊塾』

日本舞踊を中心に、日本文化を総合的に学び親しむ『子供舞踊塾』。3歳から12歳の子どもたちは礼儀作法やさまざまな日本文化を体験し、それぞれが大きく成長しました。2018年12月21日、国立劇場 小劇場での公演までの日々を、子供舞踊塾代表の有馬和歌子さんが語ります。

「子供舞踊塾」代表・有馬和歌子さん
年齢を超えて育まれる仲間意識

「お願いいたします!」大きな声での元気な挨拶とともに、稽古場に集まってくる子どもたち。ここは、日本舞踊家の坂東寛二郎さんが監修する『子供舞踊塾』。短期集中プログラムとして3歳から12歳まで、約20人の子どもたちが集い、日本舞踊を通して礼儀作法や日本の文化を学んでいます。

子供舞踊塾の代表をつとめる有馬和歌子さんは、まだ20歳の大学生。坂東寛二郎さんを父に、2歳から日本舞踊の道を歩み、坂東寛十胤(ばんどうかんとみ)の名を持つ舞踊家です。

和歌子さん 「『子供舞踊塾』の設立は、私が小学生のころ。踊りを通して子どもたち、そしてご家族の笑顔を引き出したい……という父の思いから始まりました。同級生やお友達も参加しておりましたので、子ども向けの古典演目や童謡のお稽古、公演のことは記憶に残っています。その後はゆったりと活動をしておりましたが、私自身が大学生になり、学業と両立しながら日本舞踊の世界で携われることは何だろう?と考えたときに、小さな子どもが大好きな私だからできることとして、企画を新たに立ち上げました。子どもたちと年齢も近いので、先生というよりもお姉さん、リーダーといった立場から、子どもたちと一緒に勉強させていただいております」

バレエやピアノ、バイオリンなど“西洋”の舞踊や音楽を稽古する子どもは多くても、日本舞踊や邦楽には、親の世代も含めて触れる機会が少ない昨今。募集をしても参加者が集まるわけはない、と、お父さまをはじめ周囲の大人は半信半疑だったそう。

和歌子さん 「“半年後の公演”というゴールを設定して募集したところ、思った以上の反響がありました。3歳から12歳と年齢に幅があるのですが、早い段階から仲間意識が生まれ、年上の子が自然と年下の子を思いやることを心がけていたり、難しい振り付けをお互いにフォローし合ったりするようになりました。一人っ子が多く、年の離れた子同士が触れ合う場が少ない中、世代を超えた繋がりが一生の宝物になるとよいなと思っています」

大きな声で挨拶のできる子に

お稽古は、浴衣に着替え、扇子を前に置いての挨拶から始まります。

和歌子さん 「私が2歳で稽古を始めたときもそうでしたが、小さな子どもたちには“お膝の前に手をついて、三角形をつくって……”と言って覚えてもらいます。最初は小さな声だったのが、だんだん慣れてはっきりと『よろしくお願いいたします』『ありがとうございました』が言えるようになっていきます。お稽古の空間だけでなく、公演の後日開催したパレスホテル東京での打ち上げの席でも、レストランの方に自然と『ありがとうございます』が言える子になっていたのは嬉しかったですね」

パレスホテル東京にて

メンバーの男女比率は、半々。普段アクティブな男の子だからこそ、好奇心を持って取り組んだり、心を落ち着けるよい機会にもなっていると和歌子さんは語ります。「正座も自然とできるようになりますし、浴衣を畳めるようになるスピードにも驚かされました。仕立て上がった浴衣だけではなく、反物を見せて、日本の着物は直線で構成されていて無駄がないこと、それは、物を大切にする精神から生まれた部分もあるのかもしれない……などとお話しする機会も設けました」

そう、日本舞踊から広がって、さまざまな伝統や文化に触れられることが、『子供舞踊塾』が子どもやご家族にも人気の理由です。公演の前には古典舞踊で使われるかつらが仕上がる過程を見学したこともありました。

かつら合わせ見学の様子 (かつら:株式会社 日本舞踊かつら 床山:東京鴨治床山株式会社)

和歌子さん 「鬘屋(かつらや)さんや床山(とこやま)さん、化粧を施す顔師(かおし)さん、衣裳(いしょう)さんなど、プロのかたがたの作業を間近に拝見できる貴重な体験でした。子どもたちにとっては、ひとつの舞台のために多くの方が携わってくださっていることを知るよい機会にもなったと思います。スタッフの皆さまが子供舞踊塾の目指す思いに寄り添い、子どもたちへ熱意ある現場の様子を見せてくださいました」

公演で打楽器を担当したパーカッショニストの服部 恵さんとのあわせ稽古では、どのような楽器が舞台に使われるのかを知るための実演会を開催。

舞台でコラボレーションをする楽器について、丁寧に説明してくださったパーカッショニスト、服部 恵さん

和歌子さん 「とにかくみんな、好奇心が旺盛です。実演会以外にも、鼓や三味線の生演奏はもちろん、フレームドラムに入れた小豆で波の音を表現するといった日本ならではの工夫にも興味を持ってくれました。また、舞台衣裳の足袋をすべて染めてくださった友禅作家の鈴木三千絵さんには、布を染める工程を楽しいクイズ形式で子どもたちにお話しいただき、榮太樓總本鋪さまには和菓子のお話をうかがってお茶とお菓子をいただいたり、ときにはフォトグラファーの岡本隆史さんが撮影された「坂東玉三郎写真展 ―すべては舞台の美のためにー」を鑑賞、といった学びの機会も設けました。今後は、季節の行事を取り入れた体験も、増やしていけたらと考えています」

子どもたちにとってもう一つ、大きな成長の糧となったのが、みんなで話し合って、自由に発言ができる環境をつくったこと。年齢を超えて議論ができる、意見が言える場を持ったことは、これから社会へ、世界へ羽ばたく子どもたちにとって、大きな自信に繋がったことでしょう

和歌子さん 「腕を大きく伸ばすときには何をイメージする?と聞けば『お花!』『カブトムシ!』など、自分の好きなものの名前が挙がってきましたし、『どうしたら、そこが森に見えるかな?』『葉っぱの香りをイメージしよう』など、共通認識を持つこともできました。みんなの前で自分の意見を話すというのは勇気がいります。その勇気を育みながら自由に話し合うことは、とても楽しい時間でしたね」

いよいよ本番! 子どもたちのパワーに感動

“学び”と“体験”は、公演当日にピークを迎えました。舞台は、舞踊家にとって聖地ともいうべき、東京・半蔵門の「国立劇場 小劇場」。

まずは、楽屋入り口の神棚に手を合わせます
開演前の厳粛な舞台上にて、お神酒を手にとり舞台の成功を祈願しました

 

顔(化粧)をして、衣裳をつけて、いよいよ舞台へと向かいます (顔師:神田光修ほか 衣裳:松竹衣裳株式会社)

和歌子さん 「本番直前に楽屋で全員を集め、ミーティングを行いました。『このメンバーで本番の公演ができるのは一回限りです。もし間違えてしまっても慌てず、すぐに気持ちを切り替え、なにより思いっきり楽しもうね!』と、緊張感の溢れる楽屋で話をいたしましたら一人の男の子が、『なんで本番は一回しかできないの?』と聞きました。直球な質問からは、舞台に向き合うまっすぐな思いや、仲間と共有できる濃密な時間が間もなく終わってしまう寂しさが感じられ、その素直さについ笑顔がこぼれてしまいました」

公演で披露された演目は、この日のために作られた創作舞踊『アーヤ物語』。地球ができるまでをテーマに、太陽(坂東寛二郎)と月(有馬和歌子)に見守られて、雷の子、波の子、森の子たちが踊ります。

太陽:坂東寛二郎
月:有馬和歌子(坂東寛十胤)

和歌子さん 「誰か一人が主役になる演目でなく、みんなが参加でき、みんなが輝く舞台にしたいと工夫いたしました。活発な子は雷、きれいに踊る優しい子は波、おおらかで弾ける笑顔の子は森……と、それぞれの個性に最も合う配役を考えました。なにより驚いたことは、子どもたちの“本番力”です。大きなミスもなく、ときには仲間同士のさりげないフォローや配慮がうかがえる場面もあり、確かなチームワークと冷静さには驚きました」

さまざまな体験を共有した仲間たちと、意見を出し合いながら完成させた舞台の成功は、子どもたちの大切な宝物になることに間違いありません。

和歌子さん 「ご家族やお友達を客席に迎え、生の舞台だからこそ味わえることがたくさんありました。そして2019年も、新しい塾生の募集が始まり、2019年10月22日(火・祝)に『日本橋公会堂』にて、日本舞踊公演の開催が決定いたしました。『子供舞踊塾』を通して、一生忘れられない体験と、子どもたち一人ひとりの可能性を広げられる挑戦を続けていきたいと考えております」

●有馬和歌子● 平成10年東京都生まれ。平成13年2月、父である坂東寛二郎に入門。国立劇場にて開催された第3回「寛和会」にて「菊づくし」で初舞台。平成24年、坂東流名取取得(坂東寛十胤)。平成28年、坂東流師範取得。現在は学習院大学哲学科で東洋美術史を学びつつ、舞台、イベント、テレビなどで活躍中

●子供舞踊塾 
Facebookページ
URL:https://www.facebook.com/子供舞踊塾-975955709272008/

お問い合わせ/坂東寛二郎オフィシャルウェブサイト
URL:http://bandokanjiro.com/contact.html

構成・取材・文/清水井朋子

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