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【沖縄・宜野座村】世界の人々と文化が出合う「がらまんホール」の仕掛け人に迫る

【沖縄・宜野座村】世界の人々と文化が出合う「がらまんホール」の仕掛け人に迫る

やんばるの玄関「宜野座村」で、文化を発信し続ける「がらまんホール」の魅力とは?

亜熱帯の豊かな森が広がる沖縄県本島北部は、通称「やんばる(山原)」という呼び名で親しまれています。やんばるは、国頭村(くにがみそん)、東村、大宜味村(おおぎみそん)、今帰仁村(なきじんそん)、本部町(もとぶちょう)、名護市、恩納村(おんなそん)、宜野座村(ぎのざそん)、金武町(きんちょう)の9つの市町村からなるエリア。南部から北上、やんばるの玄関口に位置するのが宜野座村(ぎのざそん)です。そこに、村が運営する多目的文化施設「がらまんホール」はあります。

小越友也さん 広島県出身。琉球大学教育学部音楽専攻。大学進学のため沖縄へ移住。在学中にアートマネジメントの存在を知り、アートを通じて人を繋げる仕事に興味を持つ。卒業後、沖縄県南城市のイベントホール「シュガーホール」の企画に携わったのち、北部宜野座村(ぎのざそん)に建設された「がらまんホール」の運営を任される

がらまんホールは、沖縄で受け継がれている伝統芸能や、世界各国から招いた先鋭的アーティストによるコンテンポラリーやフュージョン、ジャズなど、ワールドワイドな音楽が楽しめる空間。音楽の演奏や芸能を鑑賞するだけにとどまらず、市民主導型のユニークなイベントが開催されたり、地域の文化を探る講座が開かれたり、人と人が出会える場所として地域から愛されています。

©NAKAMA YUTA

一方通行の発信ではなく、地域住民とアーティストたちが、一緒に学びを深められる場となっていることも、がらまんホールの大きな特徴といえます。

観光地としては、まだ“未開の地”ともいわれる宜野座村。田園風景を望むこのエリアで、なぜこのような取り組みがされているのか。仕掛け人である「がらまんホール」マネージャー・小越友也さんにお話をうかがいました。

がらまんホールの管理・運営を15年以上任されている小越さんは、大学進学をきっかけに沖縄へ移住します。琉球大学教育学部で音楽を専攻し、在学中にアートマネジメントという分野に興味を抱くようになりました。音楽や芸能などのアートを通じて、人と人を繋ぐ仕事について考えていた矢先、南城市佐敷にある「シュガーホール」の企画に携わることに。

クラシック音楽のコンサートなどさまざまなイベントに触れ、町民たちも参加して作り上げる「佐敷町ミュージカル」に感銘を受けます。その後、平成15年に宜野座村に「がらまんホール」が完成。ホールを訪れた小越さんは「宜野座村」という土地と「がらまんホール」というスペースのポテンシャルに注目します。

小越さんが考える「宜野座村」の魅力とは?

「那覇から車で1時間。田園風景が広がる、いい意味での“ほどよい田舎感”を味わえる宜野座村。あえて都市部の劇場やホールではなく、ここだからこそ演ってみたい、というアーティストたちも多い。彼らを招くことで、アーティストにとっても特別な場所になってほしい」

那覇ではなく、宜野座村に滞在してもらい、土地のものを食べ、地域を散策してもらうなど、宜野座という地を存分に体感。宜野座という土地を感じ、魅力を味わったアーティストたちが奏でる、特別な演奏を堪能できるのです。沖縄の中でも、唯一の場所といえるのではないでしょうか、と小越さん。静かな宜野座の夜、ホールでは熱い演奏が響き渡ります。終演後、宜野座の星空を見上げながら、演奏の余韻に浸れるひととき。これこそが「がらまんホール」の魅力なのです。

©NAKAMA YUTA

アメリカ、フランス、イタリア……各国からアーティストが集うがらまんホール

がらまんホールでは、2012年から毎年「宜野座国際音楽祭」が開かれています。世界約20か国から、コンテンポラリー、フュージョン、ジャズなど異彩を放つアーティストたちが集まり、宜野座でしか奏でられない音楽を披露してくれる贅沢な音楽祭。フランス、イタリア、オランダ、南アフリカのジャズをはじめ、新進気鋭のコンテンポラリーサウンドが、やんばるの入り口に佇むがらまんホールで奏でられています。

沖縄の文化芸能の発信

がらまんホールは、海外アーティストによる公演だけでなく、沖縄独自の文化である琉球舞踊やエイサーなど「伝統芸能の発信地」としての役目も担っています。また、沖縄にゆかりのある南米やハワイの人々との親交を深めるため、「お出かけ公演」や「交流音楽イベント」も開催。音楽だけではなく、学びを深めるプログラムと合わせることで、異国へと移住した、沖縄の人々たちの歴史的背景を学ぶ機会へと繋がっているのです。

©NAKAMA YUTA

がらまんホールを超えた取り組み「漢那ドライブインアートプロジェクト」

長年、がらまんホールから世界の文化を発信し続けてきた小越さんは、がらまんホールを超えた取り組みにも参加しています。宜野座村で、人々から40年以上愛され続けてきたレストラン「漢那ドライブイン」が歴史の幕を閉じました。「たくさんの思い出があるので、3年間くらいはそのままにで、すぐには壊さないよ」というオーナーの話を聞き、小越さんをはじめ、地域の人たちが知恵を絞り、アートスペースとしての活用を見出します。地域住民たちへの刺激となる、他にはない取り組みをコンセプトに「漢那ドライブインアートプロジェクト」が発足しました。

©NAKAMA YUTA

長年愛されてきたドライブインに、新たな息吹を与えるプロジェクト。「県内外で活躍する写真家や彫刻家など、現代アートの作品が期間限定で展示されます。地元の人々に愛された場所、人々の思い出など記憶を守りながら、地域に住む人たちの心が豊かになるような場作りをしたい」と、小越さん。

©NAKAMA YUTA

多目的ホールだからこそ「既成概念」の壁を取り払うイベントが必要

小越さんが考える「がらまんホール」の存在意義は「人々が出会う公共の場づくり(アゴラ)」。アーティストと市民を繋ぎ、出会いの場を設けることで、新たな視点や創造性へと繋げていく。それが、この場所を運営する仕事の根幹といいます。多目的ホールとして、音楽にとどまらず、やんばるの方言でハルサーと呼ばれる農家や学生たちとコラボレーションして生まれた食文化を学ぶ講座や、マルシェ、コーヒー文化を深める「OKINAWA COFFEE FESTIVAL」など、さまざまな活動を行っています。

©NAKAMA YUTA

若い人こそ、リアルなアートや音楽に触れる意味がある

「音楽も、食も、コーヒーのイベントも、誰かのちょっとした“面白いアイデア“から始まり、たくさんの人たちとともに実現へと向かっていきます。海外では、学生がアートや音楽を無料で鑑賞できる補助を受けられる国があります。それに比べて、日本の環境はまだまだです。若い人こそ、アートや音楽に触れるリアルな体験で感性を磨き”おもしろいこと“へのチャレンジ精神を伸ばしてほしい。それこそが、未来の創造へと繋がると考えているんです」と小越さん。がらまんホールは、大学生以下は無料にすることもあり、幅広い人たちに「質の高い芸術」を届ける役目を担っています。

世の中には、正解のない課題が山積みです。現代社会に生きる若者たちが、社会で多くの課題を乗り越えるためにも、アートや芸術に触れて、“自らに問う”視点をもってほしい。そのことが、解決への糸口を見出すきっかけとなれば。

世界中から、がらまんホールに集うアーティストたちは、宜野座村を知り、体験することで宜野座村ならではの音を奏でます。それを聴くことは、宜野座でしか体験できない「レアなニッポン」となるハズ。その特別な体験。皆さんもぜひ、味わってみてください。

●がらまんホール
住所:沖縄県国頭郡宜野座村字宜野座314-1
電話:098-983-2613
URL:http://garaman.jp/sf/

撮影・取材・文/monobox(URL:https://monobox.jp/) 沖縄のデザインプロダクション。地域のデザインを手がけるほか、フリーペーパーの制作、沖縄の観光情報を発信するための取材・撮影・執筆などを手がける。また、沖縄の地域工芸作家の作品を展示販売する「Galleryはらいそ(URL:http://haraiso.gallery)」を運営中。

編集/くらしさ

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