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【広島・江波】男たちの夢とロマンが詰まった広島発マイクロブリュワリー「Session’s Brewery」

【広島・江波】男たちの夢とロマンが詰まった広島発マイクロブリュワリー「Session’s Brewery」

この記事は、特集・連載「夏のクラフトビール特集」広島編 Vol.2です。

2000年頃から世界的に広がったマイクロブリュワリーのムーブメント。2010年代には日本でもマイクロブリュワリーやブリュワリーに飲食施設を併設する“ブルーパブ”が続々誕生する中、広島市はビール文化がなかなか浸透せず、長らくブリュワリーの空白地帯といわれていました。

その広島市にビアホールやマイクロブリュワリーを次々と開業し、一つの風穴を開けた人物が株式会社Session’s代表取締役社長の高岡隆一(たかおかりゅういち)さんです。

「どこにもない美味しいビールを提供したかった」
代表取締役社長の高岡さん。今も週の半分はSunny Day Beerの厨房に立つ

Session’s Breweryの始まりはビアホール運営の実体験から。2015年に広島市内にオープンしたビアホール「Sunny Day Beer」で、輸入ビールや国産のクラフトビールなどこだわりのビールを提供しているうちに、自分たちにしか造れない味わいのビールを造ってみたくなったといいます。

「営業が終わった後、スタッフみんなが残って談笑する中でふと『ビールを自分たちで造れたらいいよね』みたいな話をして。本当にそのままブリュワリーを造ることになりました。今、振り返ると浅はかだったですね(笑)。でも、そんなに難しく考えていなかったからこそ、逆にできたのかな、とも思います」


いざブリュワリー開設に向けて動き始めた高岡さんたちの前に立ちはだかったのは、あまりに煩雑な事務処理と申請書類、そして準備しなければならない機材の多さでした。

「酒類等製造免許(発泡酒)の申請から取得まで、早くて4か月、長くて1年といわれていますが、それは4か月で取得できました。ただ、その免許申請の前段階として、物件も取得しなきゃいけない、機材も揃えなきゃいけない、実務経験もないといけない、販売先も決めておかないといけない……と、とにかく準備が大変で、それに半年かかりました」


大変な状況の中、高岡さんを支えた人物の一人が現在、Session’s Breweryのヘッドブルワーを務める吉松憲一(よしまつのりかず)さんでした。「彼がいなければ、ブリュワリーは実現しなかった」と高岡さんが大きな信頼を寄せる人物です。

吉松さんは、高岡さんが前職で勤めていた飲食関連の会社時代の仲間で、ビール会社に勤めていたこともあるという経験と、クラフトビールが大好きで知識が豊富だったことから、白羽の矢が立ちました。

しかし、当時は醸造経験のなかった吉松さん。その日からブルワーになるべく猛勉強の日々が始まります。まずは、知人に紹介してもらったマイクロブリュワリー「石見麦酒」(島根県)で修業を積み、ビール関連のセミナーに積極的に参加。関連本もかたっぱしから読んで、ビール造りのいろはを身に付けました。

「自分のビールの知識なんて氷山の一角でしかなかった」と当時を振り返る吉松さん。

現在はSession’s Breweryのヘッドブルワーとして、毎日5種類のビールを醸造しています。修業先だった『石見麦酒』のオーナーとは今も交流が続いており、時々相談に乗ってもらうこともあるそう。

「ブルワー同士の交流はとてもオープンで、ビールのレシピも互いに教えたり、教えてもらったりします。広島にももっとブルワー仲間が増えてほしいですね」

Session’s Breweryのビールはすべてが手造り
吉松さんが手に持っているのは「酵母」

Session’s Breweryの1回あたりの醸造量は100〜150L。これくらいの醸造規模のブリュワリーは、その工程のほとんどがほぼ手作業だといいます。「大変なことも多いのですが自由度が高くいろんなスタイルのビール造りを試せるのが、僕たちのような小さなブリュワリーのよさです」と吉松さん。

せっかくの機会なので、クラフトビール造りの現場を見せていただきました。

1.麦汁造り(糖化→濾過→煮沸)

まず細かく砕いた麦芽(モルト)と水(お湯)を、マッシング(糖化)兼ロータリング鍋に入れて糖化させ、麦汁を造ります。

糖化中の麦汁。すくって見せてくれたのは麦芽。攪拌も人力です
糖化が進むと、麦汁の透明度が高くなります
麦汁に含まれる糖分の量を比重計で測って糖化の進み具合をチェックします

糖化が完了したら、麦汁を濾過します。残念ながらこの工程の写真は撮影できていないのですが、濾過された麦汁がいわゆる「一番麦汁」といわれるものです。絞り終わったあとの麦芽にはまだ沢山の糖分が残っているので、その麦芽にお湯をかけて残りの糖分も絞り出します。そうして濾過した麦汁にホップと副原料を追加して、煮沸用の鍋で60〜90分煮沸します。

2.麦汁を冷却→発酵タンクへ

煮沸した麦汁を冷却装置で一気に17度くらいまで冷却します。

手作りの冷却装置。銅管の中を麦汁が流れます。緑のホースの中にも銅管があり、ホースと銅管の間を水が流れています
3.発酵・熟成

発酵タンクで発酵・熟成します。

ずらりと並ぶ発酵タンク。このタンクも手作り
冷却した麦汁を消毒した袋の中に集めて、袋を上下に振りながら麦汁の中に空気を含ませます。そうすることで発酵しやすくなるそう
酵母を入れて発酵開始。発酵期間はビールの種類によって異なり、エールビールが約1週間、ラガービールが約3週間

こうして手間ひまかけて造られたSession’s Breweryのビールは、広島県内外での評価も急上昇中。飲食店や酒販売店など取引先は増え続け、開設からわずか1年の2019年6月現在で計25軒。その数は、これからさらに増える予定だといいます。

「既成概念を覆して、いろんなビールの楽しみ方を知ってほしい」

最後に高岡さんに今後の展望について伺いました。

「僕は『ないものをつくる』ということに興味があるんです。今、ここにないものには、きっとニーズがあるだろうというワクワク感ですね。これからも『こんなのがあったら、いいよね』という発想で、広島にないもの、新しいものをつくっていきたいですね」

「ビール」に対するみんなの既成概念をいい意味で裏切りつつ、もっとたくさんの人に気軽にクラフトビールを楽しんでもらえるような提案をし続けたい、というのがSession’s Breweryの立ち上げ当初からのコンセプト。

2015年に株式会社Session’sを立ち上げ、Sunny Day Beerをオープン。2018年にはSession’s BreweryとFuel storeもオープンし、広島のビールシーンを盛り上げてきた高岡さん。これからも新しい発想とSession’s Breweryのビールで、広島をもっとアツく盛り上げてくれるに違いありません。


Session’s Brewery(醸造所)
住所:広島県広島市中区江波東1-12-39
TEL:082-533-8622
定休日:月曜日
URL:http://www.the-sessions.co.jp/brewery/

撮影・取材・文/イソナガ アキコ
約10年のWEBディレクター業ののち、2014年よりフリーライターとして活動。
WEBや雑誌のインタビュー&取材記事や、中国・四国を中心とする観光記事を執筆。
撮影を含む仕事も増える中、カメラ熱も上昇中。
2019年、ブックイベントや本屋トークショーを主宰する「あいだproject」を創立、
ただ今、こちらも精力的に活動中。

編集/くらしさ

 

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