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久留米絣を知り尽くす問屋兼メーカーが生み出した「もんぱん」

久留米絣を知り尽くす問屋兼メーカーが生み出した「もんぱん」

「久留米絣」の産地である福岡県筑後地方発、「もんぺ」を基に生み出されたカジュアルウェアが注目を集めています。その名も「もんぱん」。久留米絣でアパレル製品の企画・販売を手掛ける「オカモト商店」のブランド「ギエモン」のラインナップアイテムであり、そのユーザーを増やすことで久留米絣の素晴らしさを全国に発信しています。

久留米市の「オカモト商店」。産地でいち早く、現代のファッションと久留米絣を融合させた

江戸時代後期、井上伝(でん)という少女によって生み出されたといわれる久留米絣。最盛期には300を数えたその製造元は、今やおよそ30のみといわれています。しかしながら、時代の流れに適応し、小規模ながら現代においても「産業」として筑後地方にしっかりと息づいています。

オカモト商店は、その専門問屋として1950(昭和25)年に創業。やがて、自社商品の販売を手掛けるようになり、1981(昭和56)年には洋装を主体とする自社ブランド「儀右ヱ門(ぎえもん)」を設立。現在、全国の百貨店などに14店舗を構えるまでに発展を遂げています。

「儀右ヱ門」の店舗。製品はオンラインショップでも購入可能 写真提供:オカモト商店

カタカナ表記の「ギエモン」は、ワーク・スポーティー・ユニセックスをキーワードに、その派生ブランドとして誕生しました。男女幅広い世代に向けて、久留米絣への“入り”を意識しつつ、服飾や雑貨など多彩なアイテムを展開しています。

久留米絣のもんぺが秘める“万能カジュアル”としての可能性に着目

同社では、筑後地方で長らく愛用されている、久留米絣製のもんぺの優れた着心地と機能性に“日常使い”としての可能性を大いに感じ、既に同社の定番商品であったショートパンツをベースに新たな商品開発へと至ります。これこそが、1999(平成11)年に誕生した「もんぱん」なのです。

2011(平成23)年に登場した現行モデルは、よりカジュアルに、そして多用途に進化。レディース製品が主体だった同社製品において、メンズにも販路を拓くきっかけにもなったといいます。

もんぺ+ショートパンツ=「もんぱん」。男性ユーザーも増えている

「久留米絣へのファーストタッチとして、『もんぱん』を通じてその良さを知ってもらえたら何よりです。若い世代には『もんぺ=婦人の農作業着』という固定観念がほとんどなく、現代のファッションとしてすんなり受け入れられています」と、同社専務・野口英樹さん。

野口さんは、兄の3代目社長・野口和彦さんとともに「儀右ヱ門」の全国展開に奔走。「もんぱん」開発前、既にもんぺを自分で7分丈にバッサリと切って穿いていたそう

野口さんは、「もんぱん」の唯一無二の着心地の秘密は、機械織りの生地にあるとも。「“機械”といっても、久留米絣では年代物のシャトル織機が主力です。織り目に適度な緩さ、微妙なズレが生じ、これこそが久留米絣の素朴な風合い、そして絶妙な心地よさを生み出しているんです」。

「もんぱん」が日常使いやアウトドアレジャーなど、いかに優れ、万能であるかは別記の記事のとおり。「久留米絣を専門的に取り扱ってきた、当社の知識とこだわりの成果の一つです」と野口さんは話します。

「もんぱん」は久留米絣という伝統に触れる「入り口」としての役割を担う
将来の「久留米絣」継承に向けて、「もんぱん」が果たす役割

そして、「もんぱん」を含めた製品開発においては、同社が中心となり2004(平成16)年に結成された、久留米絣の業者組合「井桁(いげた)の会」での取り組みや連携が生かされています。

全国の伝統工芸における後継者問題は、久留米絣の現場においても大きな課題の一つです。現在、産業として継続しているとはいえ、衰退危機と隣り合わせというのが現状といいます。

同会は「括り」という久留米絣特有の部分染め技術、そして染色や織りの各工程での課題、さらにはデザイン、マーケティングといったあらゆる課題に、協力して向き合っていくことを目的に生まれました。

「国内外のファッションについての情報共有、勉強も意図しています。織元ごとに生地に特色があり、商品開発においては、織元から提案があったり当社が提案をしたりしています。人気商品で10色の糸を使ったチェック柄の『もんぱん』も、こうした連携で生まれました」と野口さん。

10色の糸を使った人気の「もんぱん」は、「井桁の会」の連携によって生まれた 写真提供:オカモト商店

なお、「儀右ヱ門」「ギエモン」というブランド名は、「からくり儀右衛門」と呼ばれた地元出身の偉人・田中久重(1799~1881年)に由来します。若かりし頃、久留米絣の発案者・井上伝を助け、創成に大きく寄与した“創意工夫の天才”といわれた人物で、さまざまな発明でその名を馳せ、晩年に設立した製作所は、現在の東芝の礎となりました。

その儀右衛門の精神を受け継ぐ、オカモト商店。「もんぱん」は、久留米絣の将来への羽ばたきにおいて、その一翼を担っているのです。


オカモト商店
URL:http://okamotoshoten.co.jp/

撮影・取材・文/兼行太一朗
地元・山口のフリーペーパー発行元に14年間勤務した後、フリーライター&カメラマンとして独立。主に旅行、グルメ、歴史、地方創生などについての書籍やウェブサイトを中心に取材・執筆を行っている。拠点とする山口市では、歴史資源を生かした地域活性化に取り組むNPO法人「大路小路まち・ひとづくりネットワーク」にも所属し、守護大名・大内氏や幕末に関する史跡、ゆかりの場所や人物についての取材を担う。

編集/くらしさ

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