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もんぺユーザーが久留米絣継承のキーマンに!「うなぎの寝床」代表・白水高広さん

もんぺユーザーが久留米絣継承のキーマンに!「うなぎの寝床」代表・白水高広さん

福岡県筑後地方は、伝統工芸「久留米絣」の産地。その南部・八女市に拠点を構える「うなぎの寝床」は、“made in Kyushu”の品々が並ぶアンテナショップであると同時に、久留米絣製のオリジナル製品「MONPE」を手掛けるメーカーとして事業を展開しています。

城下町として栄えた伝統的建造物群保存地区・八女市福島地区の町家をリノベーションした「うなぎの寝床」。「間口が狭く奥行きが長い」という町家の構造を意味する言葉をそのまま社名にしたそう
店内には、筑後地方の伝統工芸品やものづくり作家による多彩な品々が並ぶ

同社の代表を務めるのは、白水高広さん。大学卒業後、フリーランスのデザイナーとして活動する中で、2009(平成21)年から3年間、「九州ちくご元気計画」という厚生労働省の雇用創造事業に携わります。

主任推進員として、筑後地方の事業者や作り手のために、デザインのみならず、販路開拓、商品開発など、70近くのプロジェクトに奔走。さまざまな伝統工芸やものづくりに向き合ったこと、また、作り手と使い手とを結ぶ発信地が必要、と考えたことが創業のきっかけとなりました。

「『地域文化商社』という根底にあるのは『地域文化を担保するために、経済とどのように結びつけるか』という考え方です。久留米絣のもんぺもその一つですが、伝統工芸など、地域の資源やモノが、外部や現代の世の中にうまく伝わっていないという現状があります」

「うなぎの寝床」代表の白水高広さん。伝統工芸やものづくり当事者に寄り添い、動画やウェブサイト制作、コンサルティング、通訳・翻訳など、彼らが手の届かない業務について、その補完にも取り組む

白水さんが、上記の地方創生事業での業務を手掛ける中で、久留米絣とともに特に強く興味を抱いたのが「もんぺ」です。戦時中は婦人標準服として、その後は主に農作業着として全国各地に普及し、筑後地方でも久留米絣の製品が広く使われていました。

一部の織元で、少ないながら製造が続いているという久留米絣のもんぺ。その着心地に関心を持った白水さんは2011(平成23)年、男性でも穿けそうなデザインのもんぺを見つけ、身につけてみると…。軽く柔らかいその穿き心地は、想像以上に最高のもの。氏曰く「もんぺ地獄」、昼夜問わず穿き続けるほど惚れ込みました。

現代風もんぺ「MONPE」の誕生! イベントを通じて秘めたる可能性を再認識

「久留米絣×もんぺ」は老若男女問わず大きな可能性を秘めていると、さっそく同年に開催したのが第1回「もんぺ博覧会」です。同イベントでは、久留米絣の織元が製造するもんぺの展示・販売や、その歴史を紹介。複数のメディアで紹介されるなど、その可能性を裏付けるように、白水さんの予想を超えた盛り上がりを見せたのです。

「もんぺ博」は2019年(開催済み)で9回目。その他、年間に複数回、福岡市や東京都心などでもイベントを実施している(写真提供:うなぎの寝床)

同時に、着方の提案や、生地や絣の模様の開発などもスタート。翌2012(平成24)年7月に「うなぎの寝床」立ち上げ後、店舗で織元から仕入れる形で久留米絣のもんぺの取り扱いを始めます。

「うなぎの寝床」の2階が「MONPE」ブース。多種多彩な柄が並ぶ

そして、第2回「もんぺ博」では型紙を製作。生地の節約を考慮し細身となったもんぺが、より多くの人に受け入れられることに。名付けて“現代風もんぺ”、「うなぎの寝床」オリジナル「MONPE」の誕生です。

「MONPE」の型紙も1,080円(税込)で購入可能(写真提供:うなぎの寝床)

再びメディアに大きく取り上げられ、卸売りの希望が全国から寄せられますが、当初の想定は店売りのみ。久留米絣の織元に型紙を渡し、各社が抱える“縫い子”が製造を請け負っていたため、販売数は月間100本が限界だったといいます。

次のステップに移行するためには、「メーカー」として機能しなければと考えた白水さん。久留米市の縫製工場への製造依頼、新たな生地の開発や価格の見直しなどに取り組みます。

「それまで画一化して売られていたものを、利益が生まれるように再構築しました。プロダクトを作ったというより、生産システムを作り替えたというイメージです。2018(平成30)年の販売実績は15,000本超。ようやく需要とのバランスがとれ始めたと考えています」

久留米絣ならではの柄に加えて、オリジナルの柄も開発。写真は「MONPE Cheers ビア」14,580円(税込)(写真提供:うなぎの寝床)

そして、「久留米絣」の素晴らしさを発信するにあたっては、国内、さらに世界各地の伝統織物や生地を知ることも心掛けているそう。その成果は、「コラボMONPE」という形で商品化されており、ユーザーも穿き比べを楽しめるようになっています。

備後節織との「コラボMONPE」(写真提供:うなぎの寝床)
生地のコラボ以外にも、世界に存在するさまざまな模様も久留米絣で再現。写真はマリー・アントワネットのドレス生地見本帳を参考に、久留米絣で創造した柄(写真提供:うなぎの寝床)

「MONPE」のこれからは?という問いに、「ゆったりした原型スタイルの製品開発です。言うなれば“ルーツもんぺ”。地域の歴史も知ってもらいたい。また、『MONPE』を単なるブームにしてはいけない。リピーターをいかに増やしていくかも課題です」と白水さん。

さらには、高身長の人などにも対応できる2LL、3LLサイズの展開も考案中で、その延長線上にあるのは海外発信です。これからの「MONPE」、さらには白水さん率いる「うなぎの寝床」の取り組みから目が離せません。

2017(平成29)年には、「うなぎの寝床」から徒歩5分の場所に、同じく町家をリノベーションして「旧寺崎邸」をオープン。九州全域と一部全国の伝統工芸品やものづくりのリファレンスショップとして、「比較文化」「オープンイノベーション」を意図している

うなぎの寝床
URL:http://unagino-nedoko.net/

撮影・取材・文/兼行太一朗
地元・山口のフリーペーパー発行元に14年間勤務した後、フリーライター&カメラマンとして独立。主に旅行、グルメ、歴史、地方創生などについての書籍やウェブサイトを中心に取材・執筆を行っている。拠点とする山口市では、歴史資源を生かした地域活性化に取り組むNPO法人「大路小路まち・ひとづくりネットワーク」にも所属し、守護大名・大内氏や幕末に関する史跡、ゆかりの場所や人物についての取材を担う。

編集/くらしさ

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