この記事は、特集・連載「全国から厳選!クラフトビール特集」長野編 Vol.3です。
情熱と遊び心を感じさせる個性派揃いのビール造りで、クラフトビール好きなら知らない人はいないほどの人気を誇る「志賀高原ビール」。その直営のバー&レストラン「THE FARMHOUSE(ファームハウス)」が、醸造元である「玉村本店」から徒歩15分ほどの上林(かんばやし)温泉にあります。温泉に浸かる野生のニホンザル「スノーモンキー」が観察できる、人気スポット「地獄谷野猿公苑」にもほど近い場所です。

もともと「志賀高原ビール」はスキーシーズンに志賀高原スキー場のホテルで冬季限定営業のビアバー「TEPPA ROOM」を開いていましたが、「もっと地元の人に志賀高原ビールを楽しんでもらえる場所があったら」との思いもあり、直営店を作ることにしたのだそう。
周囲を木々に囲まれた趣のある建物は、新一万円札のデザインとしても話題の実業家・渋沢栄一の孫が東京に建てたものを移築。2007年までは志賀高原ゆかりの文人墨客の資料館「志賀山文庫」でしたが、その後「玉村本店」の所有に。しばらくは収穫祭などのイベント時のみの使用でしたが、2017年6月に「THE FARMHOUSE」としてオープンしました。

定番から限定品まで、常時13種類がオンタップ!
サーバーは志賀高原ビールの定番・準定番・限定品が、常時13タップつながっていて、レアなビールと出合えることも。また、そのうちの1タップは、なんと酒蔵でもある玉村本店が醸造した日本酒につながっています。



セレクトの中心は志賀高原ビールの代名詞ともいえるIPA系で、夏は柑橘感を楽しめるヘイジー系のさっぱりしたIPAも。リリースされたものは、なるべくフレッシュな状態で提供しています。

地元産の食材にこだわり、自家栽培の無農薬野菜も
料理のこだわりは地産地消。季節によって根曲がり竹といった、志賀高原特産の食材も登場します。また、近隣で採れる山椒を使ったメニューなど、旬に合わせたおすすめメニューを提供しています。
定番料理はカジュアルなイタリアンを中心に、シンプルでおいしく体によいものがメニューに並びます。観光地ながら、地元の人にも何度も足を運んでもらいたいとの思いで、価格がリーズナブルに設定されているのも嬉しいところです。

人気メニューのひとつ「国産豚ロースのエール漬けグリル」は、豚肉のブロックを3日間ほどビールと塩に漬け込んだ一品。オーダーごとにブロックからカットすることで、肉の柔らかさを実現しているといいます。

最近では自社畑でビール醸造の麦芽滓を肥料に使った無農薬野菜の栽培も開始。1年目の今年は試行錯誤を繰り返しながら、少しずつキュウリやズッキーニ、ラディッシュといった夏野菜が採れ始めました。今後はミニトマトやコリンキー、ネギ、ダイコンなどを収穫予定です。

なお、今年開店2周年を迎え、スタッフも一新しました。店長で調理を担当する高山侑也さんは東京出身。都内の飲食店で働いていましたが、半年前に移住し、玉村本店に入社しました。もともとIPAが好きで、1年前に「THE FARMHOUSE」に来店したことがきっかけだったそう。

「志賀高原ビールの魅力は、おいしさはもちろんですが、自家栽培のホップや酒米など、自分たちでできることは頑張ろうというスタンスで取り組む精鋭が揃っているところです。醸造責任者の佐藤栄吾社長もクラフトビール業界でカリスマ性があり、遠方からファンが来てくださるほどの力を感じています」(高山さん)
また、地元の人から野菜をいただくことも多く、そんな地域のつながりが生まれる場にしていけたら、との思いから、「今後は地元農家などと協力し、マルシェなども開催したい」と高山さん。また、建物の2階はフリースペースとして空いているので、そこでイベントを実施したり、1階奥の喫茶室もスタンディングスペースとして有効活用していくのがこれからの展望です。

醸造所でも樽生ビールが楽しめる
志賀高原ビールのドラフトビールは、玉村本店酒蔵の一部を改装した「酒蔵美術館ギャラリー玉村本店」でも楽しめます。

ここでは清酒の無料試飲のほか、ビール2種の有料テイスティングが可能。また、売店でも定番から限定品までボトルの志賀高原ビールを購入することができます。

風光明媚な志賀高原には戦前から横山大観が画室を構えたり白洲次郎・正子夫妻が保養に訪れたりしていた歴史があります。2階の美術館スペースでは、日本画を中心に、玉村本店に代々伝わるコレクションを展示しています。

クラフトビール業界を席巻する唯一無二の味わいがたっぷりと楽しめる「THE FARMHOUSE」と、玉村本店の歴史ある風情も感じられる「酒蔵美術館ギャラリー玉村本店」。どちらもフレッシュな志賀高原ビールの味わいを楽しめる、おすすめの空間です。
THE FARMHOUSE
住所:長野県下高井郡山ノ内町平穏1403-2 (旧志賀山文庫)
TEL:0269-38-1630
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)・火曜昼
営業時間:12:00~15:30(土・日・祝 11:00〜)、17:00~21:00(土・日・祝 ~22:00)
URL:https://www.facebook.com/farmshiga/?fref=ts
酒蔵美術館ギャラリー玉村本店
住所:長野県下高井郡山ノ内町平穏1163
TEL:0269-33-2155
定休日:元日のみ
営業時間:9:00〜18:00
URL:http://www.tamamura-honten.co.jp/?mode=f1#company-farmhouse
取材・文/島田浩美
長野県出身・在住。大学時代に読んだ沢木耕太郎著『深夜特急』にわかりやすく影響を受け、卒業後2年間の海外放浪生活を送る。帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に編集兼デザイン事務所「合同会社ch.(チャンネル)」を設立、「旅とアート」がテーマの書店「ch.books」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。
撮影/青木 圭
編集/くらしさ