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【岩手】 全国に誇るホップ生産地から、 新しいビアカルチャーを発信する「遠野醸造」

【岩手】 全国に誇るホップ生産地から、 新しいビアカルチャーを発信する「遠野醸造」

この記事は、特集・連載「全国から厳選!クラフトビール特集」岩手編です。

岩手県遠野市は、全国でもトップレベルのホップ産地。作付面積は日本一、生産量は国内第2位を誇ります。夏も寒暖差のある冷涼な気候がホップ栽培に適しており、キリンビールの契約農場として、もう50年以上にわたってホップを栽培してきました。

採れたての遠野産ホップ(写真提供:遠野醸造)

そして、遠野市はこれまで培ったホップの里としての価値を生かし、「ビールの里・遠野」へとシフトチェンジを図る取り組みを進め、新しいクラフトビールのブルワリーに携わる起業家を全国から募集。この地に移住してきた袴田大輔さん、太田睦さん、田村淳一さんの3人が、「遠野醸造」を立ち上げました。

右から袴田大輔さん、太田睦さん、田村淳一さん。それぞれの視点を生かしたブルワリー運営に取り組んでいます

袴田さんと太田さんの2人は、半年で全国各地30軒ほどのブルワリーを視察し、4カ所で研修を受けました。彼らがつくろうとしたのは、コミュニティに根ざしたブルワリー。人口2万6,000人の遠野市に合ったスタイルを考え、生産者も醸造家も、地域の人も一緒に語り合いながら地元のビールを楽しめる場として、ブルワリーと飲食店が直結する「遠野醸造TAPROOM」を2018年4月にオープンさせたのです。

ブルワー(造り手)が、自らお客様にビールを注ぐ。そこに生まれる共有感を楽しむ

早速、JR遠野駅から徒歩3分の場所にある「遠野醸造TAPROOM」を訪ねてみました。店内は、ホップのグリーンと温かみを感じる木製のカウンターやスツールが、バランスよく調和しています。

偶然にも酒屋を営んでいた場所を改装した「遠野醸造TAPROOM」。窓の形がレトロでかわいい
ニューヨークのカフェのような店構え
ビールの泡立ちや、酵母が集まる様子をイメージしたロゴがカッコイイ! この場所に人が集い、新しいものが生まれてくるようにとの思いを込めています
店の奥には醸造タンクが見えます
店には醸造所が隣接し、造りたてのフレッシュなビールを、常に数種類楽しめます

「ホップは収穫後の酸化が早く、水分と共に香りが落ちていく繊細な農作物です。一般的に、ビール醸造に使われるのは乾燥ホップがほとんど。乾燥の工程でどうしても香気成分が多少揮発してしまいます。生ホップを使ったビールは、より香りが強くジューシーな味わいですが、これは言葉で説明しにくいので、ぜひ飲んで感じてもらいたいです」と袴田さん。

生ホップを使ったビールを、フレッシュなまま地元の直営店で味わえるのは、ホップ畑との距離が近い遠野ならでは。なんて贅沢なんでしょう!

仕込みは月に4回。四季折々のビールを仕込みます
市内の農家から届いたホップのほぐし作業をする、袴田さんたち(写真提供:遠野醸造)
遠野の農産物を使って、さまざまなビールがある暮らしを日常に

お邪魔した7月は、遠野産ホップ「IBUKI(いぶき)」を使ったESB、ペールエール、しおツェン(ヴァイツェン)、ベルジャンホワイト(白ビール)等のオリジナルビールがメニューに記載されていました。

店内では常に、造りたてビールを6種ほど楽しめます
遠野産ホップ「IBUKI(いぶき)」を使ったESBは定番メニュー。麦芽の風味とイチジクのような甘い香りが特徴です

そんな中、聞き慣れない「白樺ゴールデン」という名前のビールが……。
「遠野市内の上郷地区にある、白樺の樹液を使って仕込んだビールです。地元では、焼酎の水割り用に樹液を使ったりしているそうです」と袴田さん。苦味が少なくさわやかな喉ごし、飲んだ後にほんのり甘味が広がる「白樺ゴールデン」は、さまざまな料理との相性がよさそう。こちらは期間限定メニューです。

左からペールエール、しおツェン(ヴァイツェン)、白樺ゴールデン

他にも、ハスカップのヴァイツェン、コーヒー豆のスタウトなど、地域の素材や食材とコラボしたビールを季節ごとに仕込んでいくので、月に一回程度の割合でメニューが変わるそう。訪ねるたびにワクワクできそうです。

「自分たちが育てた作物がビールになることで、地元の生産者さんにもビールという飲み物への愛着を感じてもらえます。皆さんが気軽にビールを飲みにやってきて、生産者も醸造家も、お客さんも、時間を共有できたら嬉しいです」と袴田さん。地元の農作物を使ったビールを提供していくことで、ビールの多様性を楽しんでほしいと話します。

ビールをきっかけに、岩手・遠野へ旅してみよう!

遠野醸造のビールはボトルや缶での販売は行わず店内での提供が基本です。それは、自分たちが品質をきちんと管理できる環境で、遠野に足を運んでビールを味わってほしいから。遠野らしさを感じてもらえるよう、フードメニューにも地元食材をふんだんに使っています。

ピリッと辛い「どべっこポテトサラダ」(税込500円)はビールにぴったり。刻んだ青唐辛子にダイコン、キュウリ、ニンジン、しその実を混ぜた遠野の漬物「どべっこ漬」を使ったメニューです
遠野産ホップを使った「ホップソーセージ3種盛り合わせ」(税込1,300円)。あらびき、ホップの若芽ソーセージ、ホップのペレットを練り込んだソーセージの3種類です。香り高くジューシー、ボリュームたっぷりのイチオシメニュー
ビール専用の持ち帰り容器「グラウラー」(税込7,500円)。近隣の方は1,000円を払って、返却時に返金するデポジットの利用も可能です

8月はホップの収穫体験など、農家とお客さんをつなぐ企画もあり、まさにビールをきっかけに遠野を丸ごと楽しめそう。実は、生産者と一緒に「農家が畑で飲むセゾン(ベルギーで夏場に農家が労働者に振舞うために仕込んだ自家製ビール)」も計画中とのことで、今後の動きから目が離せません。

6月に出店した「いわてクラフトビールまつり」。毎年8月最終週は「遠野ホップ収穫祭 (https://www.lets-hopping.com/)」。10月下旬には「遠野フレッシュホップフェスト」に出店予定です(写真提供:遠野醸造)

遠野に生まれた一つの小さなブルワリー。ここから、どんなビアカルチャーが育っていくのでしょう。時にはビール片手に交わす何気ない会話からアイデアが生まれることもあるそう。

「将来的には、ビールをキーワードにしたゲストハウスやビールの学び舎などもやってみたいですし、自分たち以外にも個性あるブルワリーが増えていったら面白いですね」と袴田さん。
遠野醸造で酌み交わす一杯のビールから広がるつながりも、楽しみですね。さあ、皆さんもBEER TOGETHER!


遠野醸造TAPROOM
住所:岩手県遠野市中央通り10-15
TEL:019-866-3990
定休日:火曜
営業時間:17:00~22:00(土曜・祝日 12:00~22:00、日曜 12:00~21:00)
URL:https://tonobrewing.com/

撮影・取材・文/水野ひろ子
岩手県在住、フリーライター·エディター。岩手を中心に、北東北の食、街、地域の暮らし、工芸、地方ビジネス等の取材、企画編集物制作を行う。また、有志と立ち上げた編集ユニット「まちの編集室」にて、地方誌「てくり」を発行。ホームスパン作家とのコラボによる商品開発も行っている。

編集/くらしさ

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