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【宮城・仙台】クラフトビールを流行から文化へ。仙台のビアバー「アンバーロンド」の挑戦

【宮城・仙台】クラフトビールを流行から文化へ。仙台のビアバー「アンバーロンド」の挑戦

この記事は、特集・連載「全国から厳選!クラフトビール特集」宮城編 Vol.2です。

まだクラフトビールという言葉が根付く前に海外のビールを中心に取り扱い、国内外のさまざまなブルワリーの銘柄を提供している仙台市のビアバー「アンバーロンド」。仙台市内でクラフトビールを提供する店を掲載したマップの作成、東北のブルワリーを集めた野外イベント「仙台クラフトビールフェス」の開催など、クラフトビールの伝道師ともいえる活動を続けています。

「アンバーロンド」店内
輸入ビールと、全国の50銘柄以上をラインナップ

仙台一の繁華街、国分町に店を構える「アンバーロンド」店主の田村琢磨さんとクラフトビールとの出合いは、大学時代のヨーロッパ旅行。スタイルによってさまざまな味わいが楽しめるドイツビールの魅力を知り、当時のバイト先であった飲食店で輸入ビールの取り扱いを始めます。

店主の田村さん

2008年に独立し、アンバーロンドを出店。ウイスキーやカクテルなどもそろえながら、輸入ビールに特化した店であることを明確に打ち出します。しかし、当時ビールを専門とするバーは市内にほとんどなく、「クラフトビール」という言葉も使われていませんでした。そのため大手メーカーの飲み慣れたビールを求める客が多かったそうですが、ドイツビールの祭典「オクトーバーフェスト」の日本版イベントが仙台でも根付き始めると、海外のビールを日常的に楽しむ客が増えていきます。

その後、地酒と同じようにその土地で造られたビールを味わいたいという出張客のニーズを知り、各地のイベントに足を運んで「いわて蔵ビール」や「秋田あくらビール」など東北のブルワリーのビールを味わい、直接話をして店で取り扱うようになります。一方で、地元客には関東や関西、北海道など全国のビールを味わってもらおうとラインナップを拡充。現在はゲストビールとして、その時々限定樽生を常時6~7種類、ボトルは新しい銘柄も積極的に取り入れ約50種類をそろえています。

冷蔵庫には、見たことのないようなボトルがずらり
宮城県産ソーセージをはじめ、ビールによく合うフードを提供

クラフトビール初心者のお客さんには、その人の「好み」を聞いてビールを提案しています。「ビールの種類や味わいは多岐にわたるので、一方的におすすめするのではなく、お客さまの口に合ったものをチョイスします」と田村さん。「コース仕立てのように、変化をつけてじっくりと楽しむ飲み方も提案しています」とも。

宮城のブルワリーとのコラボビールも製造。取材した日は店の11周年を記念し、地元の老舗「ホシヤマ珈琲(コーヒー)店」とコラボレーションして造ったオリジナルビール「ケニア・コーヒースタウト」がありました。香りはコーヒーそのもので、ローストの芳醇なコーヒー豆と麦芽がしっかりと感じられる味わいです。

11周年を記念した「ケニア・コーヒースタウト」をすすめる田村さん

フードのおすすめは、蔵王町のレストラン「ベルツ」のソーセージ盛り合わせや、ドイツで修業した仙台の職人が作る「ノイマルクト」の焼きソーセージ盛り合わせなど、県内産のソーセージ。店オリジナルの「仙台あおば餃子(ギョーザ)[改]」もイチオシで、仙台雪菜を皮に練り込んだ「仙台あおば餃子」をベースに、具材に仙台産ミヤギシロメの枝豆を加えた大ぶりのギョーザです。

「ベルツ」のソーセージ。写真は7種14本で、定番は3種3本盛り合わせ(税別1,100円)
「ノイマルクト」の焼きソーセージ5種盛り合わせ(税別1,500円)
仙台あおば餃子[改](税別480円)
クラフトビールを提供する店の場所が一目でわかる「仙台ビールマップ」

田村さんは店を訪れるお客さんにクラフトビールの魅力を伝える一方で、仙台にクラフトビールを広めようとイベントに野外出店するなど、さまざまな活動も行ってきました。中でも注目を集めたのが、2014年に発行した「仙台ビールマップ」。仙台市内でクラフトビールを提供する店をマッピングしたもので、これによって競合店も一挙に紹介することになりますが、「クラフトビール好きが増えてくれれば、結果的にお店に回遊してくれるお客さまも増えます。ファンを増やすことが一番大事ですから」と田村さん。

掲載店を増やしながら発行を重ね、2019年秋には第5弾の発行を予定。市内のアプリ開発者の協力を得て、スマートフォン用の「仙台ビールマップアプリ」も作りました。観光や出張で仙台を訪れる際にはインストールをお忘れなく。

「仙台ビールマップ」Vol.4。仙台市内の飲食店や宿泊施設で配布しています

そして2015年、活動の集大成ともいえる「仙台クラフトビールフェスティバル」を実行委員の一人として初開催。仙台では「オクトーバーフェスト」や「ベルギービールウィークエンド」といった海外ビールメインのイベントは行われていましたが、岩手や秋田などで行われているような国内のブルワリーが集うイベントがなかったことから、来場者からは「こういうイベントを待っていたんだ、ありがとう」と声を掛けられたそう。「思わず涙が出ました」と振り返ります。

今年も8月10日~12日、仙台市青葉区の勾当台公園市民広場で開催されました。東北の各ブルワリーが1杯500円から自慢のビールを提供し、仙台の飲食店が地元の食材を使ったビールに合う料理を販売。3日間で2万人が訪れ、大いに賑わいを見せました。

今年の「仙台クラフトビールフェスティバル」の様子

店は2018年で10周年を迎えました。「ヴァイツェンが飲みたい」「IPAがいいな」など、お客さんが好みのスタイルを話しているのを耳にすることも増え、この10年の間にクラフトビールが仙台市民にも浸透してきているのを実感している田村さん。この機運をさらに盛り上げ、クラフトビールを「流行」から「文化」へと進化させていきたいと考えています。

「店に来る方に宮城、東北のビールをもっと知ってもらえるようにアピールして、一方で世界のトレンドにもアンテナを張って海外で話題のスタイルのビールをいち早く仙台の方に紹介していきたいです」と、普及活動にも余念がありません。

「国分町でお待ちしています」

アンバーロンド
住所:宮城県仙台市青葉区国分町2-5-7 YS51ビル2階
TEL:022-211-5686
定休日:祝日の月曜、日曜(不定)
営業時間:月曜~木曜18:00~24:00、金曜・土曜・祝前日18:00~翌2:00、日曜16:00~22:00(以上ラストオーダー)
URL:https://tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4003098/

撮影・取材・文/菊地正宏
大船渡生まれ仙台在住のライター/漁業ジャーナリスト/編集者。仙台経済新聞編集長。サシ飲み教、徒歩部、ファミコンナイトなどの活動を行う。きき酒師。

編集/くらしさ

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