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体長50cm超え! 大アナゴの“むっちむち”な一夜干しに感動【島根県・大田市】

体長50cm超え! 大アナゴの“むっちむち”な一夜干しに感動【島根県・大田市】

「どうですか、このアナゴ。大きいでしょう」
鮮魚・加工店を営む岡富商店の岡田さんが、ニコニコしながら抱えるのは、大アナゴの一夜干し。

50cmのメモリを余裕で超える
ひっくり返すと、さらにプラス10cmほど

私のイメージするアナゴより、ずいぶん大きなサイズにびっくり。
計測させていただくと、その体長はまさかの50cm超え…と思ったら、尾が折り返されている!「包装に納まらなくて、折り畳んじゃうこともざらなんですよ」岡田さんが笑いながら話されます。

港の目の前に建つ加工場

島根県・大田市。細い道路を挟んで目の前が海という立地にあるのが、岡富商店の加工場。こちらではさまざまな鮮魚を干物に加工しており、中でもイチ押しなのが、この大アナゴなんだそう。

魚市場に並ぶ、大田市の大アナゴ(写真提供:岡富商店)

昔からアナゴ資源が豊富な大田市では、大きなアナゴが年中獲れます。これまでは鮮魚として流通させていましたが、もっと広く“大田市の大アナゴ”を知ってもらおうと、地域ぐるみでメニュー開発に取り組みだしました。

そんななか岡富商店が開発したのが、この一夜干し。
どんな味でどんなふうにつくるのか…。珍しい“アナゴの一夜干し”に、興味がそそられます。

特別に工場へ入れていただいて、まず驚いたのがニオイの無さ。
聞けば、本当に新鮮な魚は大して生臭さを発しないそう。大田市には「一日漁」と「晩市」という特殊な文化があり、その日に獲った魚がその日のうちに競りにかけられ、地元の店へ届くのです。
肝心のアナゴを見る前から、新鮮で美味しい干物への期待が高まります。

島根県大田市の特産・大アナゴ

そして、いよいよ加工室へ。大望の大アナゴとご対面です。さすが、どのアナゴも長くて、胴回りもしっかり。

1本を捌くのに数十秒というスピード

そんな大アナゴに臆することなく、鮮やかな手付きで捌いていくスタッフの皆さん。
相当なベテランなのだろうと思ったら、「まだ1年半くらいですよ。なんせ、大アナゴの干物を開発したのが1年半前なので」と言われて、またびっくり。

最盛期には毎日1,400本ほどの大アナゴを5人で捌いていたらしく、みるみるうちに上達したそう。あっという間に大アナゴが、キレイな開きに変身しました。

手作業だから丁寧で、身が崩れない

その後は1匹ずつ優しく手洗い。内臓の残りや血などを丁寧に落としていきます。

そしてこの後に、岡富商店一番のこだわりが。
一般的に干物は魚を開き、濃度5〜15%の塩水に20〜60分ほど漬けた後に、真水で軽く洗い、水気を拭き取って干して仕上げます。

一昼夜かけて、じっくり旨味を引き出す

しかし岡富商店が用意した塩水の濃度は、わずか1.5%。一般的な塩水に比べて、かなり薄いのです。
その代わり塩水に漬ける時間は、なんと一昼夜。ゆっくり時間をかけることで、優しくまんべんなく塩が沁み渡り、旨味が凝縮するといいます。

さらに低濃度の塩水を使う利点は、塩水から出したアナゴを真水で洗う必要がないことも。濃い塩水で一気に味をつけて洗い流す方法だと、どうしても味にムラができてしまうそうですが、この方法なら個体ごとでも、1匹の部位ごとでも、美味しさを均一に保てるのです。

このように一昼夜かけて旨味を引き出された大アナゴは、最後に乾燥室へ。室温・湿度・衛生管理の徹底された部屋で4時間干され、ついに大アナゴの一夜干しが完成しました。

芳ばしい香りがする大アナゴの一夜干し

特別に試食用として焼いていただいたのが、こちら。皮目側は艶があり、内側は真っ白。身にふっくら厚みがあります。

美味しさに目を見開く

さっそくひと口。これは…驚きのむっちむち&ジューシー!
皮目を中心にプリッと瑞々しく、干物と思えないむちむちな食感がたまりません。
そして味。干物はどうしても塩味が強いイメージでしたが、この干物は大アナゴ自体の旨味が凝縮されて、内側からどんどん湧き出てくるようです。

あまりの美味しさに、試食であることを忘れて、一人でほとんど完食してしまいました。

右が岡田さん。魚の話が止まらない

岡田さんは、現在69歳。息子さんたちが一緒に働いていますが、今でも一番チャレンジングなのは岡田さんご本人だそうです。

「もちろん伝統を守って同じものをつくり続けることは大切です。しかし同時に、どんどん新たなチャレンジをしないと、今の時代は淘汰されてしまうのです」

そう語る岡田さんは、とにかく試行錯誤を重ねるそう。中には自分でも「うっ、…」となる試作品もあるそうですが、そんなことでは挫けません。

「失敗を恐れる気持ちはわかりますが、失敗しないと知恵も出ません。特に“モノづくり”を生業にする者は、どんどん失敗すればいい。その分、良いものがきっと生まれます。そして失敗はどんどん周りに、特に若者に伝えます。そうすることで自分だけでなく、企業や地域が強くなります」

また岡田さんは、自ら東京をはじめ全国へ営業したり、イベントで話す仕事も始められたそう。
本当は人前で話すのは苦手らしいのですが、年齢を重ねるごとに「大田市をもっと知ってもらいたい」という思いが募り、こちらもチャレンジされているそうです。

岡田さんはもちろん、その背中を見て経験を重ねる若い世代たち。島根県・大田市の水産業は、これから面白いチャレンジをどんどんしていくことでしょう。

丼に大アナゴの天ぷらが納まらない
寿司も長皿からはみ出る

取材の最後に、大アナゴを活かした料理が食べられるという「道の駅ロード銀山」に立ち寄りました。
こちらの名物が、大アナゴを豪快に使った“穴子天丼”と“穴子寿司”。どちらも迫力満点で、目も舌も存分に楽しませてくれます。

島根県大田市の大アナゴ。ぜひ旅行で、お取り寄せで、味わってみてはいかがでしょう。


撮影・取材・文/中川めぐみ
釣りアンバサダー 兼 ツッテ編集長。釣りを通して感じられる日本全国の地域の魅力(食、景観、人、文化など)を発見・発信するため、メディア「ツッテ」の運営や、初心者向けの釣りイベントを実施。自ら全国の港を飛び回っており、2018年は100地域での釣り旅を計画。レアニッポンでは全国の港町で見つけた地域や海にまつわるおもしろいものをお伝えしていきます。URL:https://tsutte.jp

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