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ダニと寄生相手のディープで一途な関係 Vol.3

ダニと寄生相手のディープで一途な関係 Vol.3

生物学者でダニと原生生物の研究者である島野 智之先生が、ダニと寄生相手のディープな関係性を語るコラムの第三段。締めくくりとして、先生が注目している「面白い」ダニたちをピックアップして頂きました。


ダニは面白い。節足動物仲間のクモ類とは全く異なっていて、身体を小さくして、様々な物を餌とする事が出来たために、クモの仲間ではもっとも種数が多い。

カブリダニ類の一種。捕食性のダニなので、生物農薬として実用化され農薬のつかえない場合に害虫駆除をしてくれている(走査型電子顕微鏡像に着色 撮影:島野智之)

クモは糸を巧みに使いこなす技を身につけ世界中で多くの種が見られるようになった。しかし、そのクモよりも小さな小さなダニの方が、記録された種数が多いのである。これまでに話した、自由気ままな落ち葉を食べるササラダニ、鳥とともに空を飛ぶウモウダニ、他にも多くのダニがいる。

僕たちに最も身近なダニのひとつにニキビダニがいる(一般的には顔ダニともよばれている)。人間の場合、ニキビダニがいたからと言って、ニキビになるわけではない。不潔な状態にしておくことが、ダニも増やすことになり、肌荒れを増やすことにもなる。70%ほどの人の顔には、普通にニキビダニがいると言われている。もっとも、肌荒れだからといって、ステロイド剤をつかうとダニが増えることが知られている。

ニキビダニ(美術家 黒沼 真由美 作)

世界のニキビダニの遺伝子を調べた結果、人間の遺伝子とダニの遺伝子は系統樹の上でよく一致していた。つまり、親から子へとニキビダニも伝わっていることになる。上図をご覧に入れよう。ダニだと説明しないと「ネコバス」に似ていると言う人が多いがいかがだろうか。

一方、種が多様な鳥に付くウモウダニは形態が様々で非常に面白い。鳥の生活が様々なので、ウモウダニのほうもなんとか鳥にしがみついていられるように様々な形に進化しているのである。前にも書いたが、なかでも、水鳥に付着するウモウダニは左の前脚と右の後脚、1つずつだけが大きなペンチの様な形になっているものがいる。水鳥が水に潜って魚を捕るという性質上、水圧に耐えられるようにしっかりとトリの羽に捕まるためだろうが、全ての脚を大きくするとその分のコストが掛かりすぎるので、左右非対称に1つずつの大きなペンチ状の脚をもっているらしい。

また、岩場の海岸の藻類にはイソコナダニというグループがいる。ウモウダニとおなじコナダニ類に所属するが、このイソコナダニも前の1対の脚がペンチの様な形をしている。海岸の波打ち際、波に流されないようにしっかりと藻類に掴まる必要があるからだろう。

今、僕が取り組んでいるのはイモリと共に生活するミズダニだ。ミズダニ類は水中の捕食者としてミジンコなどを食べている。しかし、このミズダニは触肢(サソリなどでは鋏になっている口器の横にある器官)が、まるで人間の手のような形をしていて、その手でイモリの身体を握るように掴まる。イモリの身体には他の動物から身を守るための毒があるのだが、それを利用してイモリの身体の周りで生活をしている。まるでサメとコバンザメの関係※のように、イモリにとってメリットもデメリットもさしてないのだが、ダニにとってのみ利益があると考えられている。このような関係を片利共生という。※身体が大きなサメのそばにいればコバンザメは守られるが、サメにとっては利益も不利益も無い

そんな、ダニの自由気ままな生活をこれからも紹介していきたいと考えている。

※2019年11月18日(月)追記:文中に一部誤解を招く表現等があり追記を行いました。


島野 智之
1968年、富山県出身。横浜国立大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(学術)。農林水産省(独)農業・生物系産業技術研究機構主任研究員、宮城教育大学准教授を経て、2014年より法政大学国際文化学部・自然科学センター教授。著書に『ダニ・マニア チーズをつくるダニから巨大ダニまで』(八坂書房)、『生物学辞典』(東京化学同人/編集協力、分担執筆)など。世界初となるダニ写真集は近日刊行予定(風濤社/今冬刊行予定)。

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