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姫路駅名物駅弁「味づくし」、ルーツは日本初の幕の内駅弁にあり【兵庫】

姫路駅名物駅弁「味づくし」、ルーツは日本初の幕の内駅弁にあり【兵庫】

山陽新幹線や山陽本線(JR神戸線)をはじめとする在来線3本が乗り入れる、JR姫路駅。多くの人が行き交うだけに駅弁の種類も豊富ですが、今回は幕の内スタイルの駅弁「味づくし」を紹介します。

豪華なおかずがぎっしり「味づくし」
幕の内駅弁「味づくし」(税込1,080円)

特別な時に食べたいと思わせるごちそう駅弁、味づくし。選りすぐりの兵庫県産食材を使った、19種類の献立が入っています。奥が深く、まるで人生経験を重ねてきた「品のある大人」のような風格があります。

主な献立は、兵庫県産丹波黒大豆を使用した「黒豆煮」や、甘みのある淡路産のタマネギをシンプルに焼き上げた「焼玉葱」、歯ごたえの良い「蓮根煮」など、兵庫県産の厳選した食材を使った逸品が詰まっています。その他にも、軟らかく仕上げた「たこの煮物」や「鶏の照り焼き」、「あさりの佃煮」も。煮物は、製造元自慢のダシをベースにした甘辛い味わい。少しずつ、いろいろ食べられるのがうれしいですね。

また、俵型の飯は食べやすさを追求したスタイル。のっけ弁などの場合、最後に残ったご飯を口へ運ぶため、弁当箱に口を寄せることにためらいを感じる方も多いはず。でも、この俵型ならひと口サイズで、残さずスマートに食べられます。

幕の内駅弁の元祖は姫路駅!?

実は、「幕の内駅弁」が最初に販売されたのが、ここ姫路駅なのです。
明治21(1888)年、山陽鉄道(現在のJR西日本が管轄する山陽本線にあたる路線)が開通します。この年、姫路駅近くで茶店「ひさご」を開いていた竹田木八(「まねき食品」の創業者)が、駅構内での販売許可を得て、翌年から立ち売りの駅弁販売を始めました。これが、日本初の「幕の内駅弁」です。

再現された発売当時の包み紙(写真提供:まねき食品株式会社)

製造販売したのは、創業130年を超える老舗「まねき食品株式会社」(本社:兵庫県姫路市)。社名は「お客様をお招きする」の意を込めて「まねき」と名付けられ、今も数々の駅弁や行楽弁当、仕出し料理の販売を続けています。そのひとつが「味づくし」です。

弁当としての「幕の内」は古くから歌舞伎や浄瑠璃など、舞台の幕あいに食べられていました。白飯と手の込んだおかずで構成され、金持ちの芝居見物には欠かせない高級弁当でした。

このスタイルを駅弁にした「元祖幕の内駅弁」も高級駅弁。販売価格は12銭で、現在の価値でいえば約2,000円。これが飛ぶように売れたといいます。汽車に乗ることが特別な時代、特に旅行者となれば富裕層が多く、現代でいえば「豪華観光列車で旅をするなら、駅弁も豪華にしましょう」といったところでしょうか。

気になる「元祖幕の内駅弁」の中身
(写真提供:まねき食品株式会社)

写真は元祖幕の内駅弁を再現した時のもの。経木の弁当箱の下段に白飯、上段に13種のおかずが入っています。結構なボリュームですね。中身は、鯛の塩焼きや焼蒲鉾、卵焼きに伊達巻、大豆昆布佃煮、ごぼう、ふき、百合根など。

姫路で幕の内駅弁が誕生したのには、このおかずにも理由があったようです。姫路がある播磨の地には、播磨平野や播磨灘があり、山海の豊かな幸が身近にありました。名物といわれる特別な料理がない代わりに、なんでもある豊かな土地だからこそ、多くのおかずを配した幕の内スタイルの駅弁が誕生したのでしょう。旅を楽しむ人へ向けて、姫路ができる最高のおもてなし料理だったといっても過言ではありません。

現在の幕の内駅弁「味づくし」にも、その精神が受け継がれています。20数年前の創業当時の思いに立ち返り、「特別な時に食べたい駅弁を、手の届きやすい価格帯で販売したい」とリニューアルされました。以来、ずっと変わらぬ人気駅弁になっています。

姫路駅構内で駅弁を買うには

主な販売場所は、新幹線の上下線ホームや山陽本線下りホームの他に、新幹線改札口前にある「Maneki Dining(マネキダイニング)」です。

なお、上りホーム店ですが、店舗リニューアルの際に駅弁販売は終了しているのでご注意ください。懐かしい「キハ58系気動車」をデザインした新店舗は、撮影スポットにも。名物の「まねきのえきそば」のみ販売しています。

駅から徒歩15分で行ける世界文化遺産「姫路城」

姫路で駅弁を食べるなら、姫路の絶対的観光スポット、世界文化遺産・国宝姫路城はいかがでしょう。

写真は駅に隣接する「展望デッキ」から撮影したもの。駅前は、すっかり様変わりして今は芝生広場や公園になっています。姫路城へは、駅から徒歩で約15分。大きな「大手前通り」の先に、元祖幕の内駅弁が販売され始めた130年前と変わらぬ姫路城の姿が見えます。

城内への入口「大手門(桜門)」をくぐると広い三の丸広場があります。こちらは入城無料のエリアで、桜のシーズンやイベント時には多くの人で賑わいます。また、三の丸広場の左手の「千姫ぼたん園」は、観光客も少なく静かなエリア。ベンチもあり、ゆっくり駅弁を食べるには最適の場所です。

幕の内弁当ならではの楽しみ方も

この「味づくし」は冷めてもおいしいようにとおかずが少し濃いめの味付けになっています。これが、お酒のアテとしてもピッタリ。姫路は酒蔵が多いので、地酒と合わせるのも楽しいですよ。

130年の歴史を感じさせる幕の内駅弁「味づくし」。兵庫の食材が持つポテンシャルの高さを、存分に味わってください。


取材協力/まねき食品株式会社
URL:http://www.maneki-co.com/

撮影・取材・文/塚本隆司
脱サラ旅ライター。城と酒を求めて旅するうちに旅ライターに。「道は迷うためにあり」と断言できる方向音痴。

編集/くらしさ

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