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【スマホなし旅】第3回 京橋駅・食わず嫌いの大阪下町をさまよう【大阪】

【スマホなし旅】第3回 京橋駅・食わず嫌いの大阪下町をさまよう【大阪】

旅の醍醐味は、緊張感とともに未知の世界を切り開くこと。インターネットにより、地球の裏側まで情報化された現代において、本当の冒険とはスマホを持たず見知らぬ土地を徘徊することかもしれません。たとえ隣町でもいい、スマホをロッカーに預けて新たな町へ飛び出してみよう。きっと、新しい出会いがあるはずだから。


人生で一度も訪れたことのない駅に降り立ち、スマホなしで町をさまよう連載「スマホを捨てよ、町へ出よう」。第3回はJR大阪環状線・学研都市線と京阪電車、大阪メトロが乗り入れる一大ターミナル「京橋駅」です。

なぜ京橋なのか?

そもそもぼくは四国の徳島県出身。徳島には民法テレビ局が日テレ系ひとつしかなく、他系列はすべて関西の電波を受信していたので、大阪のローカル番組で育ったという自覚がございます。くわえて、関西はショッピングや進学・就職先としてもっともポピュラーなエリア。つまり、徳島県民にとって大阪はあまりに身近すぎるがゆえ今さらあらたまって旅することもない場所なのです。がしかし一方で、同族嫌悪というんでしょうか、物心ついた時からどうも関西のノリが苦手で、生まれてこのかた45年ほど積極的に避けて生きてきた。

逆に言えば手つかずの未開拓地。「スマホなし旅」かっこうの放浪先ではありませんか。駅のセレクションについては「大阪でさまよい歩いたら楽しそうな町」というお題で、大阪出身のお友達(下戸)にお願いしました。

それが京橋駅なのでした。

※注:朝10時

大阪駅からJR環状線に乗ってやってきました、初めての京橋。それにしても都心をまわる環状線のわりには、住宅地を縫うようにして電車が走ります。しかも同じホームでも電車を乗り間違えると関空に行ったり、奈良に行ったり。山手線と異なるお作法に、早くも緊張感マックスです。

JRと京阪電車の乗り換え口は今どきの町並み

改札を出ると左手に京阪電車の今どきな駅ビルがありますが、右手に折れると昭和の匂いが立ち込める繁華街のアーケードが延びています。しかも、午前中から駅ほぼ直結の立ち呑み屋に客があふれている始末。これは長い一日になりそうだ、とゾクゾク。

それではロッカーにスマホを預けましょう。駅構内ではなく、商店街内のコインロッカーが100円と激安

まずは土地勘をつかむべく京阪京橋商店街をぐるぐる。なんとなく楽しそうでおいしそうなお店の目星をつけます。それにしても、朝ごはんを食べていないのでおなかもぐるぐるです。駅にいちばん近い立ち食いうどん屋(京橋うどん)で、「はいからうどん」(280円)なる聞き慣れないメニューを注文してみました。

アーケードの入り口で気になった「京橋うどん」。外に椅子とテーブルもあって、カフェ感すら放っています
は、はいから? 後でわかったんですが大阪では「一銭洋食」や「ラジオ焼き」など、なんとなく「ナウいから」と名付けた便乗メニュー名が多い模様

出てきたのは細かい天かすが載った、いわゆるたぬきうどん。個人的にうどんに天かすは不要派なんですけども、これもスマホなし旅が抱えるリスク。あきらめてひと口すすると「ンマ〜イ!」(藤子不二雄A)ではなく「アマ〜イ!」。そう、めちゃくちゃお出汁が甘いのです。しかも麺は、スーパーマーケットで売っているブヨブヨのコシなしゆで麺。うーん、貴重な一食を無駄撃ちしちゃったかも、と正直後悔しました。この時点では。

雑多な雰囲気がたまらない

ご飯を食べちゃったので、あらためて商店街をこまめに探索します。コンビニ、うどん屋、喫茶店、中華料理店、立ち呑み屋に、まだオープンしていない居酒屋、キャバクラ、風俗店。そして、関西ローカルCMでおなじみ「グランシャトー」もおまっせ! さらに路地裏に迷い込むとラブホ街。

そうか、ここはあまねくおっさんの欲望を満たす、下町の歓楽街なんだなあ。

そんなことを考えつつ見つけてしまったのが、ビンテージ感あふれる連れ込み旅館というかラブホテルの「富貴」です。

ちょっとわかりにくいけど「ホテル富貴」(http://www.hotelfuki.jp/)
猫ちゃんがチェックアウト
ネオン看板が渋い

外観からして、ヤレ具合がたまりません。果たして中はどうなっているのかと近づいてみたら、やっぱりというか『ROADSIDE JAPAN』でおなじみ編集者・都築響一氏が紹介したホテルだそうで、関西ローカル番組でのロケやMV撮影もある有名スポットなのでした。休憩は75分2500円~なので、撮影&仮眠(寝不足)のために入ってみてもいいかな〜と思ったんですが、外観を撮影する横からチェックインするカップルもいたりして「邪魔しちゃいけないな」と退散しました。

もれなくカツアゲされそうなガード下をくぐって西口へ

東口は裏京橋まで足を延ばし、さらに反対側の西口も駅ビル含めてざーっとまわる。スマホなし旅では、休憩ついでにディープな情報をゲットするには昔ながらの喫茶店に入るのが定石なんですが、ランチタイムが迫ってきたので悠長に取材できそうにありません。はて、困ったなあ、どうしようかなー。

飲むしかあるめえ。

そうして飛び込んだのが東口「ぎょうざの満洲」の並びにある立ち呑み屋「七津屋」でした。ここを選んだのは水・金・土曜がサービスデーで生中が270円、焼酎が200円だったから! とにかく安く飲みたい。

煤で真っ黒な看板が目印(?)の「七津屋」

まず、行ったったのは、おでん。大根、牛すじ、玉子です。ドリンクはハイボールをオーダー。ダブルでも280円とゲロ安。カウンターに立った下町の紳士たちは話すでもなく、黙々と自分の酒を飲み、つまみを食らっています。なぜかしらキャップ率が高くほぼ100%なのも京橋スタイル(ぼくもです)?

かんぱ〜い。薄味のおでんがありがてえ
続いて串カツ。チューハイはレモン抜きにしてもらいました

本当は鉄板焼き肉も食べたかったんですが、14時からの提供だそうであきらめて、ポピュラーな串カツをいただきました。アスパラガスにししとう、そして豚。よーし、チューハイも追加しちゃおう。

午前中から、生まれて初めてやってきた町の、口数少ないハードボイルドな立ち呑み屋で、おっさんどもに囲まれ軽く酔っている。つい昨日は他媒体で高級車メーカーの社長や、世界的建築家らの意識高いインタビュー仕事をやっつけていたんだけどなあ。これも取材とはいえ落差がたまんねえな、と酒が進みます。いまあ、俺にはこっちの世界がお似合いだ。

お会計は他にも頼んで1500円ほど。お隣ではちびちびとミニマルに飲み食いして400円ちょいで会計している常連もいたので、まだまだ修行が足りません。

肝心のお味は、京橋うどん同様めちゃくちゃフツー。家で作れるかどうかでいうと、作れちゃう。でも1人分のおでんを仕込むのは大変だし、揚げ物は台所が汚れるし、後片付けもしんどいと考えたらサクッと外で済ますのが大阪スタイルなのかもしれません。このへん台湾や韓国に似ているかも。そう、今回の旅で発見したひとつに、大阪に限らず京都も含め関西の雰囲気って、アジアの都市に近い、ということなんです。その理由はまとめで後述します。

そして後からわかったんですが七津屋は梅田でも展開している、わりに有名な立ち呑み屋だったんですね。なんとなく入りやすい雰囲気だったのは、どこかで「ちゃんとしてる感」を受け取ったからかも。

それにしても朝からうどん、おでん、串カツその他を食べて、もうおなかはパンパン。飲み屋をはしごするにもキャパオーバーです。でも京橋でやること、といったら飲み歩くしかなさそう。こうなったら腹を減らすため、散歩するしかありません。地図で近所だとわかった大阪城でも拝みにいきましょうか。

その道すがら見つけたのが、オープンエアで雰囲気の良さそうな海鮮系の立ち呑み屋。店員さんに話しかけると「14時からやってますんでぜひ」とのこと。確かに、肉系ばっかりになっちゃうんでお魚はいいかも

駅から西へとズンズン歩いていくと、ほどなくして大阪城。この辺は大阪ビジネスパーク(OBP)という再開発エリアらしく高層ビルが立ち並んでいます。スカスカしているというか多少開けているため、あとでこの辺の高層階から夕焼けが拝めるかも、と周囲を物色しておきます。

大阪ビジネスパーク(OBP)
ほぼ小学校の修学旅行以来の大阪城(遠目)
念のため撮影しておいた大阪城カット(没)

とはいえ新宿副都心みたいなオフィス街ゆえ、面白ネタが転がっているわけでもありません(チェーン店ばっかし!)。あえなく京橋駅に戻るのですが、実は駅からOBP直結の連絡通路があったんですね。しかも寝屋川にかかる大阪城京橋プロムナードからは夕焼けが望めそう。あとで来よっと。

京橋駅からOBP直結の連絡通路。家族連れに不審がられるミニくまちゃん
見たこともない京阪電鉄系(?)のコンビニ。バラ寿司の弁当があるのが大阪風かも

連絡通路で京橋駅に戻り、潰れたイオン京橋を眺めつつ、再び京阪モール、コムズガーデン、国道1号線と駅周辺をさらにぐるぐる徘徊していると、駅北東部に新たなアーケード商店街を発見しました。その名も「ビギン京橋 新京橋商店街」。入り口ではなぜか、真実の口が政治に対してダメ出ししています。これは怪しげ、もとい、良さげ!

うっかり見逃していました「新京橋商店街」
世間に物申す真実の口

事実、昔ながらの立ち食いうどんや居酒屋、たばこ屋、肉屋など昔ながらの店が残る一方で、ディスカウントストアやタイマッサージ店など新陳代謝もある活気あふれる商店街なのでした。

THE活気
角打ちができる酒屋。ここも気になるけどまた今度!
今回の旅でもっとも衝撃を受けた食堂「もとや」。かけうどん120円、カレーライス230円、カツ丼330円、うなぎ丼530円、上定食680円…

とりわけビビったのがかけうどん120円、カレーライス230円の食堂「もとや」。どんなものか食べてみて〜! でも腹はパンパン。それにしても何なんだ、この活気あふれる商店街は?というわけで、京橋中央商店街振興組合の事務局に突撃しました。

お話をうかがったのは京橋中央商店街振興組合の仲辻さん
駅側からアーケード途中のドーム天井がある三叉路の広場までが新京橋商店街(ビギン京橋)で、それ以降が京橋中央商店街(リブ・ストリート)なのだそうです

歴史的に京橋(橋の名前)は、大坂城と京都を結ぶ京街道の起点で、このアーケードはまさにそのルート上に位置するんだとか。近現代は駅周辺に町工場がたくさん広がり、そこで働く人たちを慰労していたのが件の歓楽街というわけです。

なるほど。それにしてもかけうどん120円は安すぎる。そのほか昔ながらの飲食店や地元の神社仏閣などの情報もうかがいました。このあたりで古い立ち呑み屋は、朝一で見た駅前の「まつい」だとか。やっぱり避けては通れない店だったのね。いやはや、ありがとうございます。

とはいえ、まだまだ腹はパンパン。話に聞いた櫻宮神社まで行ってみるのもいいけれど、この時点で1万2000歩ほど歩いていて脚もパンパン。「いい加減、どっかで休みた〜い」とアーケードを外れた場所で見つけたのが「電気風呂」と「打たせ湯」が魅惑的な銭湯「ゆ〜でるらんど都」です。実はぼく、電気風呂が大好きなのです。

「ゆ〜でるらんど都」。温泉ではなく銭湯
低周波治療器と同じく、電気刺激でコリをビリビリほぐしてくれる電気風呂。東日本では珍しいので嬉しい。奥には打たせ湯もチラリ(気持ちよかった)

電気風呂で重要なのは、電極板と浴槽のレイアウト。これが中途半端だとコリにうまく押し当てられないのです。「都」の場合は、2枚ある電極板の片方が座れる位置にあり、ちょうどお尻の筋肉に電気が直撃。歩き疲れた体にビリビリが嬉しい。打たせ湯ともあいまって脳みそがとろける〜。

どんだけ効いたかというと、1週間ほどお尻が筋肉痛になったほど。EMS的な効果も期待できそうです。近所に欲しい!

風呂上がりにフルーツ牛乳。生ビールも気になるなあ

風呂上がりにはフルーツ牛乳もいただいてチルアウト。よくよく見るとロビーにはおなじみの入浴グッズやドリンク類のほか、駄菓子やうどん・ラーメンなどちょっとした軽食が充実しているではありませんか。番台(?)のお母さんに話をうかがうと、家族連れが多いので子どもから大人までみんなに喜ばれるものを置いているんだとか。生ビールなんて280円ですよ。飲んでなかったら絶対にいっちゃってた。

ホスピタリティが冴えわたる「都」を後にして、胃腸にも少し余裕が出てきたところで第2ラウンドです。120円のかけうどんが気になるものの、これだけ食べる勇気もなく、かといって230円のカレーライスも頼むと食欲がゲームオーバーになりそうなので、「もとや食堂」は次回の宿題として断念。アーケードの入り口にあり、年季の入った立ち食いうどんの「松屋」で月見うどん(260円)にしました。ここはメニューも黒電話もご主人も、いい感じに昭和感満載なのです。

渋いエントランスの「松屋」
これまた渋いメニューに、壁掛けの黒電話! それにしてもいなり100円(2個)、おにぎり140円(2個)は安い
月見うどん。やはり天かすが入っている

うどんのお味は、やっぱりフツー。お出汁は京橋うどんほど甘くないのですが、麺がやっぱりブヨブヨのスーパーゆで麺なのです。今どき冷凍麺でもしっかりコシがあるのに、なぜなんだ大阪。考えてみればはなまるも丸亀もあるんだから、コシなしうどんは大阪人の好みなのでしょう。四国出身ゆえ、このへんは受け入れられない部分もあるのですが、一方で大阪うどんのようにブヨブヨな麺と天ぷらの自販機うどんも好きだし、そういうものだと思えばおいしいのかも。後日談はこれまた後述します。

お次は昼間見つけたいい感じの、オープンエア立ち呑み屋です。まだ15時台だし余裕だろう……。

と思ったらこの行列……

なにここ、超人気店だったの? 先ほど話したお兄さんも「おかえりなさい」と声をかけてくれたもののめちゃくちゃ忙しそう。さらに興味が湧いたものの、行列に並んでいる時間がもったいない気がしたので、これもまた次回の宿題かと泣く泣く退散。であればいよいよ駅直結、創業昭和27年の立ち呑み屋「まつい」に挑まざるを得なくなりました。いざ。

創業昭和27年といえば67周年。ちなみに、この写真は朝10時の段階です
まずはレモンチューハイとどて焼き、牡蠣の串カツでひとり乾杯

普段は味噌味って選ばないんですが、田楽味噌ともつ煮は別です。うまい! 酒がススムくん! 牡蠣もまたプリプリ。ウスターみたいなソースは意外とあっさりめ。

続いて目の前で仕込んでいて気になった「ねぎま」、そして生姜と青唐の串カツもオーダー。するとねぎまは焼き物や揚げ物ではなく、おでん。しかも、肉だと思っていたのはマグロなのでした。これは全部裏切られた!

マグロのねぎま、しかもおでんダネで意外

そして、ここんちはオペレーションが面白く、串カツの注文が入ると注文数以上に揚げて、他の客にも勧めるのです。経験的に1人が頼むと連鎖的に注文が入るのを知っているのでしょう。お客も待ち時間ゼロで揚げたてがすぐに食べられるから合理的です。しかし、すでに揚がったものを注文しちゃうと、熱さを見てそのまま出されたり、二度揚げして出されたりするので(在庫に無駄がない)、揚げたてにこだわる人は気になっちゃうかもしれません。

お出汁のしみた豆腐

その他にも骨付きの若鶏の唐揚げや、バカでっかい徳利で出てくるお燗も名物のようでしたが、そろそろ満腹ゆえ、おでんの豆腐で癒やされつつチューハイ2杯で退散です。それにしても「おでんのポテトサラダ」も気になるなー。これもまた次回だな。宿題がいっぱい。

時刻は16時過ぎ、そろそろ日が傾いて夕暮れどきです。空はすっきり晴れ渡ってキレイな日没が拝めそう。なるべく開けた場所を、というわけで昼間に目星をつけておいたOBPへの連絡橋へと向かいます。ビルに邪魔されるかな〜、と不安でしたが取材日はドンピシャで寝屋川方向に太陽が落ちるっぽい。それではしばし、京橋の夕焼けをお楽しみください。

あんまり期待していなかったんですが、オレンジの夕映えが寝屋川にも反射して、なかなか美しい
足を止めて撮影する人もちらほら
「スマホなし旅」でいつか導入してみたいレンタサイクル
まだ3回目ですが、今のところ夕暮れに恵まれていますね。ありがたや

いやもう朝から食って飲んで風呂でシビれて、こんなに綺麗な夕焼けが見られて、パーフェクトじゃないですか? しかもまだ17時過ぎ。プライベートなら大満足して帰宅するところですが、これはスマホなし旅。夜の京橋取材がまだ残っている、気がする。

作戦を練りつつ、腹を落ち着かせるため駅前の喫茶店「珈琲亭」で、この日初めてのコーヒー。1杯350円と駅前価格じゃない。煙草もガンガン吸えます(吸わないけど)

でもあと、飲み屋は1軒くらいしか行けない。しかも立ち呑み屋がメインなので長居もできない。すでに2万歩ほども歩いているので、疲労もマックスです。最後はどこでシメるか。

やっぱり、あそこでしょう。

きました

先ほど大行列でフラれた立ち呑み屋に再度向かいました。すると2時間ほどの行列はなく、待ち客も数組とまばら。ぼくは一人客なのですぐに通してもらえました。良かった……入れた。とりま、焼酎のお湯割りをください。

朝からうどんとおでん、串カツばっかりだったので海鮮が嬉しい

ここんちの名物は海鮮で、特にマグロのほほ肉の炙りがウリだそうですが、残念ながら売り切れ。そこでウナギの蒲焼きと、これまた定番という「トロ、ウニ(寿司)、イクラ」の三点盛りからイクラを除いた二点盛り(いずれも単品)を注文しました。

プリン体バンザイ!

いやはや、ンマ〜イ。こう言っちゃなんですが、京橋でやっとA級グルメに出会えました。その分、値段もそれなりというか京橋価格でいうとハイエンドゆえ、立ち呑み屋にもかかわらずスーツのビジネスマンや外国人観光客の姿が目立ちます。

それにしても客が多すぎる。なんでこんなに繁盛しているのか、「居酒屋とよ」の店員さんに聞いてみたところ「大将のドキュメンタリー番組がNetflixで配信されてから外国人観光客でめちゃくちゃ混むようになったんです」とのこと。そういうことか! 確かに明るく威勢のいい大将が、DJよろしく料理をまわしつつオーディエンスをイジって箱を盛り上げています。記念撮影のリクエストも後を絶ちません。

料理の味もさることながら、大将の人柄に多くの客が集まっているのでしょう
やおら片手腕立て伏せを始める大将と外国人観光客。番組内でそういうシーンがあるわけ?

「この店をスマホなしで探し当てたのはさすがですね」と褒めてくださったのは、カウンターで隣り合わせになった同じく一人客のビジネスマン。関東出身ながら大阪での生活が長いという彼いわく、「大阪環状線はほとんど下町を走っているのが山手線との違いですね。京橋を山手線の駅でたとえるなら……新橋? いや、あんまり当てはまらないかも。どっちかというと赤羽や蒲田が近いかもですね」とのこと。なるほど赤羽感で腑に落ちました。

ようやく立ち呑み屋3軒目にして客同士の会話ができ、さらにはウナギ・マグロ・ウニと大好物のジェットストリームアタックで有終の美を飾ることができた京橋。もういい加減、飲み食いはできないにもかかわらず、どこか少し名残惜しくもあり、「夜の写真も必要だしね」と自分に言い聞かせながら、しばしカオスな歓楽街をぶらついたのでした。

グランシャトーも気になる
まとめ

食わず嫌いだった大阪で、文字通り食いだおれるハメになった京橋。そして「120円のかけうどん」「若鶏揚げ」「もつ焼き」といった、数多くの宿題も抱えてしまった京橋。また、行きたいか?と訊かれると「ぜひ行きたい!」と即答するほど気に入っちゃった京橋。

そうそう、件のブヨブヨなスーパーうどん。本編ではさんざん書きましたが、実は後日談がありまして、帰宅後いつもの加ト吉の冷凍うどんをチンして食べようとしたところ「コシがトゥーマッチやな。大阪のやさしいうどんが少し恋しい」と感じてしまうほど、いつの間にか骨抜きにされていたのでした。

食べてみたら案外フツーだけど、じわじわとにじり寄ってきて、いつのまにかクセになっている。それが大阪の味なのかもしれません。

そして、道中抱いた関西のアジア感について。

関西では自分の目的や欲望に忠実に、わき目もふらず、人目も気にせず行動している人が目立つというか。ふだん東京で「とにかく他人に迷惑をかけない」をルールとして暮らしている身からすると、ビックリしちゃうシーンに出くわしがちです(東京でもたまにあるけど、関西だとしょっちゅうある)。それがソウルや台北みたいなアジアの街角で遭遇する状況に近い。

その良し悪しは別にして、少なくとも東京だと絶対に重なり合わないレイヤーの人同士が、関西だといとも簡単につながる。実際、自分が海外旅行で受ける刺激は、遠慮なく踏み込んでくるローカルな言動だったりもします。うちの地元もそうですが、言葉遣いはあけすけで品がなく、なんとなくコミュニケーションの仕方がやだなと感じていましたが、見方を変えて「ここはもう日本語が通じるアジアの街なんだ」と思えば関西も楽しいと悟ったのでした。

おまけに「居酒屋とよ」で起きたもうひとつ、帰京後のエピソード。

偶然知り合いのデザイナーさん(東京在住)も最近とよに行ったばかりらしく料理や店内、大将の写真がFacebookにアップされていました。思わず「ぼくも金曜日に行きましたよ」とコメントしたら、「私も金曜日ですよ!」とのお返事が。そこで、彼女がアップした大将の写真をよーく眺めてみたら、ぼくが写り込んでいるではありませんか! ちょうどカウンターを挟んで反対側にいたのです。すごい、無駄にミラクル! 京橋の奇跡。

というわけで、今回も無駄に「もってる」スマホなし旅でした。さて、次はどこの町に行こうかなー。

いつか誰かとしけこみたい「ホテル富貴」

熊山 准(くまやま・じゅん)

リクルート編集職を経て『R25』にてライターデビュー。執筆分野はガジェット、旅、登山、アート、恋愛、インタビュー記事など。同時に自身のゆるキャラ「ミニくまちゃん」を用いた創作活動&動画制作を展開中。ライフワークは夕焼け鑑賞。マレーシア・サバ州観光大賞2015メディア部門最優秀海外記事賞受賞。1974年徳島県生まれ。

熊山准のおブログ
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