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【スマホなし旅】第4回 東中野駅・繁華街に挟まれた地味な町をさまよう【東京】

【スマホなし旅】第4回 東中野駅・繁華街に挟まれた地味な町をさまよう【東京】

旅の醍醐味は、緊張感とともに未知の世界を切り開くこと。インターネットにより、地球の裏側まで情報化された現代において、本当の冒険とはスマホを持たず見知らぬ土地を徘徊することかもしれません。たとえ隣町でもいい、スマホをロッカーに預けて飛び出してみよう。きっと、新しい出会いがあるはずだから。


人生で一度も訪れたことのない駅に降り立ち、スマホなしで町をさまよう連載「スマホを捨てよ、町へ出よう」(スマホなし旅)。第4回はJR総武線・都営大江戸線の「東中野駅」です。

なぜ東中野なのか?

あらためて、スマホなし旅のコンセプトを思い出してみましょう(リード参照)。そう、スマホさえなければご近所でも冒険になるのです。これまで「釧路」「印西牧の原」「京橋(大阪)」と遠方ばかり旅してきましたが、あえて今住んでいる場所からもっとも近い場所をうろついたらどうなるか? 意外と知らないことだらけなのではないか。事実、年末に四谷で飲んだあと自宅の千駄ヶ谷まで最短ルートで歩いて帰ってみたら、見たこともない景色が広がっておりました。

というわけで住んでいる町からもっとも近く、今まで一度も降りたことのない駅を探索! そのひとつが、千駄ヶ谷駅から総武線でわずか3駅先の東中野駅なのでした。

スマホなし旅はじまって以来の雨。昨日のリングフィットアドベンチャー(ニンテンドー スイッチ)でお尻が筋肉痛なのもウツ要素

自宅からわずか20分で到着した、東中野駅。西口には四ツ谷や恵比寿よろしくアトレがありますが、5階建てとこぢんまりした様子です。

ひとまずコインロッカーにスマホを預けましょう

けっこう雨足が強いなか、なにはともあれ周辺のリサーチです。ひとまず西口ロータリーから見えた東中野ギンザ通りに向かいます。ここでローカルな喫茶店にでも入って、地元のネタを収集するって魂胆ですわ。

商店街が残っているだけでもありがたい

しかし、チェーン系以外の喫茶店が見当たりません。一応昔ながらの青果店や菓子店はあるものの、まだ早い時間とあってか開いているのは美容室か病院ばかり。“びよういん”の町…。

いまどき珍しい八百屋さん
ちょっと気になった、フランス料理をテイクアウトできる店
ペッパーくんも空模様を気にしている様子。予報では、午前中にやむはずだったんだけどな。濡れては困るので、ミニくまちゃんの出番もありません

商店街の外れまで向かうも収穫なし。ギンザ通りに見切りをつけて、駅の南側の坂道を下っていきます。この通りには、いまどきラブホが残っているのが珍しい。

目にとまった洋食屋さん。牛のマークも味わいがある。近くにあるもつ焼き屋も後で様子を見にこよう

雨はやむどころかどんどん強くなる有様。リュックも足元もビショビショです。寒いし、朝から何も食べていないし、そろそろ喫茶店を~と切望した矢先に見つけたのがCOCOSでした。

東口のほうが近いかな? 喫茶店COCOS
8時半から11時まで提供されているモーニングセット(550円)をいただきました

雨に濡れて体も冷え切っていたので、あったけえコーヒーがありがてえ。サンドイッチもバターがしっかり効いていて美味です。

まだまだ雨がやみそうにもないので、レアニッポン編集部にお手紙でもしたためましょう。領収書を添えてっと

そんなCOCOSは外観から比較的新しめのお店かな?と思いきや、実はこの場所で47年間も営んでいる老舗なのでした。オーナーのご夫婦いわく開店当初は近辺に喫茶店が7店もあったそうですが、今となってはこちらだけ残ったのだとか。

東中野で半世紀近くも商売されているとなれば、この地域に詳しくないはずがありません。町のあらましをはじめ、飲食店、銭湯、見晴らしのいい夕焼けスポットまで、あらゆるネタをゲットいたしました。

明るい奥さんと、朴訥な旦那さんで切り盛りするCOCOS。常連のお客さんいわく、和風パスタが絶品とのこと

COCOSで旅の装備を整え向かったのは東口から大久保通りへ南に延びる東中野名店会。東中野駅を中心に3つの商店街が広がっているのですが、その中でもっとも地味、かつメディアで取り上げられないのがここ名店会なのだとか。しかしながら、往時は中野区で初めて歩行者天国を導入するなど大変賑わっていたそう。いまやシャッター通りで見る影もありませんが、本当にそうなのか町の人にお話をうかがいました。

シャッター通りと化している東中野名店会
とはいえ今風におしゃれショップもあり、こちらはTOSEI Laundryなるコインランドリー。奥には、メルカリ出品に便利な簡易フォトスタジオ(無料)まで備えています

商店街の人をたどってお話をうかがったのは丸越米店のご主人。いわく、歩行者天国は当時30代の若手中心にアイデアを出し合って決めたのだそう。時には道路の排水溝をすべて塞ぎ、坂上から消防署の放水車で水を流して人工の川を作り、どじょうすくいができるイベントまで実施したこともあるのだとか。パワフル。

当時の写真を見せてもらいました。今では考えられないほどの人だかり

しかしながら多くの町おこしの例にもれず、イベントをやればやるほど集客はするものの、ボランティアに頼った運営スタッフは疲弊し、家族にしわ寄せがくる始末。露天の売り上げで運営費をまかないながらも、商店街が潤ったかどうかは未知数。週末ごとに道路を封鎖するため、所轄警察署からの心証もよろしくなく、あること(全部聞いちゃった)がきっかけで歩行者天国は終了したのだそうです。

もはや趣味で米屋を営んでいるというご主人。赤字はアパート経営で補塡しているとか。新聞社みたいだ

COCOSのご夫婦や丸越米店のご主人いわく、駅前にスーパーマーケットのサミットができたのが東中野衰退の分岐点だったようで、一時は建設反対デモや工事車両の封鎖、社長宅への出店中止の直訴も行ったそう。一方で「スーパーが進出してくるのは時間の問題」(ご主人)とも考えていたらしく、その間に商店街として何ができるかを模索したとも。やがてAIライターに取って代わられるフリーランスとしても身につまされるお話ですね。

お盆には東京生まれの子どもたちのため、お化け屋敷を設置したという第六天神社。準備に1カ月以上かかり、めちゃくちゃ大変だったそう

町内会の古株からのお話を存分にうかがったならば、若い衆からも聞かねばなりません。というわけで丸越米店のお隣にある今風のコーヒースタンド・早川亭にもお邪魔しました。ちなみに、するする話が進んでいるようですが全部飛び込みですからね。それでも快くお話ししてくれるのが東中野のよいところ?

自家焙煎もしている本格コーヒーショップの早川亭
ミニくまちゃんがいただいたのは深煎りのインドネシア。コーヒー1杯400円とリーズナブルです

オーナーの早川さんは生まれも育ちも地元の中野っ子。とはいえそれは中野駅エリアの話で、東中野は現在の物件に出会うまでほとんど知らなかったのだそう。お客さんは地元の方からエアビーの外国人旅行客まで老若男女。たまに見知らぬ顔が多い日は、大久保通りにあるレパートリーシアターKAZEの公演日。ミニくまちゃんがこの辺を徘徊する姿を見て、「あの人はなんかあるな」と踏んでいたとか。不審者~。

銀座・十一房珈琲店などで修業を積んだ早川さん(みんな首を持つね)。近くにおしゃれコインランドリーが工事していた時は、カフェができるのかと焦ったそうです

早川さんからも近隣の飲食店情報をしこたま仕入れて再出発。雨もあがりました。

早川さんオススメの長崎チャンポン まるしん。他にもラーメンのかしわぎ、メンドコロKinari、コ・トゥ・タモ・ペヴァ(ロシア料理)、ビスポーク(イギリス料理)、タイ料理、アフガニスタン料理など、さまざまな店を紹介いただきました。意外と多国籍

そろそろランチタイムです。ここはCOCOS、早川亭でプッシュされた東中野の有名店・大盛軒に参りましょう。

店構えが素晴らしい

ここんちの名物は鉄板麺なるメニュー。豚肉とキャベツが載った熱々の鉄板焼きにご飯、小ラーメンが付いた定食なのだそうです。

鉄板麺900円

鉄板の中央に穴を開け、そこに生玉子を投入してかき混ぜるのが正しい食べ方。好みでタバスコやニンニクチップをふりかけます。

生玉子を投下

酸味のあるタレとも相まって、うまくないはずがありません。勢い白米がガシガシ進みます。一方のラーメンは喜多方ラーメンにも似たあっさりの中太麺で、味噌汁がわりといった風情。そう、早川さんの言うとおり、これは肉野菜炒め定食 with ラーメンなのです。

若干、伝説のすた丼ぽさも感じます

ともあれライスもデフォで大盛りゆえ満腹です。ご飯少なめにしてもらえば良かった、と重たい腹を抱えながら、次なる目的地・銭湯を探します。

映画『JOKER』ごっこができそうな階段。気づけば雨も上がってらあ
さてと北側へとまわります
かつては結婚式場だった日本閣にはタワマンが
北口に広がる、空き地だらけで寂れた繁華街ムーンロード。再開発待ったなし?
シャンソンはお好き……!?
駅北側には有名なドキュメンタリー専門の映画館ポレポレ東中野が。話題の『さよならテレビ』が公開中でした。観たいけど観てる場合じゃねえ
あと気になったのがやきとん専門の丸小。案の定、名店だったようですが残念ながら閉業
さて、残る商店街・東中野本通りを歩きます
リサイクルショップ店頭にいたスヌーピー。傷みが激しいため売り物ではないそう
気になる飲食店が点在している商店街。ミニくまちゃんの地元・徳島のお店もある! 半田そうめんはもちろんですが、ぜひともそば米をご賞味いただきたい
三越東中野マンション。三越ってマンション経営もしてたの?
さらに生牡蠣&沖縄そばという、大好物しか集まっていない居酒屋発見。後で絶対に来よう
そんなこんなで、早稲田通りにぶつかる直前で発見した銭湯・松本湯。でも、オープンが15時なので少し時間があります。日も差してきたぞ
早稲田通りはバイクで走ったこともあるため、RPGでいうと見えない壁。時間つぶしで周囲を散策していたら昭和の匂いがする未舗装道路を発見
オープン10分前に戻ったら、すでに多くの人が待ち構えていました

そうそう、スマホなし旅の取材を進めるうちいろいろ得た知見がございまして、ここらでひとつまとめておきましょう。

・やれることは「飲む(カフェ、酒場)」「食べる」「見る(美術館、博物館、神社仏閣、夕焼けスポット、その他観光地)」「風呂」「買い物」「遊ぶ」、この組み合わせと繰り返し
・朝一番に地元の喫茶店、観光案内所、商店街事務所に向かってリサーチ
・挨拶だいじ
・胃腸には限界があるので食べすぎない、飲みすぎない(でも、できない)
・お風呂セット必須

こんな塩梅でしょうか。とにかく1回の取材で2万歩近く歩きますから、途中で休憩が必要です。そんな時に使えるのが昔ながらの銭湯なのです。

470円と銭湯料金だけで入れます。サウナは別料金

松本湯の特徴は6つもあるジェットバス。そして、手をかざすとなんとも言えない快感がほとばしる注水・排水の水のヴェールです。いつまでも触っていたい…。なおかつチェアも4つほどあり、サウナや湯船で火照った体を冷ますのに最適。取材を忘れ、しばし惚けてしまいました。

お風呂上がりは缶ビール! うまーい

外に出たらすでに日没前。実は、雨のち晴れの予報を事前にチェックしていて、案の定夕焼けしそう。あわてて一番高台にある駅に戻ります。

いい感じに黄昏ている東中野
駅前ロータリーからの夕焼け

しかし一歩間に合わーず、駅に着いた頃には太陽は雲の中へ。でもまだまだ諦めません。

駅から南西へと延びる路地にもおしゃれカフェが
なんとか見つけた夕焼けスポットも時すでに遅し、再び雨雲がかかってしまいました。遠くに中野が見えますね
山手通りは赤く染まっているんだけどなあ
夜のギンザ通りはおそらく活気に溢れているのでしょう。でもよくメディアで紹介されるみたいなのでスルー
今回の夕焼けはこれが限界です。アトレ3階からの中央線

日が暮れたものの、まだ大盛軒がたたってお腹が空きません。ならば、銭湯をハシゴしようではありませんか。

夜も雰囲気たっぷりの大盛軒。この店舗デザインした人は天才だ。青ってあんまり飲食店に使われないのにね
東中野本通りのはずれにあるアクア東中野

アクア東中野も470円(サウナは別料金)で楽しめる銭湯。ここんちは屋外プール(冷水)と露天風呂、ぬる湯の炭酸風呂が特徴です。特にミニくまちゃんが気に入ったのは、熱湯(あつゆ)にあるジェットバス。強力な水流で、リングフィットアドベンチャーで凝ったお尻をほぐしてくれます。全身をもみほぐしたら、すぐさま隣の水風呂にドボン! 17度以下の「わかってる」冷水で一気にクールダウン。そこへぬる湯の炭酸風呂に入れば、ディープリラックスの境地へと誘われます。

松本湯にアクア東中野、甲乙つけがたいんですが駅近の利便性とさまざまな温度の湯船から、アクアが好きかもしれません。

風呂上がり、とっぷり日が暮れた東中野本通り
スヌーピーも収納済み
満を持してやってきたのは、海鮮・牡蠣・沖縄料理の「わ」。オーナーは沖縄の人じゃないのになぜ?
編集部に怒られるのを覚悟して、この日入荷していた5種類の牡蠣を2個ずつ注文してみました。くー、たまんねえ

「自分が好きなものばかり作っていたらこうなった」という居酒屋「わ」。エッジが立ちすぎたコンセプトがピンポイントでぶっ刺さりました。生牡蠣食った後に沖縄そばでシメられるなんて、考えたこともないサイコーのコンボじゃないですか。

うっちんハイで胃腸ケアも怠りません
お気に入りは磯の香りというか、昆布の風味すらただよう陸前高田の広田(時価300円)。12個注文すると10%引きになるのでお得ですよ!
シメはもちろん沖縄そば。フーチバーの香りがいい!

あれこれ好き放題注文して6000円弱。2軒ほどハシゴするつもりでしたが、もう食えねえ。

ぼくの気持ちを代弁してくれているステーキハウス。夜になると飲食店が増える東中野。しかもチェーン店ではなく、個人店が多いのが印象的です
ムーンロードも始まった模様

パンパンの腹を抱えてたどり着いたのが、大盛軒の対面にあるオーセンティックなバー・ANCHOR MILLSです。実はここ、昼間はレザーバッグの専門店として営業し、夜はバーになるという二毛作なお店だとか。

グランメゾン東京でキムタクが持っていた革鞄ブランド・VASCOのショップでもあります
めっちゃイケてるインテリア
「グレンリベット12年」のハイボールと、ウオッカソーダで1400円とリーズナブル

たまたま共同オーナーの1人が居合わせたため、東中野のさらなるディープな話がうかがえました。朝から取材していたので夜20時には退散かな~と思っていたのですが、東中野が楽しすぎて思わず23時近くまで長居。それもこれも自宅から近い町という安心感も関係していたかもしれません。最悪タクシーで帰るとなっても3000円くらいで済みますものね。

とはいえ食べすぎ飲みすぎでぐったり。本当はシメで半田そうめん&そば米汁をいただきたかったのですが限界です
●まとめ

というわけで、ご近所でも冒険たりえると証明できた東中野の旅。スマホがなければ人に話を聞くしかなく、おかげでより深くその町を知ることができたのでした。

また、(日頃はそんなことまったく考えてはいないのですが)メディアに携わる者としてさんざん紹介され尽くした町の魅力(今回でいうとギンザ通り)よりも、まだまだ知られていない地域のモノゴトを深く掘り下げることこそがその使命なんじゃないかと思ったのでした。知らんけど。

キュートな洋一亭のマスコット。次回は行きたい

熊山 准(くまやま・じゅん)

リクルート編集職を経て『R25』にてライターデビュー。執筆分野はガジェット、旅、登山、アート、恋愛、インタビュー記事など。同時に自身のゆるキャラ「ミニくまちゃん」を用いた創作活動&動画制作を展開中。ライフワークは夕焼け鑑賞。マレーシア・サバ州観光大賞2015メディア部門最優秀海外記事賞受賞。1974年徳島県生まれ。

熊山准のおブログ
http://www.kumayama.com/
Yahoo! JAPANクリエイターズプログラム
https://creators.yahoo.co.jp/kumayamajun

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