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酒だけで具材を煮切る!? 酒どころ広島で生まれたレアなご当地鍋「美酒鍋」

酒だけで具材を煮切る!? 酒どころ広島で生まれたレアなご当地鍋「美酒鍋」

広島の冬の味覚といえば、旬の牡蠣を使った牡蠣の土手鍋を思い浮かべる人も多いのですが、今回ご紹介するのは兵庫の「灘」、京都の「伏見」と並ぶ酒どころである広島の「西条」という町で生まれた「美酒鍋(びしゅなべ)」。酒造りに励む蔵人たちのまかない料理として食べられてきたというご当地鍋は、一体どんな鍋なのでしょうか。

酒で具材を煮切る!? スープなしの鍋料理

「美酒鍋」とはその名のとおりお酒を使って作る鍋料理なのですが、注目すべきポイントはその作り方と出来上がり。水は一切使わず、具材をお酒と塩・コショウだけで煮切って作るので、鍋料理といいつつスープはほぼゼロの仕上がりに。これは全国的に見ても、なかなかレアな鍋料理といえるのではないでしょうか。

そんな美酒鍋をいただける店は広島にいくつかありますが、今回はこの「美酒鍋」発祥の蔵元である「賀茂鶴酒造」が運営する和洋食レストラン「佛蘭西屋(ふらんすや)」の“元祖”美酒鍋をご紹介します。

JR西条駅から徒歩約3分。酒蔵通りと呼ばれ、賀茂鶴酒造をはじめ7軒の蔵元が軒を連ねるエリアに、虫籠窓(むしこまど)など京の町家のような凜とした佇まいがひときわ目を引く「佛蘭西屋」はあります。

1階は洋食、2階は和食フロアとなっていて、美酒鍋がいただけるのは2階。入り口すぐにある階段を上ると、米蔵をイメージしたという天井の高い、開放的な空間が広がっています。

窓側の席に座ると、酒蔵のシンボリックな存在である赤レンガの煙突を眺められ、観光気分が一気に盛り上がります。

美酒鍋単品(1人前)1,760円(税別) ※写真は2人前

佛蘭西屋では小さめの美酒鍋に前菜やお造り、ご飯、お汁がついた「美酒鍋御膳」などランチメニューや会席コースも充実しています。が、今回は美酒鍋をたっぷり満喫するために美酒鍋単品をご用意いただきました。

材料は白菜、玉ネギ、長ネギ、ニンジン、ピーマン、春菊、シイタケ、厚揚げ、コンニャク。肉は豚肉、鶏肉、砂ずりの3種類が基本。
調味料は塩・コショウと清酒のみ。香りづけにニンニクスライスを使いますが、蔵人たちが利き酒するのに影響のないようにという配慮からこのようなシンプルな味付けになったといいます。

これが正真正銘“元祖”美酒鍋の作り方

美酒鍋はテーブルごとに、スタッフの方がついて目の前で作ってくれます。今回は店長の蔵本さんが作ってくださることに。では、早速お願いします!

まず、鍋を温めたら3種類の肉をすべて入れます。そしてニンニクスライス、塩・コショウを投入。

軽く炒めて肉の表面の色が変わったら、清酒を半分くらい投入します。使う酒は「賀茂鶴 上等酒」。食中酒としても最適な、芳醇辛口のお酒だそう。

清酒をかけることで肉がぐっと柔らかくなります。清酒が泡立ってくるまでしっかりアルコール分を飛ばしたら、野菜、コンニャク、厚揚げを入れます。

材料が全部鍋に入ったところで、残りの清酒をすべて注ぎ入れます。ジューッという音とともに、肉や野菜が煮立った匂いと清酒の芳醇な香りがプーンと漂ってきます。

清酒がほぼなくなり、野菜がしんなりしたら出来上がり。アルコール分が残らない状態まで煮切るので、お酒が苦手な方でも大丈夫。

いよいよ実食。食べ方は2種類!

テーブルでアツアツ出来立てをいただきます。

まずは何もつけずに、そのままいただきましょう。
使った調味料は酒と塩・コショウだけ。薄味なのかと思いきや、奥歯で嚙み締めると肉や野菜の旨みがじわーっと滲み出てきます。水を一切使わず清酒だけで煮切ることで、具材本来の旨みがぎゅっと凝縮されたのでしょう。鶏肉や豚肉もとっても柔らかく仕上がっていてびっくり! 改めて、お酒ってすごい調味料なのだと感心しきり。

美酒鍋のもう一つの食べ方は、すき焼きのように生卵をつけていただく食べ方。
ところで美酒鍋が酒蔵で食べられるようになったのは戦後すぐのことだったそうですが、当時からこうして生卵をつけて食べていたのか、ふと気になって蔵本さんに伺ってみました。

「戦後すぐの頃は、この辺りはまだ田んぼや畑がたくさんありました。蔵人たちは、そこで穫れる野菜をもらって美酒鍋を作っていたそうです。鶏もたくさん飼われていて農家から卵をもらえたので、当時からこうして生卵をつけて食べていたそうです」とのこと。

なるほど! ではさっそく生卵をつけていただいてみます。
お! 卵をつけるとほどよくとろみとコクがプラスされて、これまた美味しい! さすが蔵人は美味しい食べ方もよく知っていたのですね。

蔵本さん、美味しい美酒鍋を作っていただきありがとうございました。ところでこの「美酒鍋」という名前ですが、当時からこのように呼ばれていたのですか?

「実はちょっと違って、かつては『びしょ鍋』と呼ばれていました。当時、酒造りに励む蔵人たちの作業服がビショビショになることから、彼らのことを“びしょ”と呼んでいたそうで、“びしょ”が食べる鍋ということで『びしょ鍋』といわれていました。それが、美味しい鍋料理として一般の人に広まる過程で、“美酒(びしゅ)鍋”と見た目も語呂も良い呼び名になったんです」

美酒鍋と一緒にいただくなら、燗酒がオススメ!

ところでせっかく蔵元が営むお店ということなので、美酒鍋に合うおすすめのお酒を教えてもらいましょう。

「ふくよかな香りと芳醇な旨みが特徴の『賀茂鶴 超特撰 特等酒』を熱燗でぜひどうぞ」と蔵本さん。
「賀茂鶴 超特撰 特等酒」は冷やでも燗でも美味しくいただけるお酒だそうですが、美酒鍋と合わせるなら、料理の旨みをより引き立ててくれる熱燗がおすすめだそうです。

ちなみに店内の壁一面に愛らしいおちょこがずらっと並んでいるのですが、熱燗を頼んだらこの中から好きなおちょこを選べるのだそう。蔵元ならではの、こんな粋な計らいも嬉しいですね。

佛蘭西屋のすぐそばには賀茂鶴酒造の酒蔵や、酒造りの解説ムービーや道具を見学したり賀茂鶴酒造のお酒が購入できる「見学室直売所」もあります。オバマ大統領が来日した際に呑んだと一躍有名になった、「大吟醸 特製ゴールド賀茂鶴」もこちらで購入できるので、ぜひ覗いてみてくださいね。

佛蘭西屋
住所:広島県東広島市西条本町9-11
電話:082-422-8008
アクセス:JR西条駅より徒歩3分
営業時間:ランチ 11:30~14:30(L.O. 14:00)/ディナー 17:00~22:00(L.O. 21:00)
定休日:毎週水曜、第1・2月曜
※1階の洋食フロアは営業時間、定休日が異なりますので公式サイトでご確認ください。
URL:http://www.france-ya.jp/


撮影・取材・文/イソナガアキコ
約10年のWEBディレクター業ののち、2014年よりフリーライターとして活動。WEBや雑誌のインタビュー&取材記事や、中国・四国を中心とする観光記事を執筆。撮影を含む仕事も増える中、カメラ熱も上昇中。2019年、ブックイベントや本屋トークショーを主宰する「あいだproject」を創立、ただ今、こちらも精力的に活動中。

編集/くらしさ

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