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【スマホなし旅】第5回 弘前駅・リンゴでもお城でもない街の魅力を求めさまよう【青森】

【スマホなし旅】第5回 弘前駅・リンゴでもお城でもない街の魅力を求めさまよう【青森】

旅の醍醐味は、緊張とともに未知の世界を切り開くこと。インターネットによって地球の裏側まで情報化された現代において、本当の冒険とはスマホを持たず見知らぬ土地を徘徊することかもしれません。たとえ隣町でもいい、ロッカーにスマホを預けて新たな町へ飛び出してみよう。きっと、新しい出会いがあるはずだから。


人生で一度も訪れたことのない駅に降り立ち、スマホなしで町をさまよう連載「スマホを捨てよ、町へ出よう」(スマホなし旅)。第5回はJR奥羽本線、弘南鉄道弘南線が乗り入れる「弘前駅」です。

なぜ弘前(ひろさき)なのか?

今回のスマホなし旅は別件で青森に来たついでだったのですが、このあたりで降り立ったことのないエリア…と考えたところ──青森新幹線はもちろん、バイクツーリングや関東からの徒歩旅(!)で訪れたこともあり──意外と未踏の地がない。そんななか、15年ほど前のドライブ旅行中、深夜にお城の桜を見た記憶しかない弘前ならば、スマホなし旅が成立するのではないかと考えたのです。

JRと弘南鉄道が乗り入れる弘前駅

というわけで生まれて初めて訪れた弘前駅。と言っても、今回はクルマでのアプローチゆえ、実際のスタートは土手町にあるホテルからなのでした。そこの駐車場にクルマを停め、律儀に歩いて駅まで戻るわけですが、途中にあった上土手町商店街振興組合で弘前市の地勢をざっくりと把握。なるほど町の中心部は駅前ではなく、土手町から弘前城へと続く土手町通りなのね。

観光案内所では長靴の無料レンタルも! 今年は暖冬で雪がまるでありませんが

弘前駅でも観光案内所に立ち寄り、各種地図やパンフレット等で情報収集。いわく名産品のリンゴと、桜で有名な弘前城が二大コンテンツの弘前。今年は記録的な雪不足で夜のライトアップも見栄えがしないとのことで、イチオシはリンゴ、とりわけ市内各所で食べられるアップルパイだそう。

うーん、アップルパイかー。食べ比べてみたら面白いのかもしれないけど、2つくらいで満腹になっちゃうし、何より限りある胃腸のリソースをスイーツに割くのはもったいない。せっかくのスマホなし旅だもの、自分の好きを優先していいんじゃないか、と腹をくくり今回はリンゴもお城もバッサリあきらめることにしました。

とは言えありがたい観光案内所。特に弘前郊外には温泉銭湯が点在するようで、その営業時間や休業日のチェックをお願いしました。運悪くお休みの日に当たっちゃうことって旅のあるあるですからね。

しかしここまがすでに長え。さっさと駅前から移動しないと。

香ばしい匂いに誘われて…

でも駅構内にもちょっとした商業施設アプリーズがございまして、そこから香ばしい匂いが漂ってくるんですわ。見れば、南部せんべいを焼いているではありませんか。聞けば、これは南部せんべいに似ているものの、このあたりだけで食べられている津軽せんべいなのだそうで、ピーナッツや豆類が入っているのは同じですが、こちらの「小山せんべい」はずっしりした南部せんべいに比べて薄くてパリパリしているのが特徴だとか。特に焼きたては香ばしくてマジおいしい!

試食もOK! 特にピスタチオ入りが人気ナンバーワンだとか。買って帰れば良かった
ねぷた化した二代目。ちなみに小山せんべいオリジナルの弘前市内グルメマップは、なかなかのラインナップなのでもらっておきましょう

ようやく駅脱出。再開発されて真新しいものの、少しさびしい「えきどてプロムナード」を進み、途中で右手に折れて駅前市場の「虹のマート」へ。ここは土手町から駅に向かう途中にチェックしていたのですよ。やっぱり市場、それも観光市場じゃない地元住民が毎日使っている生活市場には立ち寄りたい。

ターミナル駅の前で無人販売しているのは、初めて見たかも。もっともお隣が交番だから?
ロゴにスピード感がある虹のマート

市場のおばちゃんに話を聞けば、海から遠い弘前は今でこそ新鮮な魚介類が手に入りますが、かつては筋子やイクラのような海産加工物や、干物や珍味のような乾物を扱うことが多かったのだそうです。他にも惣菜や麺類、お弁当に衣料品まで扱っている虹のマート、そろそろお昼ですしファーストめしコンタクトのお時間です。

活気あふれる市場内
豊富な乾物類に
すぐに食べられるお惣菜の数々。不審者じゃないよ
そして名産の筋子! 地元の方はそれぞれ味の好みがあって、帰省時にまとめて買って帰るんだとか

チョイスしたのは麺の販売のみならずイートインコーナーで食事もできるアキモト製麺の「幻の津軽そば」。「何が幻なのか?」と話を聞いていたら「食べていかれます?」というのでまんまと乗せられご注文。

そばをはじめ、ラーメン、うどん、天ぷらも扱うアキモト製麺

なお、津軽そばとは、そば生地にして一晩寝かせ、そばに切って一晩寝かせ、一度茹でて一晩寝かせ、食べるときは湯通しする「三日寝かせ」が特徴なのだそうです。いや、聞くからにコシなしのフニャフニャ食感ぽいですが……。

幻の津軽そば。なぜ幻かというと日持ちせず、昔は東京では食べられなかったから

やっぱりその通りでした!

信州にも「お煮かけそば」なる、一度茹でた麺を温めなおして食べる郷土料理がありますが、あれに似た味わい。普段、角の立ったそばに慣れ親しんだ身からすると違和感が拭えませんが、近ごろではコシのないやわうどんも脚光を浴びていますし、やわそばもいずれブームが来るのかもしれませんわかりません。

食後も虹のマート内をうろちょろ。よく見たら生牡蠣やら、リーズナブルなお寿司やら、他にも食べられるものがいっぱいあるではないですか! そばで腹を満たしちゃってうっかりしたなー、とやや後悔しつつ、今宵は弘前ステイゆえ明日朝のリベンジを誓います。

元気な市場のお姉さんたち
生牡蠣はもちろん、ウニもボタンエビもあるし!
奥まった場所には、中トロやウニのお寿司も。もちろんその場で食べられるよ。これも明日だな

再びプロムナードに復帰して、中心部の土手町方面を目指します。その土手町にもコアな生活市場があるらしいのですよ。

弘前のアンリアレイジことジーンズショップ SATO。いや、この感じだと先方が真似したかもしれないな

弘前駅から徒歩20分ほどでやってきたのは、土手町にある弘前中央食品市場。本当にここが市場の入り口なのかと疑わしいほど狭めの間口ですのでお見逃しなきよう。

ファサードのやれ具合がたまらない弘前中央食品市場

ひとたび足を踏み入れるとそこは昭和の世界。虹のマートが陽だとすれば、こちらは昼間でもひっそりとしていてほの暗く、たまらない侘びさび感が漂います。

狭い路地裏のような市場内

幻のそばでそこそこ満腹ですし、このままスルーかなーと思っていたのですが、奥に煮干しを使った青森中華そばを出すお店があり、話をうかがっているとまたもや「食べていきます?」とお誘いいただいたのですが、「いや、もうさっきおそばを食べてきて腹パンなんですよ」とお断りしたところ、「ミニもできますよ」とおっしゃるのでまんまとご着席。

通路に沿ってカウンターが並ぶ雰囲気がすでにおいしい、中華そば山田。カウンターに無造作に置かれた握り飯も旨そう

着丼したそれは、クリアで芳醇な煮干しスープに、縮れた麺(麺は2種からチョイス可能)が浮かぶすっきりとしみじみ旨い一杯。腹パンだったけど、これは毎日食えるやつだ。

ミニ中華そば350円

さらなる満腹を抱えてやってきたのは市場のほど近くにある「名曲と珈琲 ひまわり」。1959(昭和34)年オープンの老舗です。もともと幕末から藩士がコーヒーを飲んでいたという弘前には、こうしたレトロな喫茶店が点在しているんだそう。

創業62年! オーナーも3代目
店内は2階建て
幕末の飲み方を再現した「藩士の珈琲」をチョイス。急須の中にあるコーヒー豆が入った袋を、すりこぎみたいな棒でグリグリと潰して漉します
急須で淹れるだけでお茶みたいなテンションになりますね。お味は薄め

お会計時に店のお姉さんとあれこれお話しして、弘前のさらなるディープ情報をリサーチ。聞けば鍛冶町なる歓楽街のはずれに、絵になる路地裏があるのでぜひ行ってみてください、とのこと。また、その近くにある小料理がオススメとも。とは言え全部うろ覚え情報なので、ざっくりとした位置と店名だけを聞いて後は自分で探すことになりました。

あわせて「まちなか情報センター」に向かい、リンゴとお城以外の弘前情報をヒアリング。するとその場にいた弘前マスターのおじさんから、センターの斜め向かいにある文房具店「平山萬年堂」に行ったほうがよい、との情報をうかがいました。

早速向かった平山萬年堂

正直、いまや取材メモすらiPadとApple Pencilで済ましているノー文房具生活を送っているので、今さら万年筆?とも思ったんですが、いやはや、平山萬年堂は地方のイチ文房具店の範ちゅうを超えた、歴史的な名店なのでした。なんせ創業は1913(大正2)年、100年を超えるハイパー老舗なのです。

「今、息子が留守でね」と快く話をしてくれたのは、3代目で現在は半隠居中という平山壮三さん
突然お邪魔したのに、コーヒーまでごちそうになりました
かつては純粋な万年筆屋だったという同店。国内にも数々の万年筆ブランドがあったそう。店内には往時をしのばせる歴史的な資料がいっぱい
立派な看板も残ってます

はっきりとした証拠はないものの旧制弘前高等学校に通っていた太宰治も、周りの証言から察するに「恐らくうちにも来たことがあるはず」と壮三さん。すげえ。

実は近ごろ万年筆のインクブームらしく(知らなかった!)、平山萬年堂でもいくつかオリジナルインクを販売。こちらは弘前にちなんでシードルの香りがするインク。確かに甘いね
またもや首ねっこ掴まれてますが、ありがとう壮三じいちゃん。いつまでも元気で店頭に立ってね〜

壮三さんいわく店の裏手では息子さん夫婦が、また別の文具店を営んでいて、今はお嫁さんが店番をしているからぜひ行ってみてとのこと。人から人へ、次から次へと目的地が設定されていきます。アドベンチャーゲームみたいだ。

裏手にある文具店「久三郎」。これはきっと創業者の名前だな
店内は今どきのおしゃれ文具から、ビンテージな万年筆まで、文房具好きにはたまらないラインナップ

奥様いわく、雪深い弘前では「こぎん刺し」に代表されるように、冬のあいだの手仕事文化が受け継がれているため、内職仕事が必要ではなくなった現代でもカルチャースクールが人気で、それにともなって材料が売れたりするんだとか。

明らかに売り物じゃなさそうなトッポ・ジージョのぬいぐるみや、アルマイトの弁当箱など骨董品もちらほら

もっとも同店のコアバリューはなんといっても、ご主人の目利きによる貴重な万年筆コレクション。それをひと目拝もうと、全国から万年筆マニアが巡礼してくるのだそう。万年筆本にも紹介されるような名店が、ここ弘前の路地裏にあるなんて知らなかった〜!

こちらが万年筆コレクションの一部。私物も多いそうですが、一部コレクションに関しては話し合いの上で売買もおこなっているそう

あわせて奥様からも弘前のマニアックな情報をキャッチ。このあとは、件の歓楽街・鍛冶町や歴史的建造物が並ぶ市役所周辺に向かいますと話したところ、「夕方の街歩きツアーには絶対に参加したほうがいい」と強くプッシュされ、しまいには本日の夕方から急遽参加できないか問い合わせまでしていただいたのでした。

すると、そもそも街歩きツアーは3日前の予約が必要な上、冬期はお休みというではありませんか。それでもなお、無理くりねじ込もうとする奥様。結果、たまたま予定が空いていたとのことで、市議会議員でもあるガイドの方が町を案内してくれることになったのでした。いやはや、ありがたい……が。

おおごとになってきたぞ。

こうなったら夕方の待ち合わせまでに、歴史的建造物エリアや郊外の温泉銭湯などのスポットをさっさと巡らないといけません。あわてて土手町通りを北上します。

市役所の途中にあった弘前名代 黄金焼。これも弘前マスターからのおすすめ
白あんが入った小ぶりな大判焼といった風情の黄金焼。1個しか買わなかったのに、イートインスペースでお茶まで出してくださいました。確かに地元で愛されているお菓子といった風情です

弘前にはお城はもちろん、その城下町には仲町伝統的建造物群保存地区、弘前城城主 津軽家の菩提寺・長勝寺がある禅林街、曹洞宗以外の寺社仏閣が集まった新寺町などが広がっています。とりわけ禅林街にあるグルグル建築の栄螺堂(さざえどう)はぜひとも拝観したかったんですが、これまた冬期休業中ゆえ断念。時間もないので明治以降の洋館や、前川國男建築が立ち並ぶ市役所周辺エリアに向かいました。

渋い三上ビル。1926(大正15)年に弘前で2番目に造られた鉄筋コンクリート建築だそう。いまだ現役
見るからにルネッサ〜ンス!な青森銀行記念館
それにしても時間がありません。追手門広場にある山車展示館。この太鼓のデカさ半端ない!と思ったらねぷた祭りで使われる津軽剛情張大太鼓なのでした
大正時代の登録有形文化財・旧第八師団長官舎に造られた、スターバックスコーヒー弘前公園店。ここも気になるけど時間がニャーイ!

市役所も前川國男建築だったりするんですがじっくり見ることもできず、夕方のアポまで時間がないため大慌てです。郊外の温泉もどうしても入りたかったので、ここは奮発してタクシーを捕まえバビュンと移動します。

ちょうど雨足も強くなってきたのでね

目指すは弘前駅から5kmほど先にある桜ヶ丘団地。一応バスでも来られますが、そんな古い団地内にあるのが……。

入湯料はたったの390円でサウナ付きよ

弘前市民でも「行ったことがない」という方が少なくなかった桜ヶ丘温泉! 前述したように温泉銭湯が点在する弘前郊外。しかも場所によって泉質がガラリと変わるのが特徴で、銭湯巡りだけでも一興なのだそうです。特に桜ヶ丘温泉はクセが強い硫黄泉で、酸ヶ湯のように入浴すると衣類に匂いがついちゃうほど強力なのだとか。

夕方の早い時間でしたが地元住民でにぎわっておりました

帰りの路線バスまで時間もないので、熱めのお湯と冷たい水風呂に交互浴してさっぱり! 今度じっくりと銭湯巡りしたいもんですねえ。

ちゅーわけで、ヘイバス!
途中下車して待ち合わせ場所のまちなか情報センターに戻りますよっと
鹿田さんとツーショット

待ち合わせに現れたのは弘前路地裏探偵団の団長・鹿田智嵩さん。市議会議員、ホテル支配人、デザイナー、OL、主婦らの有志によるメンバーで平成22年から活動をおこなっているそう。早速、町歩きのスタートです。

最初に訪れたのが弘南鉄道大鰐線の始発・中央弘前駅。土手町通りの裏手に突然駅が出てくるのでちょっとびっくり。構内には石油ストーブもあったりして、なんともほっこり
単線ホーム。終点の大鰐まで行って温泉に入って、さらにお買い物クーポン200円まで付いて、往復乗車券込みで1000円のプランも人気だとか。それもいいな

弘前中央駅に続いて鹿田さんに連れて行ってもらったのが4月11日にオープン予定の「弘前れんが倉庫美術館」。その名のとおり、れんが造りの古い酒造工場をリノベーションした現代美術館で、弘前出身のアーティスト・奈良美智はじめ数々の作品展示をおこなうのだそうです。青森には十和田市現代美術館や青森県立美術館など話題の美術館がたくさんありますけども、またもや新たな注目スポットの誕生ですね。

スマホなし旅ではあまり訪れていませんけど、実は現代アートが好きなミニくまちゃん。オープンしたら来たいのお

駅と美術館をぐるっとまわり込んでやってきたのは、土淵川と土手町通りが交差する蓬莱橋。ここの薄暗い橋下は、若者カップルがチューするスポットとして地元の学生には有名なのだそうです。人目をしのんでやることは万国共通!

個人的に不穏な空気を感じとって聞いてみたら、30年前はカツアゲスポットとしても有名だったんだとか。もちろん今は問題ありませんよ!
スーパー戦隊の秘密基地みたいな中三デパートは、縄文式土器をイメージしているのだそうです。アバンギャルド〜

続いて連れてこられたのは、なんの変哲もない屋内駐車場。実はここ、弘前のキッズがダンスの練習をおこなうスペースとして開放されている場所で、こうして市民がダンス文化を育んだ結果、市内にはダンススクールも多く、今では「SHIROFES(城フェス)」なる世界最大級のダンスフェスが例年開催されるほどダンス文化が根づいたのだとか。

ちょうど誰もいなかったぜ!

ナイトライフでのオススメは先ほどから何度も登場している歓楽街・鍛冶町はもちろん、10周年を超えたという「津軽弘前屋台村かだれ横丁」もよろしそう。

かだれは津軽弁で「語れ」
まるで映画やドラマのセットのような凝った店舗が続いているのが面白い
屋台村なので他のお店からも注文OK。みんなでお金を出し合い、そこから支払いする「割り勘ザル」なる文化も津軽ならでは?

街歩きガイドもいよいよ佳境に入りいよいよ件の鍛冶町へと分け入るのですが、「その前に…」と鹿田さんが立ち寄ったのが、地元のコミュニティFMアップルウェーブも入居する土手町コミュニティパーク。その中のごちそうプラザにあるのが、「土手町パーラー モード・カフェ」です。ここんちは一見、普通のカフェながら、実は青森県産のさまざまな品種のリンゴをカットして食べられるという、ありそうでなかったありがたいお店なのです。

その日に入荷した新鮮なリンゴを選んでカットしてもらえるよ。ロールケーキやホットサンドも名物です
あえてリンゴを避けてきたけどやっぱり向こうから来た! でもカットリンゴを少しずつ食べ比べできるって、地味に嬉しくないですか?

しかも、しかもですよ。店長の成田拓也さんが奥から「これ今日いただいたんですが、どうしようかと思ってて。よかったら持って帰ります?」と差し出してきたリンゴがヤバかった。

一見なんの変哲もない「ふじ」ですが

それはなんと、絶対に不可能といわれていた無農薬リンゴ「奇跡のリンゴ」だったのです! 映画化もしたやつ! そのリンゴは農家の木村秋則さんが選ぶ限られた販路でしか流通しないため、青森県民はもちろん弘前市民でも食べたことがない人もたくさんいるほど幻なのです。だって売ってないんだもん。しかも2個。ヤベえ、スマホなし旅最大の当たりをひいちゃった──完──。

「はい、あーん」。成田さん、本当にありがとうございます!

完、じゃない。旅はまだ続きます。

いよいよ歓楽街・鍛冶町です
スナックや居酒屋が入った雑居ビルを通路代わりに使えば弘前の上級者、と鹿田さん。ジャンパーをよくご覧ください、路地裏探偵団オリジナルです
鍛冶町のディープスポットとのことで、酔っぱらい同士でクイズバトルができる「エンタメ酒場十八番」にも案内いただきました。確かに面白そう
ピンク映画館が現存する鍛冶町。確かに子どもの頃には小さな町にもあったよなあ。子ども映画と隣り合わせで上映してたりして、情操教育に役立ってたんだなあ
まだまだ早い時間だったので鍛冶町の本番はこれから。いつのまにか雨もあがってらあ

そんなこんなで、弘前中心部の路地裏を歩き回るツアーは1時間半で終了。他にも古いキリスト教教会や100年続く大衆食堂の名店もあるんですが、それは次回のお楽しみってことで、最後に解散したのが、喫茶店ひまわりでオススメされた小料理屋の前だったのでした!いやあ、今夜はひきまくってるなあ。

なお、映画のロケ地にも使われたという絵になる路地はずいぶん前になくなっていたのでした。というわけで「あんどころ俚ん(りん)」へ
基本的に黙っていれば手の込んだ家庭料理がサーブされます。味付けされたつぶ貝やら、わかめの煮物やらしみじみ旨い
シャイな女将とパチリんこ。買い出しでは虹のマートも利用するそう
めちゃくちゃおいしかった身欠きニシンの小ねぎ和え
日本酒は甘くて飲めないので、田酒の焼酎をいただきました
お隣にいた社長さんとも話が盛り上がってパチリんこ。やっぱり首ねっこ

ともあれ普段、小料理屋なんて全然行かないのでめちゃくちゃ新鮮でした。また、どれも地元の家庭料理といった風情でじんわりとしみます。しかもお酒を3杯いただいて、料理をつまんで3500円ほどとリーズナブル。ちょっとクセになりそう。

あえてシメはいただかなかったので、やってきたのは女将さんオススメの「鮨一貫」。本当に1貫だけつまんで帰ってもいいというコンセプトだそうです

歳を取るとじゃな、シメのラーメンがキツくなってじゃな、それこそ味噌汁だけとか、寿司をちょいとだけという気分になるのじゃ。というわけで、路地裏探偵団で通ってきた気もする雑居ビルにてちょい寿司と洒落込みました。

大将オススメのネタ(忘れた)を中心に、トロやウニ軍艦など4貫だけいただきました

温泉銭湯好きという大将とトークしつつ、ビール1杯に上等なネタを4貫ほどつまんで気持ちよく&クイックに退店。それでもお会計は俚んよりお高うございましたで、いやはや大人の遊び方だなと痛感した次第です。アホみたいに食べないで良かった…。

さんざん飲み食いしたし、本当は屋台村にも寄ってみたかったけど、ホテルに帰るしかないか、とトボトボ歩いていたら、やたらとオシャレなバーを発見。貸し切りパーティーを行っているのか、お客さんがギューギューに入っています。

城東閣の一角にオープンした「クラフトビール&グッドTシャツ Ripen」

「何の店なんだろう?話だけでも聞いてみよう」と酔っ払った勢いで入ったら、「明日プレオープンするので開店前の関係者パーティーをやっているんです」とのこと。しかも「せっかくなんで飲んでいきますか?」と招き入れてくれるではありませんか! たーのしい。

常時、北東北各地の5酒類ほどのクラフトビールを用意するのだそうよ
すみません、お相伴にあずかります(ラッキー!)
店名のとおりTシャツも販売しています

この日のゲストは弘前の若手中心で、中にはさきほどの町歩きで見学した弘前れんが倉庫美術館のオープニングスタッフの姿も。いやあ、なんかどんどん弘前人脈がつながっていくなー。これが飲み歩き効果か。

おふたりとも教員だったというオーナーの中野渡さんご夫妻。ランチも予定しているので弘前に行かれる際は、ぜひとも立ち寄ってね!
帰りは「土手の珈琲屋 万茶ン」のオーナー・今川義宏さんと一緒に帰りました。てかここ、太宰治が通った喫茶店やん!

というわけで、最後の最後まで祝福されたスマホなし旅・弘前編なのでした。

●まとめ

リンゴとお城をあえて外し、弘前のディープな魅力を追い求めた今回のスマホなし旅。結果、人から人へと数珠つなぎに世界が広がり、おいしい食事に歴史あふれる名店、ローカルな温泉、願ってもみなかった奇跡のリンゴ、そしてまだ誰も知らない新規オープンのお店と、たった一日なのに濃厚な味わいの旅路となりました。たぶん、そのへんの弘前市民より弘前に詳しくなったかも。

いやもう、これが最終回でもいいくらいです。まだ続きますけど。

最後に、帰宅後いただいた奇跡のリンゴの感想ですが、品種はよくあるふじで、甘みと酸味のバランスが素晴らしく、言ってしまえば「究極の普通」なのですが、この嫌味のない味わいを農薬なしで実現しているところが奇跡であるんだと感じました。なんせ普段リンゴなんて食べないのにペロリといけちゃいましたからね。つくづくありがたい機会を得ました。ごちそうさまです。

最後に多めのおまけ。

翌朝、虹のマートに再訪していただいた生牡蠣(1個250円)
お寿司もパックんちょ!
さらに虹のマートにほど近いパン屋「THREE BRIDGE」の名物クロワッサン。焼き上がるとすぐ売り切れるそうです
寿司、クロワッサンのトドメにランチでいただいたのは「たかはし中華そば店」。濃厚系煮干し中華そばの元祖だそう。ポタージュのようなニボ感に満足満腹です

熊山 准(くまやま・じゅん)

リクルート編集職を経て『R25』にてライターデビュー。執筆分野はガジェット、旅、登山、アート、恋愛、インタビュー記事など。同時に自身のゆるキャラ「ミニくまちゃん」を用いた創作活動&動画制作を展開中。ライフワークは夕焼け鑑賞。マレーシア・サバ州観光大賞2015メディア部門最優秀海外記事賞受賞。1974年徳島県生まれ。

熊山准のおブログ
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